【やかまし村の子どもたち】どこかにある、小さくて優しい村。スウェーデンからやってきた児童文学の名作。【小学校中学年以上】
やかまし村には、家が3軒きり、子どもは男の子と女の子が3人ずつしかいません。たった6人の子どもたちだけど、おもいっきりのびのびとすごす毎日です。 おおらかで、楽しい、やかまし村の日々の物語。
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やかまし村の子どもたち アストリッド・リンドグレーン/作 大塚 勇三/訳 岩波少年文庫
<アストリッド・リンドグレーン> スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」など。
「長くつ下のピッピ」のリンドグレーンが書く児童文学の名作です。
子供が六人しかいない、小さな小さな「やかまし村」の子どもたちの日常がオムニバス形式で書かれています。
オムニバスなので、一章ごとを毎日、読み聞かせしてあげることもできます。
ファンタジーでも、冒険ものでもないので、ただ「子どもの日常」が淡々と続くだけなのですが、子どもたちだけで秘密の通信方法を開発したり、秘密基地を作ったり、「家出をしてみたい」と思ったり、とにかく、主人公のリーサをはじめとして子どもたちの考えや行動が、幼児らしくてとてもほほえましくかわいいです。
女の子三人と男の子三人、村に子どもは六人しかいないのに、みんな仲良しで、ちょっとやんちゃな子どもたちです。
「ああそうよ、子供の頃ってこうだったわよねえ」と思い出します。わたしはここまでやんちゃではなかったけれど、このとりとめもない考え方は子ども時代特有のもの。
周囲の大人たちも、子どもたちにとって、本当に「いい大人たち」で、あたたかく子どもたちの成長を見守ってくれる人たちです。
スウェーデンは北国だからかもしれませんが、雪深い地方では吹雪の日に子どもたちが外にいては死んでしまいますから、子どもたちも吹雪に出会うと、いちばん近所の家に飛び込むのです。ここらへんは、慣れているというか、命の危険にさいして判断を迷わないのは雪国の子どもらしいです。
そして、大人たちもよくわかっているので、雪の中、飛び込んでくる赤の他人の子どもたちをあたたかく迎え入れ、暖を取らせて上げます。
この大人と子どもの「距離感」がいいのです。あつかましいとか、迷惑とか言って拒否したりはしない。時にはぶつぶつ言う人もいるけど、ちゃんと保護してくれるんです。
また、アンナちゃんのおじいちゃんも素敵です。
おじいちゃんが子供の頃に家出をした話というのが、どうやら、リーサやアンナたちの大好きな「お話」なのですが、(「お話」と言ってもおじいちゃん本人にとっては、リアルな過去) それに対して、とくにネガティブになることなく、淡々としているのです。
そして、アンナが「わたしも家出をしてみたい」と言い出し「どうかしら、おじいさん。わたしたち、家出してもいいとおもう?」とアンナがきくと、おじいさんは
「いいとも。ちょっとだけなら、家出してもよかろうよ」と言うのです。
すごいですよね、これ。現代の日本ではなかなかこんなこと言う人はいないですよね。
結局、アンナとリーサは決行日に寝坊してしまい、家出はしないのですが、こういうおおららかさっていいな あやかまし村の治安のよさも含めて)と、なんだか温かい気持ちになりました。
やかまし村のエピソードは、「幼児あるある」の連続なので、大人にはそこがなつかしく、子どもにはあこがれがいっぱい詰まった本に感じられると思います。
子どもにはわくわくを。大人にはノスタルジーを。
休日の午後にゆっくり読みたい小説です。
繊細な方へ (HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。安心してどなたにもお読みいただけます。
ジンジャーミルクティーとジンジャークッキーを用意して、お天気のいい週末の午後に読むのがお勧めです。水筒とお菓子をもって公園に出て読むのも気持ちのいい本です。
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