【豆つぶほどの小さないぬ】コロボックル物語の二冊目。小さな犬を探す大冒険【コロボックル物語】【小学校中学年以上】
小さな人コロボックルたちと不思議な共同生活をはじめた「せいたかさん」。コロボックルの1人、「風の子」ことクリノヒコは、子どもの頃に出会った、自分たちと同じくらいの大きさの犬のことが気になって仕方がありませんでした。ところが、人間のほうにもそのような生き物のうわさがあると聞き……
この本のイメージ 不思議☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ 謎解き☆☆☆☆☆
豆つぶほどの小さないぬ コロボックル物語 2 佐藤さとる/作 村上勉/絵 講談社
<佐藤さとる>
日本のファンタジー作家。「コロボックル物語」は日本発のファンタジーとして知られる。
コロボックル物語第2巻。今回はコロボックル側の視点でお話が進みます。どうやら、本来はこちらが書きたかったお話のようです。2センチほどの身長の人たち「コロボックル」たちと、「せいたかさん」「ママ先生」と呼ばれる人間の夫婦の交流の物語です。 第1巻で「せいたかさん」がコロボックルたちの住む小山に建てた小屋は、コロボックルたちの城になり、「せいたかさん」は「おちびさん」と結婚して、別の場所に小さな家を建てました。
「おちびさん」は、赤ちゃんを産んでお母さんになったので、今は「ママ先生」と呼ばれています。
今回は、人間界では「ユビギツネ」と呼ばれコロボックルたちからは「マメイヌ」と呼ばれる、小さい小さい犬をさがすお話。この幸運をもたらすといわれる小さい犬たちは、かつてコロボックルのしもべとして共存していた生物でした。
しかし、いつしか見かけなくなり、大昔に死に絶えたといわれてきたのです。
このマメイヌをさがす「風の子」ことクリノヒコの冒険が今回のお話。
せいたかさんとクリノヒコが協力してマメイヌをさがします。一方、コロボックルたちは、せいたかさんたちが毎日読んでいる「新聞」に興味を持ち、コロボックルたちも自分たちの新聞を作ろうと思い立ちます。「コロボックル通信」です。
せいたかさんがくれた机の引き出しを改造して街を作り、自分たちの王国を発展させてきたコロボックルたちですが、ついに印刷技術に手を出すわけです。
せいたかさんが新聞社で使っていた「写植」(字の書かれた判子のようなもの)をコロボックルたちにわけてくれました。ふつうの人間の本では振り仮名に使うものです。これを使って、本格的な新聞を作ろうというのです。
写植って、なつかしい。昔はこの小さな判子みたいなものをならべて印刷していたのです。写植を拾うのは、たいへんな作業でした。今はコンピューターで一気にできる時代です。ほんとうにいい時代です。
この小説で書かれている時代と言うのは、いまでも朝の連続ドラマなどで舞台になることが多い時代ですが、今はあたりまえのように便利に使われているものがほとんどありません。身の回りのものが、ほぼ人間の手でつくれるものでまかなわれていた時代でもあります。
戦後すぐの設定ですから、せいたかさんがコロボックルたちの住む小山に自力で小さい家を二軒建てたのも、当時としてはよくあることだったのです。小さなバラック小屋のような家を自分で建てて暮らしながら、だんだん家を立派にしてゆくような、そんな時代でした。
そして、同じようにコロボックルたちも、せいたかさんの机の中に自分たちの街を作り上げてゆきます。
コロボックルたちの新聞社「コロボックル通信社」が設立され、コロボックルたちの小さな新聞「コロボックル通信」が完成するまでのお話と、マメイヌの捜索と謎ときが並行してすすみます。
ラストは、すべてのおはなしが綺麗にまとまったハッピーエンド。
これからのコロボックルたちの活躍も楽しみな、わくわくした気持ちでいったんは終幕です。
作者は、この小さな人たちの文明の発展みたいなものが書きたかったのかもしれません。当時の日本も高度経済成長で、ぐんぐんと街ができ、変化していた時代でした。
当時の時代のにおいなども、今の子どもたちが読むとファンタジックなのかもしれないな、と思います。
とてものどかで、ほのぼのとしたお話です。
1巻目から、お話は続いていて、途中からだとわからないので、まずは「だれも知らない小さな国」からどうぞ。
※新イラスト版は三巻までしか出版されていません。現在、青い鳥文庫版がいちばん入手しやすいようです。電子書籍もあります。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はほとんどありません。ほのぼのとしたファンタジーです。日常世界と不思議要素の混ざり具合が絶妙で、読んだ後は、自分の身の回りにもコロボックルがいないかと、つい、さがしてしまいます。
クリノヒコが怪我をするシーンはありますが、基本的に暴力シーンなどはいっさいなく、安心して読めます。
週末のお風呂上りなど、リラックスした時間に読むのにぴったりです。もちろん、読み聞かせにもおすすめです。
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