【ローワンと魔法の地図】内気なローワンが村を救うために旅に出る。ファンタジーの名作【リンの谷のローワンシリーズ】【小学校中学年以上】

2024年2月27日

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ローワンと魔法の地図 エミリー・ロッダ/作 さくま ゆみこ/訳 佐竹美保/絵  あすなろ書房

ローワンは、勇気ある英雄の息子でしたが、内気で臆病な少年でした。しかし、故郷リンの村に流れてくる川の水が途絶えたとき、その謎を解くために旅に出なければならなくなったのです……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 成長物語☆☆☆☆☆ 勇気とは☆☆☆☆☆

ローワンと魔法の地図 エミリー・ロッダ/作 さくま ゆみこ/訳 佐竹美保/絵  あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日 – 。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

 かなり有名なファンタジーですが、未読でした。ようやく読みました。
 児童文学の王道パターンとして、内向的で引っ込み思案な主人公が、様々な経験を経て、勇気ある人間に成長してゆく物語があります。「ハリー・ポッター」「ルイスの不思議の時計」などがそうです。

 この「ローワンと魔法の地図」の主人公ローワンも、大人しく内向的で、危険な事は大嫌いな性格です。しかし、彼の暮らすリンの村に流れ込んでくる川の水が途絶えたことで、いままでの生活を続けてゆくことができなくなりました。

 リンの村が生活を依存している家畜バクシャーは川の水しか飲めなかったからです。このままではバクシャーは全滅してしまいます。

 リンの村の人たちは、村人から勇気ある男女を6人選抜し、川の水源を調査することにしました。山は険しく、頂上には竜が棲むと言われています。しかし、名乗り出た男女はそれぞれ、自分たちこそがこの危機を解決できると言う自信に満ちていました。

 旅立つ前に、物知りの魔女シバに山についての助言をもとめに行った隊長のストロング・ジョンは、ろくな助言をもらえなかったばかりか、同行したローワンには枝を投げつけられます。

 落胆して戻った二人ですが、投げつけられた枝は巻物で、そこには山の地図が書かれていることがわかりました。
 しかも、その地図には魔法がかかっていて、ローワンが巻物を広げていないと読めないのです!

 魔女の皮肉な計らいで、七番目のメンバーとして旅に同行することになったローワン。
 はたして、ローワンたちは、水源にたどり着き、川を復活させることができるのでしょうか……

 というのがあらすじ。

 ローワンは、あまりにも勇気がないため、強くたくましく勇気があるリンの村人たちの中では、ちょっと浮いた存在でした。
 しかし、大人しい家畜バクシャーの世話をよくする、愛情深い子どもだったのです。

 そして、魔女シバが予言したとおり、内気で臆病に見えたローワンの中に強い心がひそんでおり、強くて勇気があるように見えていたほかの六人には弱い心がひそんでいたことがだんだんわかってきます。

 このお話が他の、少年の成長物語とちがうのは、「強さ」の解釈がひとつではないことでしょう。
 リンの村人たちの価値観では、ローワンはいちばん弱い、情けない子どもでした。

 しかし、魔女のシバから見たローワンはちがったのです。

 旅の途中で、それがだんだんとあきらかになってゆきます。
 勇気とはなんなのだろうか、と考えさせる物語です。

 ローワンは、徹頭徹尾、何かと戦おうとはしません。けれど、救おうとします。彼を突き動かすのは、つねに優しさや愛情といった、「自分の外側の何か」へのあたたかい気持ちなのです。

 子ども向けファンタジーのよくある設定なのですが、人間の願いをなんでもかなえることができる妖精は自分自身の願いは叶えられないものです。そんなときの人間の正解は、「妖精の願いをかなえてあげる」だったりするのですが、人間たちは、わりと気がつかない。
 けれど、たいせつなのは、自分の願いをかなえるために、まず自分の欲しいものを他人にあげることなのです。

 赤毛のアンの続編「アンの青春」のなかにも、「人生は広くもなれば狭くもなる。それは、人生から何を得るかではなく、人生に何をそそぎ込むかにかかっているの。」というアラン夫人の言葉がありますが、「自分のほしいものを同じように苦しんでいる他人にあげると願いはかなう」、というテーマは児童文学の中に繰り返し見かけます。

 もちろん人生の真理は一つではないかもしれないし、それが唯一つの正解、と言うわけではないかもしれません。自分が飢え死にしそうなときに、最後のパンを他人にあげると自分は死にます。そこまでするのが正解かというと、さすがにそれは意見が分かれるところでしょう。

 けれども、弱くて臆病で、引っ込み思案なローワンの、たったひとつの美徳は、それ━━「与える気持ち」だったのではないかと思います。他の勇者たちが「何かを得よう」としていたなか、ローワンだけが、自分の持っているものをすべて出し尽くそうとしたのです。

 冒険物語もいろんなパターンがありますが、ほぼ出尽くした感があったので、この逆転展開は素直に面白いと感じました。
 そして、強さとか勇気とか、そういったものには、実は多面性があると気づかされたのです。

 内向的で引っ込み思案なお子様と、そのお父さんお母さんにおすすめのファンタジーです。自力で読むなら小学校中学年からですが、読み聞かせならもっと小さい年齢からで大丈夫。

 外で遊ぶのも、反射神経を使うゲームで遊ぶのも苦手、と言うお子様にはぜひ。
 元気をくれる物語です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。むしろ、HSPやHSCにおすすめの、冒険ファンタジーです。内向的なお子様のほうがより多くを読み取ることができ、主人公と一緒に旅をした気持ちになれるでしょう。
 大人にもおすすめの本格ファンタジーです。

 お風呂上りや、週末にゆっくり時間をとってお楽しみください。

 

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