【プラム・クリークの土手で】開拓者時代のアメリカ、大自然の驚異に立ち向かう一家の物語【ローラシリーズ 3】【小学校高学年以上】

2024年1月31日

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プラム・クリークの土手で ローラ・インガルス・ワイルダー 

大草原を追われるように引っ越したインガルス一家は、プラム川の土手で、小さな土の屋根の家に住むことになりました。新しい家で畑を耕し、ローラたちは学校に通い、生活は順調に見えましたが…

この本のイメージ 大自然怖い☆☆☆☆☆ 昆虫怖い☆☆☆☆ 人間たくましい☆☆☆☆

プラム・クリークの土手で ローラ・インガルス・ワイルダー 

 大草原の小さな家の続編、インガルス一家の物語の三冊目です。様々な出版社からいろんなバージョンが出ています。三巻までは角川バージョンがキンドルで読めます。(大草原の小さな家とちがって、このあたりからだんだん、入手困難になってきます。現状で全巻そろえられるのは福音館バージョンか、草炎社バージョンだと思います。こだまともこ翻訳の講談社バージョンはファンが多いので、再版を希望しています)

 大草原を後にしたインガルス一家は長い旅の末にミネソタのプラム川のほとりに移り住みました。
そこには、様々な国からの入植者がいて、お父さんは、ノルウェー人の隣人から土手にある、小さな、土の下にある家を譲り受けます。屋根が土で、半地下になっている、ファンタジーでノームやドワーフが住んでいるような家です。

 そこで、暫く暮らした後、またしてもお父さんが自力で家を建て(この人にとって家を建てるのって、犬小屋作るレベルにカジュアルなのだろうか)新しい家での暮らしが始まります。

 お母さんは新しいオーブンを手に入れ、ローラたちは学校に通うなど、生活は順調に見えました。
関る人間が多くなったので、人間関係のいざこざや、トラブルは増えましたが、それらはローラはたくましく乗り越えていきます。

 ところが、何もかもが順調と思われたある日、突如として西から「光る雲」がやってきます。
それは、いなごの大群でした。

 いなごは、来る日も来る日もやってきて、あたり一面を覆い尽くし、すべての緑を食い尽くします。
収穫目前だった麦畑も、野菜畑も、いなごの大群に食い尽くされて全滅してしまいます。
ローラはそこで、人間の力では太刀打ちできないものが大自然にはあるのだと知るのです。

 絶望のどん底に落ちたインガルス一家ですが、お父さんが東の町に出稼ぎに行くことで、一家を支えることにし、この困難を家族全員で乗り越えます。

 今回の話は、とにかくいなごのシーンが壮絶です。遠くの空から光る雲がやってくるところから詳細に描かれており、今までのシーンの中で最も恐怖を感じました。

 ところで、この本で最も印象に残ったのは、実は自然と闘う話ではなく、ローラと隣人の家の赤ちゃんとのエピソードです。

 ある日、隣人のネルソン夫人が赤ちゃんのアンナちゃんを連れてきました。ローラのおかあさんはネルソン夫人のおもてなしをし、その間、ローラたちが赤ちゃんをあやすことになりました。

 でも、赤ちゃんのアンナちゃんは、何もわからないので、ローラたちが手渡した紙人形を破ってしまいます。
それで、ローラはこれなら破れないからと、「大きな森の小さな家」時代から大切にかわいがっていた布人形のシャーロットを貸してあげるのです。

 ところが、いざネルソン夫人が帰ると言うときに、アンナちゃんはシャーロットを手放してくれません。
おかあさんは、ローラに「もうお人形で遊ぶ歳ではないのだから、シャーロットはアンナちゃんに上げなさい」と言い、ローラは(平気なふりをして)泣く泣く人形を諦めます。でも、部屋に戻って1人で泣くのです。

 これは、思い当たる人もいるのではないでしょうか。とくに長女さんはあるあるの話だと思います。
わたしの友人でも、自分のスカートを知らないうちに近所の子が着ていた事件とか、自分のおもちゃが知らないうちに近所の子のものになっていた事件とか、ものすごくよく聞きます。珍しい話ではないんです。

 そして、たいてい、長女です。事後承諾すらなく、他人が使っているのを見てはじめて知ったというケースもよく聞きます。

 ローラのお母さんは、厳しい大自然のなかで生活するうえで隣人の協力は不可欠であり、生きるか死ぬかの局面で世話になることがあるのだから、ローラががまんしたことは、とてもいいことなんだと諭します。

 ローラは頭では理解しているので、ちゃんと聞き分けを見せるのですが、誰もいないところで泣くんです。
わたしは、いなごのシーンより、ここで泣いてしまいました。これは、心に少女時代の思い出を残している人にとってはとてもつらいシーンです。(ローラは次女なのに、よくがんばったよ!)

 このエピソードは結局、どう決着がつくかと言うと、
ローラがある日、ネルソンさんの家に行ったとき、裏庭にシャーロットが泥まみれで捨てられているのを発見するのです。目のボタンも口元の糸も切れて、布も破れた状態でした。
アンナちゃんはシャーロットを壊してしまい、飽きて捨ててしまったのでしょう。

 ローラは思わず裏庭に駆け入り、シャーロットを拾って走って帰ります。

 「シャーロットよ。あたし、……あたし、ぬすんできちゃったの。」
拾った、とか捨ててあった、とか言わないローラがけなげです。自分は悪くないと思いながらも、きっと罪悪感があったのでしょう。人形を捨てたネルソンさんへの怒りよりも、自分の行為が正しいかどうかで苦しんでしまうローラが純粋です。ここでも泣けてしまいます。

 お母さんは、ローラを責めず、傷ついたシャーロットを繕って治してくれました。「もう大きいんだから、こんな人形はいいじゃない」と言わないお母さんはやっぱり素敵なお母さんでした。

 この人形のエピソードがちゃんと決着がついたのが、いちばんほっとしましたね。(いなごはいいんかい!)

 いなごはと言うと、人の力ではどうしようもなくて、ある日突然、何かに取り憑かれたように集団で去って行き、唐突に恐怖が終わります。

 現代の文明社会でぬくぬくと生きていると、自然の驚異を忘れがちですが、何もないところを開拓して生きるって言うのは、こういうことなんですね。

 最後は、家族そろっての楽しいクリスマス。
どんなに困難が襲ってきても、楽しいことを忘れない、インガルス一家の愛情あふれる団欒風景に、ほっこりした気持ちをもらえます。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 昆虫が苦手な方には、ちょっと無理なシーンがあります。「そういうシーンがあるのだな」と前もって覚悟していれば大丈夫な方にはおすすめです。
大自然の脅威は、オブラートにくるむことなく描かれていますが、家族の愛情や、ほのぼのとした気持ちの交換も描かれていて、温かい気持ちになれるお話です。
コーンミールのパンケーキと紅茶をお供にぜひどうぞ。

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