【二分間の冒険】時間とは、心とは、勇気とは。たった二分間の大冒険【小学校中学年以上】

2020年10月8日

広告

二分間の冒険 岡田淳/作 偕成社

六年生の悟におきた二分間の不思議体験。体育館の裏で黒猫に出会い、「見えないとげ」を抜いてあげた時から、彼の冒険が始まりました。さて、悟は黒猫ダレカを探し出し、竜を退治し、もとの世界にもどれるのでしょうか。

この本のイメージ 異世界☆☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆☆ 哲学☆☆☆☆☆

二分間の冒険 岡田淳/作 偕成社

<岡田淳>
日本の児童文学作家。著書『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞を、『こそあどの森の物語』で野間児童文芸賞を受賞し国際アンデルセン賞の国際児童図書評議会(IBBY) オナーリストに選ばれた。翻訳家、挿絵・イラスト作家、エッセイストでもある。

二分間の冒険 岡田淳/作 偕成社

 初読です。児童文学界ではかなり有名な本らしいです。無知で申し訳ありませんでした。(平伏)

 主人公の悟君は、竜退治の騎士のような、冒険物語が大好き。

 翌日の映画鑑賞会の準備中、体育館の床にビニールシートを敷いていたとき、偶然、とげ抜きが落ちていたのを見つけます。それを保健室に届けに行く途中、テレパシーで人間の言葉をしゃべる黒猫に出会い、猫の前足から「見えないとげ」を抜いてあげました。

 そのお礼に、悟は「時間」をもらいます。ただの時間ではなく、異世界で大冒険する時間です。そして、それは「ゲーム」でもありました。

 その世界で「いちばんたしかなもの」に、この黒猫ダレカは隠れている。それを見つけて「つかまえた!」と言えばもとの世界に戻れるのだと。

 悟はその世界から変える手段を探しつつ、世界を探索します。そこは子供しかいない、不思議な世界でした。

 ……と、言うのがあらすじ。

 話の筋としては単純なのですがたくさんの伏線があって、じつはかなり複雑な物語です。
 悟は、子どもたちが「竜のいけにえ」にされる奇妙な世界の謎を解きながら、冒険の奥へ入ってゆくことになります。

 伏線と謎解きの多い話なので、これ以上内容については書けないのですが、この「竜退治」には、様々な「ひっかけ」のような「罠」があり、ひとつひとつの謎は単純なのに、巧妙に「正解」に近づけないようになっているのです。

 それが、子どもたちそれぞれの「思い込み」や、純真な心を利用していて、それらの種明かしをされた悟たちが、竜に逆襲します。

 たった一人ではたいしたことはできないが、みんなで協力すれば大きなことができる、というお話でもあります。

 現実世界では、たった二分間ですが、戻ってきたときにはたくさんの経験をした悟は、大きく成長していました。
 これは、「読書の時間」と似ています。本を読んでいる時間はわずかでも、長い長い旅を体験したような小説に出会うことが、よくあります。

 ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」でバスチアンが本を読み終えたとき、「モモ」で、モモが現実の世界に戻ってきたとき、わたし自身も目に見えない多くのことを吸収し、何百時間もの旅を終えて、魂が本の前に戻ってきた気がしました。

 もちろん、本を読むだけでは実質のところはわからないことも、この世にはたくさんあります。何も体験しなくていい、本を読むだけでいい、などとは思いません。けれども、実際に世界中で起きている物事を全部体験する事はできない以上、人間には本が必要なのです。

 たくさんの人生を擬似的に体験し、自分の頭で考えることができる━━それが、本の力。

 悟の「二分間の冒険」は、わたしたちが「本を読んでいるあいだの冒険」でもあります。悟が現実世界の体育館の裏に戻ってきたとき、わたしたちも悟と一緒にたくさんの「体験」を携えて現実世界に戻ってきているのです。

 世界は見た目どおりではなく、敵のように見えたものが味方だったり、頼りにしていたものが頼りにならなかったり、無駄だと思っていたものが大切だったりと、自分の頭で考えて考えて考え抜いてはじめて見えてくるものがたくさんあります。そして、1人では解決できないことも、互いに支えあい協力すれば解決できたりもします。

 「二分間の冒険」には、子どもにとって、いや、人間にとって大切な、「深く掘り下げる力」を要求します。それは心地よくもあり、興味深くもあり、そして、ほんのすこしですが、守られた「子どもの世界」を一歩出た先の「世界」に触れたときの根源的な畏れも含みます。わたしは、それが「大人になること」のように感じられてなりません。

 たった二分間の間に、悟は、お調子のよい小さないたずらっ子から、自分の頭で考えることが出来る、大人の世界を知った子どもに成長していました。

 人間は一瞬では成長できないけど、一瞬で成長した物語を読むことで、その「成長」を疑似体験できます。

 読んだ人の心に、「成長」の種をくれる物語です。子どもにも、そして、大人にもおすすめのファンタジーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。むしろ、HSCやHSPの方ほうが、深い感受性で多くのことを受け取れると思います。救われる話やなごむ話ではなく、文字通り成長するお話です。

 字は程よく大きく、文章は平易で読みやすく、振り仮名もふってあるので、小学校中学年から楽に読めると思います。ボリュームはそれほどありませんが、読んだ後に考えたくなるお話ですので、週末などにたっぷり時間をとって、ゆっくりお楽しみくださいね。

いつもありがとうございます

にほんブログ村 本ブログへ

広告