【魔法の声】不思議な「声」が本の世界から召還する。「物語」の力を感じる、ドイツの本格ファンタジー。【小学校高学年以上】
ドイツからやってきた本格ファンタジー。主人公メギーの父親モーは、「本のお医者さん」。そして、もうひとつ、特殊な能力があります。彼は本を朗読することで、本の中のものを出現させることができる「魔法の声」の持ち主なのです。
この本のイメージ わくわく☆☆☆☆ 本好きあるある ☆☆☆☆☆ 魔法☆☆☆☆
魔法の声 コルネーリア・フンケ/著 浅見 昇吾 WAVE出版
<コルネーリア・フンケ> 1958年ドイツ生まれ。ハンブルク大学で教育学を修める。フリーのイラストレーター、作家。ウィーン児童文学賞など多くの児童文学賞を受賞。
ファンタジーや児童文学に出てくる女の子ってたいてい、すごい本好きなんですよね。赤毛のアンとか、小公女とか、ハーマイオニーとか、チャーメインとか。そりゃ、本に出てくる女の子なんだから当たり前だな、とそんな当然のことに気がついたのは大人になってから。(遅いよ)
でも、わたしは小さい頃から物語を読むのが大好きだったので、「本好きな女の子は素敵な子」だとずっと思っていました。(いまも思っています)
で、自分はというと、忙しいを言い訳に15年以上ろくに本を読んでいなかったのですから、「本好き」なんておこがましくて言えないレベル。それでも、本好きが出てくる話は大好きです。
魔法の力で本の世界に飛び込んでいくファンタジーは、「はてしない物語」をはじめとして、わりとよくある設定ですが、本を読むことで本の世界のほうがやってくるというのは、斬新な設定だと思います。(まさに読み聞かせは魔法)三部作の第一巻ですが、この話だけも完結しているので一冊でも充分楽しめます。
主人公はメギー。12歳の女の子です。お父さんのモルティマ(モー)と二人暮らし。モーは、本の修繕を生業にしている「本のお医者さん」。
主人公たちは、とにかく本が大好き。メギーもモーももちろんのこと、メギーの母の叔母エリノアも大の本好きです。このエリノアが、いいキャラなんです。
この物語は、本好きな人の心をとらえる部分が随所にあって、そこが惹き込まれます。
ただ、それだけに本が焼かれるシーンはきつかったですね。(必要なシーンなんですけどね)
主人公の父親モーには特殊な能力があって、彼が本を朗読すると、その本の中の登場人物や、そこに書かれている物などが現実に召還されてしまうのです。
だから、金銀財宝が出てくるシーンを読み上げると、現実に財宝が出てきてしまう。だけど、危険な海賊や怪物が出てくるシーンを読み上げると、それも呼び出されてしまう。
そして、本の中の最も危険な登場人物が呼び出されてしまい……という物語です。
本の世界に入ったり、本の中のものを呼び出したりって、本好きなら子供の頃に一度はあこがれたと思います。それがお話になって展開しているので、自分の身におきたことのようにワクワクします。
また、後半は、自分で創作をしたりお話を考えたりする人なら、さらに「あるある」と思うことばかり。「物語」を読むこと、「物語」を書くこと、「物語」のパワーを「魔法」として存分に表現した物語なんです。
ラストは、「こう来たか!」と言うハッピーエンドで、スッキリとした気持ちになります。本が好きで、物語が大好きな人には、絶対おすすめのファンタジーです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
本に関係するショックなシーンがあります。それ以外は、怖い悪役も出てきますが、基本的にハッピーエンドです。親子ものが好きな人にはおすすめです。
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