【白狐魔記】妖力を得た狐と人間の戦い。新感覚の日本史ファンタジー。【小学校中学年以上】

2024年2月13日

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白狐魔記 蒙古の波 斉藤洋 偕成社

長い眠りから覚めた白狐魔丸は、ふとしたことで知り合った侍から今わの際に、竹崎季長(たけざきすえなが)と言う侍を探してくれと頼まれます。死者との約束を果たすべく、竹崎季長を探し回る白狐魔丸。その頃、鎌倉武士たちは、海の向こうから襲来する蒙古との戦いに備えていました……

この本のイメージ 和ファンタジー☆☆☆☆☆ 歴史ミステリー☆☆☆☆☆ 冒険活劇☆☆☆☆

白狐魔記 蒙古の波 斉藤洋/作 偕成社

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

 妖術を体得した狐が活躍する、和ファンタジー「白狐魔記」の第二巻です。第一巻は「源平の風」。日本史が大好きな人なら、きっと楽しめる新感覚の冒険児童小説です。

 第一巻「源平の風」で、佐藤忠信と仲良くなり、源義経の逃避行を助けた白狐魔丸は、その後白駒山の仙人のもとへもどり、永い眠りについていました。85年後に目覚めた白狐魔丸は、再び人間に化けて里に下りますが、時は執権北条氏が権力を握る鎌倉時代。望んでもいないのに、大嫌いな侍同士の争いに巻き込まれてしまいます。

 そのなかで、仲良くなった侍、市谷小平太から、「竹崎季長という侍を探してくれ」と遺品を預かりました。義理堅い白狐魔丸は、懸命に竹崎を探します。謎の武士を探し回るうち、今、鎌倉は海の外からの大きな脅威にさらされていると知るのです。

 第一巻に比べて、ぐんと少年漫画ぽくなった二巻目ですが、元寇と竹崎季長など、日本史を勉強したお子様なら「おっ」と思う部分が入っており、
また、歴史マニアの中では、昔から伝わる歴史ミステリー、「源義経の死」についてファンタジックに描かれています。

 この巻から、白狐魔丸と白駒山の仙人様以外にも、人間に変化できる獣や、獣に変化できる人間が登場します。その「濃い」キャラクターたちも見どころ。彼らはまた登場するのでしょうか。楽しみです。

 字は程よく大きく、読みやすく、漢字には振り仮名が振ってありますので、小学校中学年から大丈夫。読み聞かせなら低学年からでも。読んだ後は、日本史の勉強にも興味を持ってもらえるかも。親子で歴史ミステリーの会話に花を咲かせることもできるかもしれません。

 白狐魔丸は望んでもいないトラブルに次々に巻き込まれ、次第に能力を開花させていきます。この巻では「気」の力を操って、人や物を動かしたり消したりできるようになります。人間に化けても尻尾が残っていたような、あどけない狐の頃とはちがい、なかなかの化け狐に成長しつつある彼ですが、心根は純真なまま。

 基本的に人間は大嫌いだけれど白駒仙人様は大好き。そして、仲良くなった人との約束は必ず守る義理堅い狐です。

 この白狐魔丸の目を通して、人間同志の争いや人間の人生を描いていくテーマはそのままです。
白狐魔丸は武士同士の争いには興味はありませんが、無辜の民や親しい友人が傷つくようなら、全力で戦います。人間より人間らしい白狐魔丸の冒険は、まだ続くようです。

 次巻タイトルは「洛中の火」。楠木正成と出会います。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 凄惨なシーンがあります。流血シーンや残酷シーンが苦手な人にはおすすめできません。

 でも、事前に「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫、という方にはおすすめ。日本史が好きな方や、歴史ミステリーが好きな方には特におすすめの和ファンタジーです。
おいしい緑茶と和菓子をお供に、ぜひどうぞ。

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