【E.ネズビット】砂の妖精と時を旅するファンタジー後編。四きょうだいの冒険の結末は?【魔よけ物語】【小学校高学年以上】
もう一度家族一緒に暮らしたい、シリル、アンシア、ロバート、ジェインの四きょうだいは、考古学者のジェイムズ先生を誘って、タイムトラベルの旅に出ます…
この本のイメージ タイムトラベル☆☆☆☆☆ 歴史ミステリー☆☆☆☆ 家族愛☆☆☆
魔よけ物語 下 イーディス・ネズビット/作 八木田宣子/訳 H・R・ミラー/絵 講談社青い鳥文庫
昨日の続き。この本は、福音館文庫から出版されている「砂の妖精」の続編です。
ロンドンでの騒動にくたくたになった四きょうだいは、上の階の下宿人、考古学者のジェイムズ先生を誘ってアトランティスにトラベルします。ジェイムズ先生は、夢だと信じきっているので大喜び。
そして、アトランティスの滅亡にも立ち会います。
その後、古代ローマに行ったり、再びエジプトに行ったり、様々な冒険を繰り返すうちに、きょうだいは「魔よけの意思」に触れるのです。
後編は、あまりあらすじを紹介せずにおこうと思います。全編と同じように、様々な時代、様々な場所に移動して冒険します。
後編は「子どもたちの生活」について、焦点が当てられています。当時のイギリスは子どもたちにとって、あまりよい環境ではないと著者は考えていたようです。孤児の女の子が愛されて生きていく場所が無かったり、学校が子どもを大切にする場所ではなかったりすることに、問題を感じていたのかもしれません。(でも、これは特にイギリスが、というより、どこでも同じな気はするんですよね)
親の無い子供は魔よけの力で過去に飛び、そこで愛してくれる親と出会います。また、子どもたちが未来に飛んだときは、何よりも子どもたちを大切にするユートピアのような都市に行きます。すこし驚いたのですが、そこに、ほんの少しですが日本的なテイストがあったのです。
当時、著者ネズビットにとって日本は子どもを大事にするイメージがあったのかと思うと、素直に嬉しいです。(実際はどうだったかと言うと……理想化されている部分もあったと思うのですが)
いつの時代でも子どもは社会で後回しにされ、しわ寄せを食うところがありますが、児童文学の世界では子どもが主役です。
長く生きていると、子どもそのものだけでなく、「子どもらしさ」……つまり、瑞々しい感性や、純粋な好奇心、見返りのない善意、素直な気持ちなどが、かけがえがなく貴重なものだとわかるようになります。若い頃は大人にあこがれるものですが、歳をとると「ほんとうの大人」なんていないってことが、だんだんわかってきます。結局は、わたし自身も含めて、大人はみんな失敗ばかりする成長途上の子どもなんです。
最近は、そのような真の意味での「子どもらしさ」を持つ人が社会で受け入れられ生きて行けるのか、それ自体が難しくなってきてるような気がします。子どもがありのままで生きて行くことが難しく、急いで大人の真似をしなくちゃいけなかったりする世界は、とても心配です。
物語のラストで、四きょうだいは望みがかなって幸せになりますし、ジェイムズ先生も幸せになりますし、そして、なんとなんと、サミアッドも幸せになります。
文句なしのハッピーエンドで、「砂の妖精」からの長い長い物語の完結にはふさわしい結末です。
とても、さわやかな気持ちになれるので、ぜひ、読んでみてくださいね。本当に面白いので、再販希望です。なんなら電子ででも!
いま子ども時代まっさかりの方にも、子ども心を取り戻したい大人の方もにもおすすめです。
そろそろ図書館が再開されます。
中古では流通していますし、わりと図書館にはある本なので、「砂の妖精」ともども、ぜひ読んでみてください。
※この本は現在、Amazonでは新品は入手困難です。中古(古書)でお求めになるか、図書館、または書店に置いてある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はわずかです。皆無ではありませんが、ぎりぎりで回避しているので、大丈夫だと思います。なんとサミアッドが幸せになります。ぜひ、読んであげてください。
熱い紅茶と、ビスケットなどをお供にぜひどうぞ。
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