【白狐魔記】妖力を得た狐の人間探求の物語。島原の乱編。【小学校中学年以上】

2020年10月17日

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白狐魔記  天草の霧  斉藤洋/作 偕成社

白狐魔丸は、白駒山の仙人のもとで修行し、人間に変化できるようになった狐です。しかし、何百年と生きるうちに、さまざまな妖力を持つようになっていました。「天竺へ心を洗ってくる」と言い残し、旅に出た仙人様を待ち続ける白狐魔丸でしたが、やっと仙人様が戻ってきました。ところが、仙人様、なんだか奇妙な「おまけ」がついていて……

この本のイメージ 歴史ミステリー☆☆☆☆☆ 和ファンタジー☆☆☆☆ きつねかわいい☆☆☆☆

白狐魔記  天草の霧  斉藤洋/作 偕成社

<斉藤 洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

 妖力を得た狐、白狐魔丸の人間探求の物語、第五巻です。
 最初にお知らせしますが、この巻は暗いです。

 「マジカル・マナーハウス」は基本的にハッピーエンドの物語を取り扱うサイトで、バッドエンド、アンハッピーエンドは除外していますが、この「白狐魔記」は、わりとぎりぎりのところなのです。
戦のシーンもありますし、人も死にます。お話によっては、ほろ苦い展開になることもあります。ただ、生き残る人もいますし、主人公は妖仙なので死にません。

 今回のお話は、本サイトとしてはかなりぎりぎりなのですが、魅力的な作品であるのは確かなので、上記の前置きの上、ご紹介することにしました。

 さて、今回のあらすじは、

白狐魔記  天草の霧  斉藤洋/作 偕成社

 天竺に「心を洗いに行って来る」と言い残し、旅立たれた白駒山の仙人さまがようやく戻ってきました!
わたしは、この仙人さまのゆるゆる感覚が大好きだったのですが、本人的にはさらに心が軽くなったご様子です。

 白駒山で仙人さまを待ち続けていた白狐魔丸は、とある商人に出会います。それは、南蛮堂煙之丞。ちょっとお調子のいい、謎の男ですが、白狐魔丸を仙人だと思い込み、弟子にしてもらおうとします。人間には興味がないので、冷たく断る白狐魔丸。

 ところが、洞窟にもどってみると、意外な人物がいて、煙之丞を鍛えているのです。
 その人こそ、何百年も前に「心を洗ってくる」と言い残して旅立った、仙人さまでした。

 仙人さま、あいかわらずです。
 仙人さまのテキトーアドバイスで、煙之丞の火炎の術はあっという間に上達します。

 白狐魔丸は、仙人さまの指示で、煙之丞を京まで送ってやることになりました。
 この物語で京というと、たいてい、あの方がいます。

 そう、妖狐、雅姫(つねひめ)。

 今回も、雅姫が気に入った人間と白狐魔丸が偶然出会い、事件に巻き込まれて行く展開です。その人の名は、板倉重昌。彼は、島原のキリシタン一揆の平定に、九州へと差し向けられることとなります。

 白狐魔記には、「人間とは何か」と言う大テーマのほかに、三つのテーマが貫かれています。それは「武士とは何か」「宗教とは何か」そして「あだ討ち」です。今回の話は、それらが色濃く出る物語となりました。

 前回の「戦国の雲」は一向一揆のお話でしたが、今回はキリシタンの反乱です。損得で行われる戦と違い、信仰心のもとに行われる戦には理屈がない。人間はどうしてそんな戦に身を投じるのだろう……狐の白狐魔丸は不思議でしかたがありません。

 だから、その大将である、天草の益田四郎時貞に会えばわかるかもしれないと思ったわけです。

 益田四郎は、白狐魔丸や雅姫のような特殊な力を持つ人間でした。さすがに何もないところから食べ物を出したりはできないけれども、海の上を歩いたりすることができました。

 益田四郎は自分のような力を持つものは、神の使いか悪魔しかいない、そして自分は悪魔ではないのだから神の使いである、と言うのです。すごい二元論!

 でも、その力は、狐である白狐魔丸も雅姫も持っているし、白駒仙人さまにもある。もともとの理屈がおかしい(この物語の世界では)と感じた白狐魔丸。けれども、信じきった益田四郎には話が通じないのです。

 狐の目から見た島原の乱は、どんなふうに見えたのでしょうか。
 そして、情が濃いけど気性の荒い、妖狐雅姫の今回の運命は……?

 読む人にさまざまな問いかけをする、ちょっとほろ苦いお話です。でも、陽気な人たちは健在ですし、白狐魔丸はまたひとつ、かしこくなります。

 何百年生きても、子狐のような雰囲気を持つ白狐魔丸。彼がくもりのない瞳で見る人間の世界は、矛盾と不思議に満ちています。次回のお話は「元禄の雪」。どうやら忠臣蔵のお話のようです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 今回は、かなり重いお話です。人が何かを信じること、何かのために戦うこと、に対して、ストレートに問いかけます。たくさん人が死にますし、僧が殺されるところなど残酷なシーンもあります。「そういうシーンがあるのだな」と前もって覚悟していれば大丈夫な方、歴史ファンタジーがお好きな方にはおすすめです。
 人間同士の争いはキツイですが、いい人も出てきますし、ゆるっとやさしい仙人さまも戻ってきます。白狐魔丸は相変わらず、純真でかわいい。

 落ち着いた時間がとれるときに、ゆっくりお楽しみください。

いつもありがとうございます

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