【ハウルの動く城シリーズ】チャーメインが留守番することになった家は魔法の家?! 本好きの女の子の大冒険【小学校高学年以上】

2024年2月27日

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チャーメインと魔法の家 ハウルの動く城3  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 市田泉/訳 徳間書店

ウィリアム大おじさんが病気になって入院したのでチャーメインは、大おじさんの家の留守番にやってきました。でも、とっても小さなこの家は、実はものすごく大きな魔法の家だったのです! そこへ転がり込んできた少年ピーターと、不思議な犬「宿無し」とで、チャーメインの不思議な冒険が始まります。

この本のイメージ 魔法☆☆☆☆☆ 本好き成分☆☆☆☆☆ ハウルも出てくるよ☆☆☆☆☆

チャーメインと魔法の家   ハウルの動く城3   ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 市田泉/訳 徳間書店

<ダイアナ・ウィン・ジョーンズ> 1934年イギリス生まれ。オックスフォード大学セントアンズ校でトールキンに師事。イギリスを代表するファンタジー作家。

 J.K.ローリングと並ぶファンタジーの女王(と、わたしが勝手に思っている)、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「ハウルの動く城」シリーズの3巻目です。おそらくもっと続けるつもりだったのでしょうが、残念ながら作者が亡くなられてしまい、シリーズはこの巻で終了しています。

 ジョーンズは独特の作風で唯一無二の作家だったため、キャラクターを継承して別の作家が書くことができないのです。ジョーンズ作品の魅力は、キャラクターもさることながら、突拍子も無い設定や、パズルのような巧妙な構成にあるので、真似のできない匠の技みたいなところがあります。

 わたしは、ハウルのシリーズは、この3巻目が一番好きなのですが、たぶんそれはヒロインが大の本好きだからでしょう。
 ヒロインのチャーメインは、三度の食事より本が好きな女の子で、しかも厳格な母親によって悪い意味で「箱入り」に育てられたため、本を読む以外にできることがほとんどありません。そんな彼女が、入院したウィリアム大おじさんの留守番に、大おじさんの家にやってきます。

 部屋がふたつしかない小さな家だと思っていたら、このおうち、実は何部屋もあり時空を越えてあっちこっちにつながっている「魔法の家」だったのです!

 そのうえ、幸運にも王宮の図書室整理の手伝いもさせていただけることになり、魔法の家から王宮図書室へと通うことになったチャーメイン。けれど、そのために王家の秘密とトラブルに巻き込まれてしまうことになります……

 というのが、今回のあらすじ。

とっても怖い昆虫人間ラボック

 今回登場する悪役、「ラボック」。これは、人間と昆虫のハーフみたいな不気味な紫色の虫人間です。でも、人間に卵を産み付けて子孫を増やすこともできるし、人間になりすますこともできるのです。
 そして、なかなか死なない。すごく怖い。

 この強敵ラボックに、チャーメインたちハイ・ノーランドの人々がどう立ち向かってゆくかがこの物語の本筋です。

本好き大集合

 ヒロインのチャーメインは、何よりも読書が大好き、本が大好きな女の子ですが、ハイ・ノーランドの王様と王女ヒルダさまも、チャーメインが驚くほどの本好きです。

 特に、ヒルダ王女は、かしこく有能な方ですがかなりの年齢ですが結婚していません。様々な縁談を断り、父である王様のお仕事を手伝い、日々本を読んで過ごすと言う方です。

 王様もヒルダ王女よりはずっと柔らかい雰囲気ですが、本好きだけは共通していて、どんなに王宮の台所事情が苦しくなろうとも、本だけは売らないと心に決めています。

 チャーメインは、街のパン屋の娘ですが、「本好き」の一点で、王様と王女様のおふたりとあっと言う間に仲良くなりました。

とんまな魔法使いの弟子

 いきなり飛び込んできたピーターは、ウィリアム大おじさんの自称弟子。本当かどうかは、チャーメインに確かめることはできないのですが、とにかくピーターはものすごくとんまな魔法使いなのです。

 なにしろ、右と左がいつもこんがらがってわからなくなり、指に目印の糸を巻いて覚えなきゃならないほど。だから、どんなにきちんと呪文をとなえても、正しく発動しないのです。

 そんなピーターと家事能力ゼロのチャーメインが、見よう見まねで掃除や洗濯、料理に挑戦するドタバタストーリーが展開します。
 ふつうはそこで、チャーメインがピーターに恋をして、家事を覚えて女の子らしくなってゆくものなのでしょうが、ところがどっこい、上達してゆくのはピーターです。(しかも恋はしない)

 でも、ピーターにも大きな秘密があって……これは読んでみてのお楽しみ。

ソフィー、大活躍!

 今回もおなじみ「魔法使いハウルと火の悪魔」のヒロイン、ソフィーが登場します。ペンドラゴン夫人として、ハイ・ノーランドの王宮に正式に招待されているのです。ハウルだけでなく、ソフィーもインガリーの腕利き魔法使いとして認められているのですね。かっこいいです、ソフィー! もちろん、カルシファーもいますよ!

 息子のモーガンがまだまだ小さいので、モーガンも一緒に来ているのですが、あれ? おかしいな、モーガンが長男のはず……どういうわけか、モーガンの上の息子がいてソフィーは二児の母になっており、そして、理由はわかりませんが、ものすごくぷりぷり怒っているのです!

 ソフィーをここまで怒らせてしまう人って……
 さて、金髪のくるくる巻き毛の天使のようにかわいらしいこの5歳児はいったい、何者なんでしょう? (しらじらしい)

予測不能の展開

 ジョーンズ作品恒例の「どうしてそうなるの」と言う、予測不能の展開の連続です。けれど、よくよく読むとちゃんと伏線はあるし、最後はすべてのパズルのピースがぴたっと会うのです。

 ここらへんの気持ちよさが、職人芸。

 女流作家のファンタジーは人間関係や情緒がメインのテーマになることが多いのですが、ジョーンズ作品は構成のうまさでうならせるタイプ。
 しかも、キャラクターは魅力的だけど、見せ場はシンプルな悪者退治で恋愛ではないのです。そのうえ、児童向けなので残虐シーンや流血シーンはほとんどありません。

 この絶妙のさじ加減が、魔法大好き冒険大好き少女を夢中にさせるジョーンズの魔法とも言えます。

 詳しくは申せませんが、とにかく読んでいただきたい。百聞は一見にしかずですよ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 悪者と戦ったり追いかけっこしたりと、アクションシーンもそこそこあるのに、流血、残虐シーンはほとんどありません。安心してお読みいただけます。魔法いっぱい不思議いっぱいの世界観は、疲れた心を空想の世界に連れていってくれ、週末の癒しになります。

 チャーメインのパパの作ったタルトやパンが、ものすごくおいしそうなので、読後に食べたくなることまちがいなし。
 チーズタルトや、ミートパイと、熱い紅茶をご用意くださいね。

 読書の秋、とっておきの紅茶をお供にぜひどうぞ。

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