【たのしい川べ】「ロッキーチャック」や「ぼのぼの」・・・動物ものの原点?川辺と森の動物たちのファンタジー

2024年2月17日

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たのしい川べ

愛らしいモグラ君、かっこいいネズミ君、かしこいアナグマ氏、ゆかいなヒキガエル……森の仲間たちが大活躍する童話です。多くの作品に影響を与えた名作。

この本のイメージ ほのぼの☆☆☆☆☆ 冒険 ☆☆☆☆ 教訓☆☆☆☆

たのしい川べ  ケネス・グレーアム/作  石井 桃子/訳 岩波少年文庫

<ケネス・グレーアム>イギリス、スコットランドの小説家。

『たのしい川べ』(たのしいかわべ、The Wind in the Willows)は、イギリスの作家・ケネス・グレーアムが1908年に発表した児童文学作品です。

 原題の “The Wind in the Willows" は日本語に直訳すると「ヤナギ林に吹く風」の意味ですが、日本では英文学者の中野好夫が1940年に抄訳した際の『たのしい川べ』という題名が定着しています。他に『ひきがえるの冒険』『川べにそよ風』『川べのゆかいな仲間たち』などの題名でも出版されています。

 北海道の恵庭に「銀河庭園」と言う、広大な庭園があります。「えこりん村」というレストランや牧場が併設された総合施設の一部なのですが、驚きで顎が外れるほど広くて、美しいところです。全国のガーデニング愛好家から聖地と呼ばれるにふさわしく、どの季節に見ても美しい、魅惑の庭園なのです。

 その巨大ガーデンに、この「たのしい川べ」をテーマにした一角があります。ヒキガエル君の馬車や、ネズミ君の家らしき小屋があり、童話のシーンを思い出してじんわり温かい気持ちになります。
「不思議の国のアリス」や「ピーターパン」とかじゃなくて「たのしい川べ」だってところが渋いのです!

 ガーデン好き、ガーデニング好きの方は、絶対一度は行くことをオススメいたしますよ!見ないのは人生損してるレベルに美しい場所です。

ヒキガエル君の馬車
ヒキガエル君の馬車(中にも入れます)

森の動物たちのオムニバスストーリー

 この物語の主な登場人物(人物じゃないけど)は、モグラ、ネズミ、アナグマ、ヒキガエルです。

 前半の主人公はモグラ、後半の主人公はヒキガエルで展開します。

 この話はもともと、著者のケネス・グレーアム氏が銀行員を辞めて地方に引越し、幼く病弱な息子のために書いた童話なのだそうです。「クマのプーさん」は父が息子のために創った物語ですが、そういうのって、なんだかいいですよね。

※最近読んだ本で知った新情報ですが、「クマのプーさん」の著者、A.A.ミルン氏は、なんとなんとこの「たのしい川べ」の大ファンだったみたいです!会う人会う人に「たのしい川べ」の素晴らしさを説き、プレゼントまでしてたとか。(どんなに好きなんですか!)ちょっと文豪ものアニメにでもしていただきたい話ですよね!(2019.12.13追記)

と、前置きが長くなってしまいました。

春が来て、自然の呼び声に導かれてモグラ君は川辺にやってきます。そこで、ネズミ君と出会い、親友になります。そして、 ふたりはネズミ君の家で暮らすようになります。
その後、ネズミ君の友人ヒキガエル君と馬車の旅に出たりもします。

 冬には、雪深い森の奥でアナグマ氏と仲良くなります。アナグマ氏は人嫌いの老賢人というキャラクター。頼りがいのあるどっしりしたキャラです。

 後半は、自動車の魅力に取り付かれたヒキガエル君の冒険。詳しくははぶきますが、長い冒険の末、ヒキガエル君は成長し、立派な人格者になります。ラスト近くには、男の子向けの童話らしく、イタチ軍団と戦う活劇シーンもあります。

銀河庭園のネズミ君の家
銀河庭園にある(たぶん)ネズミ君の家

やたらかっこいいネズミ君

 わたしの好きな話は、「森」。

 アナグマ氏に会いたくて冬の森に1人で出かけてしまう、モグラ君。
モグラ君がいなくなったと知って、即座に助けに行くネズミ君がものすごくかっこいいのです。ネズミ君がかっこよすぎて惚れます。

あかつきのパン笛

 また、多くのファンタジー作家に深く愛される「あかつきのパン笛」と言う短編も素敵です。この短編だけ、ほかの話とはテイストがまったく違います。
神とか精霊とか異世界とか、目に見えない世界とこの世のリアルな世界が、実は隣りあわせで、目に見えない世界はいつも目に見える世界を支えているんだよという話です。 

ヒキガエルの冒険

 後半のヒキガエルの冒険は、男の子向けらしい童話で、もと銀行員のグレーアム氏がこの話を書いたのは、銀行勤務時代に、いろんな顧客を見てきたからなんだろうなあと想像できました。

 おっちょこちょいでわがままで、軽率なヒキガエル君ですが、前半でネズミ君は彼のことを「あんな気のいい動物はいない」と言います。
彼のことを「とても罪が無くて、お人よしで、気持ちがやさしい」と、ネズミ君が言うことで、この物語の後半を安心して読むことが出来ます。

 ヒキガエルは、ちょっとできの悪い、二代目の御曹司なのです。
でも、後半の大冒険で、とてもしっかりした城主になって、アナグマ氏も感激します。

 父親が息子のために書いた童話なので、最後は教訓的なエピソードで終わっています。
この教訓的な部分を説教臭くてつまらないと思う人もいるかもしれないけれど、銀行を身体を壊してやめたグレーアム氏は、見栄や浪費で破滅した大富豪を 銀行員時代に たくさん見てきたのだと思います。

 彼自身の息子は病弱なために長く生きなかったそうですが、この童話は多くの男の子たちの記憶に残っていることでしょう。昔はたいしてどうとも思わなかったのですが、大人になるとこれはやっぱり大切なことだなと思うようになりました。

 ヒキガエルのエピソードと、そして「あかつきのパン笛」、つまり、おろかさや失敗から学ぶ成長と、生き物たちを影で見守る神様のような存在の温かさ、の二つがこの作品のテーマのようにも思えます。

大好きな作品です。

 

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 しみじみと心温まる、読後感のいい童話です。安心して読めます。オススメです。

 

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