【シンドバッドの冒険】「ルドルフとイッパイアッテナ」の作者が描く、アラビアンナイト。シンドバッドの7つの航海【アラビアン・ナイトシリーズ】【小学校中学年以上】

2024年2月27日

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シンドバッドの冒険 斉藤洋/作 一徳/画  偕成社

アラビアの商人シンドバッドは大金持ちの息子でしたが、父の遺産はすぐ使い果たしてしまいました。そこで彼は最後の財産で冒険の航海に出ることを決意します。「ルドルフとイッパイアッテナ」の斉藤洋が描く、新感覚アラビアンナイト四部作。シンドバッドの七回の航海のはじまりはじまり。

この本のイメージ 荒唐無稽☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆ 商人はしぶとい☆☆☆☆☆

シンドバッドの冒険 アラビアン・ナイト 斉藤洋/作 一徳/画  偕成社

<斉藤洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

 「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」の斉藤洋先生がリメイクしたアラビアンナイトシリーズ四部作の第1巻、「シンドバッドの冒険」です。

 「シンドバッドの冒険」は、アラビアンナイトシリーズの中でもいちばん冒険色が強く、さわやかなお話です。子どもの頃に読んだときは、世の中のことをよく知らないので、物語に登場する生物や場所のなかには実在するようなものもあるのだろうかと思っていました。

 ダイヤモンドの谷に羊肉を投げ落とすお話とか、川底にルビーやエメラルドが沈んでいるお話とか、小さい頃は信じちゃっていましたけれど、今はおとぎ話特有の荒唐無稽なエピソードだと言うのはわかります。

 信じちゃっていた時代があったのは、やっぱり物語そのものに力があったからなんでしょうね。子どもを夢中にさせるものがあるんだと思います。わたしは、アラビアンナイトシリーズの中で、シンドバッドがいちばん好きでした。

 シンドバッドが何度航海に出ても、戻ってくるときはお金持ちになってゆくので後味が悪い部分が少なく、また、あんまり悪い人や意地悪な人が出てこないのも魅力です。善意で助けてくれる人が多いのです。シンドバッド自身も、義理堅くて誠実な性格です。

 児童文学に置いては、この善人と悪人の配分がとても大切だと思います。

 まったく悪人の出てこない世界観の話も個人的には大好きなのですが(案外書くのは難しい)、物語を盛り上げるために悪人が出てくるお話も、それはそれで引き締まります。ただ、あまりにも悪人が多すぎたり、残酷すぎたりすると、世界観が殺伐としてしまいます。

 斎藤先生のお話は、悪い人も出てくるのですが、このさじ加減が絶妙なのです。
 「ルドルフとイッパイアッテナ」のデビルはひどい奴ですが、ちゃんとルドルフたちが固い友情で撃退できていますし、「白狐魔記」では哀しい事件も起きますが、毎回、子どもが受け入れられるぎりぎりのラインを見極めてうまく完結させています。(デビルのこと、書いてるとき猫だと記憶違いしていました…(恥)訂正)

 この「シンドバッドの冒険」も、ドロドロした部分はなくて、怖い描写がもあってさらっと読めます。よくよく読むと食人族や海じじい(アラビア版子泣きじじい)の話など、けっこう残酷な話はあるのですが、怖い部分をあまり克明に描かずうまく流しているので、物語のなかで自然に読みすすめることができるのです。

 島のように大きな魚や、巨大な鳥、ダイヤモンドの谷など、わくわくする展開が次から次へとやってくるので、「次は何かな、次は何かな」と読んでいるうちに、あっと言う間に読み終えてしまいます。

 7つの航海のエピソードに分かれているので、親子で1日1章ずつ、読み聞かせをしても楽しいでしょう。

 シンドバッドは船に乗って冒険する人なんですが、この物語は海洋冒険小説のジャンルではなく、ファンタジーです。船には乗るんですが航海している部分の描写はほとんどなく、怪物退治などの奇想天外なエピソードがメインです。
どちらかというと「オズの魔法使い」「不思議の国のアリス」のような、突拍子もなさが魅力。

 子どもの想像の翼を思い切り羽ばたかせてくれる冒険ファンタジーなのです。しかも、ちゃんと宝を手に入れて、お金持ちになって帰ってくるので、宝探しものの魅力もあります。

 冒険もののお話はそれだけでも心躍るものですが、宝探しの冒険話でほんとうに宝が手に入る話はやっぱり格別。

 ポジティブなパワーにあふれている童話です。
 だんだん寒くなってゆくこの季節に、暑い国のファンタジーで熱気を補充してみてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 危険なシーンや暴力シーンもあるにはあるのですが、気をつけて書かれているので残酷さはありません。シンドバッドが航海から戻ってくるたびにどんどんお金持ちになってゆくのがすがすがしい。

 少年漫画やRPGゲームが好きなお子さまに毎日1章ずつ、読み聞かせしてあげても楽しそうです。シンプルでさわやかな冒険物語です。

 読後はデーツ(なつめやし)などのドライフルーツやナッツをおやつに、ミントティーでティータイムはいかがでしょう。金属の取っ手のついたガラスの器で飲むと、ちょっぴりアラビア気分にひたれます。

 

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