【エルマーと16ぴきのりゅう】エルマーのぼうけん完結編。竜のファミリーを救出!【小学校低学年以上】
無事に「どうぶつ島」から戻ってきた竜でしたが、なんと故郷では、悪い人間たちに家族が洞窟に閉じ込められていました。困った竜はエルマーに助けを求めにきます。さて、エルマー、冒険の仕上げです。
この本のイメージ 冒険☆☆☆☆☆ 竜がいっぱい☆☆☆☆☆ 猫もいるよ☆☆☆☆☆
エルマーと16ぴきのりゅう ルース・スタイルス・ガネット/作 ルース・クリスマン・ガネット/絵 わたなべしげお/訳 福音館
<ルース・スタイルス・ガネット>
アメリカの作家。1923年ニューヨーク生まれ。化学者だったが、その後、児童図書協議会の職員として働く間に、「エルマーのぼうけん」(福音館書店)を執筆。ほかに「エルマーとりゅう」「エルマーと16ぴきのりゅう」
<ルース・クリスマン・ガネット>
ルース・スタイルス・ガネットの母親。アメリカの有名イラストレーターで、ニューベリー賞を受賞したキャロル・シャーウィンベリーの「ミス・ヒッコリー」などを手がける。
「エルマーのぼうけん」から始まるエルマーシリーズの三作目、完結編です。
どうぶつ島で虐待されていた子どもの竜は、冒険家の猫が見込んだ少年、エルマー・エレベーターの知恵と勇気で救出されました。
その後、エルマーと竜は帰り道にカナリヤ島での宝探しを手伝い、帰宅します。エルマーは無事に家に帰り、竜は故郷の「そらいろこうげん」に戻ろうとしますが、なんと、高原を守っていた砂嵐が消えてしまい、家族の竜たちは悪い人間たちに捕まって洞穴に閉じ込められていたのです。
竜はあわててエルマーに助けをもとめに行きました。
エルマーは、竜たちを助けるために、必要な道具をナップザックに入れ、再び冒険の旅に出かけます。
はたして、竜の家族を助けることができるでしょうか。
……というのが今回のあらすじ。
「エルマーのぼうけん」から始まる完全な続き物なので、まずは「エルマーのぼうけん」次に「エルマーとりゅう」、最後に「エルマーと16ぴきのりゅう」。この順番で読まないと、ストーリーが理解できません。表紙デザインなどでジャケ買いせず、必ずこの順番でお読みください。
この本の前半は竜の帰り道です。
大きくなった身体で飛んで帰ろうとする竜ですが、さすがに家まで休みなしで飛んでゆくことができず、休む場所を探します。以前なら大きな川にかかった橋の下に隠れれば身を隠せたのに、最近は川は地面の下を流されるように工事されて、道路の下を通っているため、橋がない川が多くなり、竜の身を隠す場所が減ってしまいました。
このあたり、発達した文明と竜は、共存が難しいことを表現しています。竜は人間に見つからないように気をつけながら、ふるさとの「そらいろこうげん」を目指します。
この「そらいろこうげん」は普段は激しい砂嵐に守られていて、人間は近づけないようになっているのです。ところが、暫く前からこの砂嵐が消えてしまい、あやしい人間たちが竜の住む洞穴に近づけるようになってしまいました。
そして、彼らは、まさに欲深な悪い人間たちだったのです。
「エルマーシリーズ」は、作者がもと化学者だったこともあり、「知恵をどう使うか」が作品のテーマとして描かれています。エルマーは、心優しく勇気のある少年ですが、それだけではなく、頭の回転が早く機転が利き、知恵があるのです。
大人の人間がかならずしも、いつも正しくはないことや、「恐ろしい」とされている竜は実はとても大人しくて心が優しかったりと、固定観念や思い込みにしばられないように、と言うメッセージも込められています。また三冊目のお話は、人間と竜という架空の生物、つまり近代文明と夢や空想の共存共栄なども裏テーマとして流れていると思います。
いつも、大きな危険を、身近な小道具で乗り越えていくエルマーですが、今回も同じ。
悪い人間たちの陰謀を、知恵で打ち砕きます。
そして、もちろん、両親を心配させないように、翌日には家に帰るエルマー。
この、小さな子供でも知恵と勇気があれば、きっとできる。できそう、と言う範囲でエルマーが問題を解決してゆく様子がいいのです。自分はもう大人ですけれど、小さい子が読んだら「自分も何かが出来るかも」と言う気持ちになれるでしょう。
そう感じてほしい、そんな願いが伝わってくる童話です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。勇気が出てくる夢いっぱいの童話です。完全な続き物なので、「エルマーのぼうけん」から順番にお読みになることをおすすめします。1.「エルマーのぼうけん」 2.「エルマーとりゅう」 3.「エルマーと16ぴきのりゅう」の順番です。
読後はエルマーのようにチョコレートが食べたくなるかもしれませんのでご用意くださいね。
表紙はカラフルで可愛らしく、白黒の挿絵はふんだんに入っていて、デザインもすばらしいので、絵が好きなお子様は、読んだ後自分も竜の絵を描いてみたくなるかもしれません。クレヨンや色鉛筆などをご用意されるのもいいかも。
楽しいお話ですので、読み聞かせにもおすすめです。
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