【魔女バジル】魔女たちとコウモリ男との戦い。奪われたほうきは奪還できるのか？【小学校低学年以上】
めでたく「努力の魔女」になったバジル。大魔女マジョラムから譲り受けた「魔女おぼえがき」を読んでいると、不思議な呪文を見つけました。そして、その呪文が、バジルの次の冒険の幕開けだったのです……
この本のイメージ 努力☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆ 魔女つよい☆☆☆☆☆
魔女バジルとなぞのほうき星 茂市久美子/作 よしざわけいこ/絵 講談社
＜茂市久美子＞ 岩手県生まれ。会社勤務をへて執筆活動に入り、「おちばおちばとんでいけ」で、ひろすけ童話賞受賞。ほかの作品に「ゆうすげ村の小さな旅館」「おいなり山のひみつ」「つるばら村シリーズ」など。
＜よしざわけいこ＞
東京都生まれ。多摩美術大学染色デザイン科卒業。テキスタイルデザインをへて、絵本・イラスト・童話を中心に活動中。1985年、KFSアートコンテスト特別賞受賞。2001年、初の絵本作品『ライオンは そよかぜの なかで』は、ブラティスラヴァ世界絵本原画展に出品。
「魔女バジルと魔法のつえ」の続編です。
七魔ヶ山の東の峰に住む魔女バジルは、人に「努力」の力を送る魔女。それと、「根気」も送ることができます。さて、バジルは、大魔女マジョラムさまから譲り受けた「魔女おぼえがき」を読んでいたら、不思議な呪文をみつけました。
呪文の意味がわからず悩むバジル。そんなとき、友達の魔女コリアンダーが、七折れ滝のほとりに、世界中の書物が収められた不思議な「パラスの図書館」が現れたと知らせに来ます。
バジルは、パラスの図書館の中に入ることができ、そこでふたたび、不思議な啓示を受けるのです。
次の日、バジルは星博士と再会します。星博士と大魔女マジョラム、そして、譲り受けたノートの呪文には何か関係があるようです。
それは、70年前に行方不明になった努力の大魔女セイボリーに関する秘密でした。
70年前、セイボリーはコウモリ男と戦い、撃退したさいにほうきから落ちて行方不明、ほうきはほうき星となって空に縛られてしまったというのです。
バジルは、セイボリーのほうきをとりもどすことが出来るでしょうか。
……というのが今回のお話。
大魔女とよばれる魔女たちは、何百年も生きていておばあさんの姿をしていますが、魔女はゆっくり歳をとるのでバジルたちの世代は、まだ12歳くらいの姿です。それでも、その何十倍もの年齢のようです。
まだまだ正式な魔女になって3年7ヶ月のバジルは、憶えること学ぶことがいっぱい。
そんなバジルが、先代の努力の大魔女セイボリー失踪の謎を解き、奪われたほうきを取り戻すためにコウモリ男と戦います。
挿絵ではあどけない姿をしているバジルたち新人魔女ですが、行動力も勇気も友情もいっぱい。
おそろしいコウモリ男に、団結して立ち向かいます。
唯一の男性キャラ、星博士は、なんと誘拐されちゃう……博士、ヒロインかよ！
今回は、バジルは努力だけでなく勇気も出して、困難に立ち向かいます。
「魔女バジルと魔法のつえ」では、コツコツと努力するすばらしさを描いていましたが、今回の物語では魔女たちの友情や、協力し合うこと、支えあうことなどが描かれています。ほんわかな雰囲気なのに、本気を出した魔女さんたち、とてもつよいのです。
そして、バジルはまた一つ成長します。
ほのぼのとした雰囲気のファンタジーですが、正統派の成長物語でもあります。主人公のもつ力が「努力」と「根気」だというのも、しみじみいい感じ。
「根気」の魔女だからこそ、何年も失踪した友達を探し続けたり、70年前のほうきを取り戻せたりできたんだな、と、納得できるんです。
「努力」も「根気」も、行動や想いを持続させる力です。
派手な瞬発力や突破力がなくても、水滴が巨岩に穴を開けるような大きな力がこれらにはあります。
バジルの力がこの、「地味だけれど使いようによっては強大な力」であることが、この物語の大いなる魅力です。地味で渋い力ばかりを持っているバジルですが、いざというときにみんなからバジルが頼りにされるのは、「幸運」や、「勇気」、「希望」、「才能」、「健康」を束ねるのは、「努力」と「根気」だってことなんでしょう。
バジルたちはかわいらしいし、ストーリーには悪者退治的なダイナミックさもあるので、女の子だけでなく男の子も楽しく読めると思います。
字は大きく、文章は平易で読みやすく、可愛らしい挿絵はふんだんに入っています。
キャラクターの名前が全部ハーブの名前なので、読んだあとにハーブのことを調べるのも楽しそうです。
バジルはお料理によく使うハーブなので、それもうれしいですね。
わたしもバジル、大好きです。チキンソテーやパスタだけでなく、カレーの隠し味にも入れています。そうそう、刻んだにんにくやオリーブオイルと一緒に納豆に入れてもおいしいんですよ！おためしあれ！
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はいっさいありません。ほのぼのとした雰囲気ですが冒険要素もあるファンタジーです。魔女たちの熱い友情がじんわりと伝わってくるお話です。
読後はおいしいお茶とお菓子が食べたくなるかもしれませんので、お好きなお茶とお菓子をご用意ください。ハーブティーもおすすめです。
https://www.mmanorhouse.com/2020/06/26/post-3526/
