【プリデイン物語】正統派冒険ファンタジーの名作。ブタ飼いの少年の冒険への旅立ち。【小学校中学年以上】

2024年2月13日

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プリデイン物語1 タランと角の王  ロイド・アリグザンダー/作 神宮輝夫/訳 評論社

ブタ飼いのコルの弟子、タランは冒険にあこがれていました。ある日、タランたちが守っている魔法のブタ、ヘン・ウェンが突然逃げ出してしまいます。大切なブタを追って森に入ったタランは、そこである人に出会い、はからずも冒険の旅に出ることになるのでした。

プリデイン物語1 タランと角の王  ロイド・アリグザンダー/作 神宮輝夫/訳 評論社

<ロイド・アリグザンダー>
アメリカ合衆国の児童文学作家、ファンタジー作家。
ペンシルベニア州フィラデルフィア出身。フィラデルフィアの教員養成大学を中退し、19歳で第二次世界大戦に従軍。ヨーロッパで戦役を終え除隊した後、パリ大学で学ぶ。1946年に帰国し、翻訳や編集の仕事をしながら小説を執筆。長編ファンタジー『プリデイン物語』シリーズの最初の2冊「タランと角の王」「タランと黒い魔法の釜」は、ディズニーアニメ「コルドロン」(Black Cauldron, 1985年)の原作。(Wikipediaより)

 ド直球の、剣と魔法の正統派冒険ファンタジーです。
 何者でもない無力で未熟な少年が、はからずも冒険の旅に出ることで、様々な試練を通じて成長してゆきます。

 と、ここまで強調するのも、よくよく考えてみると、実は「正統派」を作るのは非常に難しく、そして、案外、数として少ないと感じたから。

 時代を超えて長く愛されている「宝島」「トム・ソーヤーの冒険」は、子どもが大人たちの世界で「ごっこ遊び」ではない「本当の冒険」をし、そしてほんとうに宝を手にしてしまうお話です。これらの児童文学は「ファンタジック」ではあるけれども「ファンタジー」ではありません。リアルな世界での「冒険物語」です。

 それとは別に、子どもにはファンタジーの世界へのあこがれもあります。剣とか、魔法とか、妖精とか。
 しかし、さすがに剣と魔法を「本気で」体験する事はできません。ですから、それ以外の部分が、等身大の少年に限りなく近く、そして、彼がまったくの無力で未熟なところから冒険を積み重ねていく過程が「ごっこではないリアル」であり、それが物語にとっていちばん大切なことだと思うのです。

 その「リアルさ」こそが、「プリデイン物語」の魅力です。

「最初から最後まで徹底的に主人公が強い」(水戸黄門系)ファンタジーとは対極にある正統派冒険物語ですが、案外これが多くない。多くないのは難しいからなのですが(大切なことなので二度言いました)、この「プリデイン物語」は、その王道の道を着実に進みます。

 ストーリーはオーソドックスといえども、キャラクターは魅力にあふれています。

 主人公のタラン少年が出会う人たちは、それぞれが「自分のフィールドからはみ出た」人たちです。その彼らが、タランに出会うことによって本領を発揮して成長してゆきます。
 もちろん、タランも。

 この物語がスタートする時点では、タランは「ブタ飼育補佐」。つまり、ブタ飼いのお手伝いです。
 このブタ、ヘン・ウェンというのが、「予言が出来る」魔法のブタ。世界に一匹しかいない貴重なブタなので、タランの村で守っていたのです。

 そのブタがある日突然、狂ったように柵の下を掘って逃げ出したことから、タランの冒険は始まります。

 ヘン・ウェンを追って、思わずタランは森の中へ。そこで、ギディオン王子に出会い、世界がたいへんな危機にさらされていることを知るのでした。

 最初は、ギディオン王子の旅にお供するつもりでいたタランですが、途中で王子とはぐれてしまいます。
 頼りにしていたギディオンを失い、「このうえは自分自身の力で問題を解決しよう」と、すべてを「背負う」決意をした時から、タランは急速に成長します。

 ここらへんはファンタジーぽさはなく、はてしなくリアル。

 「強い怪物を倒したから」とか「秘密の宝を見つけたから」成長するとかではなく、まだ具体的には何もなしていなくても、タランは「決意」したことで、もう成長しているんです。

 今回の金言はこちら。

 「みなが、同じ目標をめざして、危険をともにするならば、」と、ダルペンは、さらにいった。「だれがなにをしたかなど、ほんとうにだいじなことかな?われわれのおこないは、まったくひとりの力でできるものはない。ほかの人間のだれにも、自分の一部分がある。だれよりも、おまえは、そのことをわきまえていなくてはならん。」(p255)

 仲間にはみんな似たところがある、だから、でこぼこのところを補完しあい、一緒に成長してゆくことができるんだ、と言う物語のテーマが、最後の最後でわかりやすく、賢者ダルペンによって解説されます。

 とことん、正統派。
 変わった調理法や凝った盛り付けはありませんが、すっきりとすがすがしい、剣と魔法のファンタジーなのです。

 プリデイン物語は全五巻で、この後の展開には哀しい話や哲学的な展開もあります。けれど、土台の部分は「誰かを助けたい」「仲間を大切にする」と言う純粋な心が支えています。

 これから、タランは様々な冒険を経験して成長します。
 どうぞ、ブタ飼育補佐の少年と、心躍る冒険の旅をご一緒ください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 剣と魔法のファンタジーなので、当然のように戦いのシーンはあります。「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫の方にはおすすめです。
 男の子と、冒険ものが大好きな女の子におすすめの正統派冒険ファンタジーです。食事シーンは少なめ。
 週末の午後に、ゆっくりお楽しみください。

 ※そして、ディズニーランドファンの方へ。この物語はあの伝説のアトラクション「シンデレラ城ミステリーツアー」の原作です。ぜひ読んでみてくださいね!

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