【はりねずみともぐらのふうせんりょこう】森の動物たちのほのぼのライフ。読みはじめにおすすめのおはなし集【小学校低学年以上】

2024年2月27日

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はりねずみともぐらのふうせんりょこう アリソン・アトリーおはなし集 アリソン・アトリー/作 上條由美子/訳 東條なりさ/絵  福音館書店

はりねずみともぐらが歩いていると、木の下でふうせん売りの女の人が休んでいました。つかれきっているのか、眠っています。はりねずみはふうせんに興味しんしん。もぐらは、そのふうせんをふたつ、はりねずみのために買ってあげることにしました……

この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ 動物愛☆☆☆☆☆

はりねずみともぐらのふうせんりょこう アリソン・アトリーおはなし集 アリソン・アトリー/作 上條由美子/訳 東條なりさ/絵  福音館書店

<アリソン・アトリー>
Alison Uttley, 1884年12月17日 – 1976年5月5日。イギリスの童話作家、ファンタジー作家。本名はアリス・ジェーン (Alice Jane)。田舎町ダービーシャーのクロムフォード生まれ。田舎の自然を深く愛し、故郷の思い出を作品に生かした。代表作は「時の旅人」。

 75年以上前に発表されたお話集が、今年新刊となって登場しました。
 森の動物たちほのぼのとした日常をえがく動物ファンタジーです。

 日本では、昔から定期的に動物ファンタジーがブームになります。最初は「ムーミン」(正確にはムーミンは妖精で動物ではありませんが…)「山ねずみロッキーチャック」「ガンバの冒険」「ぼのぼの」「とっとこハム太郎」などなど……

 たいてい、最初のアニメで育った世代が大人になり子供たちに見せ、その子たちが大人になったらそのまた子供たちに見せ……というサイクルのようです。

 日本人の「子供心」と「動物ファンタジー」はがっちり合体しているように思えます。

 この「はりねずみともぐらのふうせんりょこう」の原作は、1945年に発表されました。70年以上前の作品なのですが、動物たちの生き生きとした描写は色あせることなく、現代のわたしたちにも魅力的に映ります。

 むしろ、この古風な雰囲気がほのぼのとした可愛らしさとあいまって、あじわい深い。
 この本のために描かれた東條なりさ先生のイラストも、レトロな味わいで、よりいっそう物語の雰囲気を引き立てています。

 この本には以下の短編が収録されていて、

 ・二匹の野ねずみ、ジェマイマとジェレミーが野原に置き忘れてあった人形の家に入り込み、眠っていると、そのまま持ち主の家に連れて行かれて妖精と間違われるお話。

 ・表題にもなっている、はりねずみともぐらのふうせん旅行のお話。

 ・めんどりと黒うさぎと野ねずみが、小さい家を作って仲良く暮らすお話。

 の、三篇です。

 どのお話も、動物たちのとぼけた魅力と、互いを思いやる優しさが描かれていて、読んでいると思わず顔がほころんでしまいます。
 もぐらくんが、土を掘ることで見つけた金貨を持っており、実はお金持ちなので、人間からこっそりふうせんをもらうときも、畑の野菜を食べてしまうときも、対価として金貨を置いていくので人間はかえって大喜びする、と言うのも妖精じみていて素敵なところ。もぐらくん、いい奴です。確かに、もぐらが金貨を持っていても、なんの得にもならないんですけども。

 わたしが一番好きなのは、最後の、めんどりと黒うさぎと野ねずみのお話。
 猟犬に襲われた黒うさぎと、タカに襲われた野ねずみと、自由になりたいめんどりが偶然出会い、一緒に暮らしたら安全で楽しいんじゃないかと、みんなでわらのおうちを作るのです。

 三匹で楽しく暮らしていると、人間の女の子が妖精の家だと勘違いして、クリスマスのプレゼント交換をすると言う、心温まるお話です。

 イギリスには、窓辺に小さなコップ一杯のミルクを置いておく風習があります。

 これは、家を守る妖精さんたちにお礼として置かれているもので、このミルクが減っていたり発酵してヨーグルトになっていたりすると、「妖精が食べた」と思われていたようです。

 もちろん、近所の猫が飲んだのかもしれないし、ヨーグルトになるのはミルクに含まれている乳酸菌の力で発酵しているだけなんですけども、それを「妖精が飲んだ」と解釈する生活にはロマンがあります。

 この小さなお話集は、身近な生活にあるちょっとした不思議は、実はこういうかわいらしい動物の仕業かもしれない、と思わせながら、それがほんとうに妖精のしわざのような夢あふれるお話として描かれています。

 妖精なんて突拍子も無さ過ぎて信じられない、いるわけがない、と思うんなら、こんなふうに動物たちが楽しく暮らしていて、それが妖精のしわざのように信じられていることにしたらいいじゃないか、ってことなんだと思います。

 日本はアニミズムの国なので、日本人は妖精など大自然の精霊のようなものをすんなり受け入れられます。
 日本には古来から、太陽の神様も月の神様もいるし、風や海、山や岩、木や花など、それぞれに神様がいるので、「そういうものがある」と肌で感じられるのが、日本人のよいところ。

 日本人が妖精や精霊が登場するファンタジーに魅力を感じたり、アイルランドの作家ラフカディオ・ハーンが日本の妖怪に魅力を感じたりするのは、どこか通じるものがあるのかもしれません。

 それとは別に、キリスト教の考えのなかでは妖精は「異端」のものですから、妖精の存在を受け付けない人もいます。そう言う人でも納得できるのが「妖精と間違えられた動物たち」のファンタジーなのでしょう。

 また、動物ファンタジーには、「種族の違う人々が手を取り合う」ことの比喩として使われることあり、ドリトル先生の家でいろんな動物たちが同居していたり、このおはなし集のめんどりと黒うさぎと野ねずみの共同生活のように、個性ばらばらの生き物がお互いの欠点を補い合い、助け合って暮らしているお話も定番として数多くあります。

 母性愛あふれるめんどりと、やんちゃな黒うさぎ、かわいい野ねずみたちの暮らしは、ほのぼのとしていてとっても楽しそう。
 妖精たちだと思い込んでいる人間の女の子スーとの心の交流も、ほんのりあたたかい気持ちになります。

 字は大きく文章は読みやすく、漢字にはすべてふりがながふってあります。
 読み聞かせなら4歳から。ひとりで読むなら小学校低学年から。
 絵本を卒業して、そろそろ長い物語に挑戦しようと言う、読み始めの物語として最適です。

 装丁がレトロでかわいらしいので、インテリアとしてリビングに飾ってもおしゃれです。落ち着いた時間のあるときに、ぜひ親子で楽しんでみてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はいっさいありません。HSCのお子様はもちろんのこと、大人が読んでも癒される本です。
絵本を卒業したばかりのお子様の読み始めの本として、また、読み聞かせの本として、そして、大人が週末にくつろいで読む癒しの本としてもおすすめです。
 クリスマスのシーンがあるので、動物好きのお子様や、お友達へのクリスマスプレゼントにも。

 読後はあたたかい紅茶と木の実たっぷりの素朴なケーキなどはいかがでしょう。愛らしい動物たちに癒されてくださいね。

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