【やかまし村の春・夏・秋・冬】小さな農村の素朴な毎日。リンドグレーンの名作【小学校中学年以上】
やかまし村には中屋敷、南屋敷、北屋敷があり、リーサ、ラッセ、ボッセ、ブリッタ、アンナ、オッレの六人の子供がいます。小さな村の子どもたちは六人だけですが、大人たちと毎日楽しく暮らしているのです。
この本のイメージ 素朴☆☆☆☆☆ 子供心☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆
やかまし村の春・夏・秋・冬 アストリッド・リンドグレーン/作 大塚勇三/訳 岩波少年文庫
<アストリッド・リンドグレーン> スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」など。
リンドグレーンの「やかまし村」シリーズです。
スウェーデンの小さな村、「やかまし村」には子どもは六人しかいません。中屋敷に住む主人公のリーサと、その兄のラッセとボッセ、南屋敷のブリッタとアンナ、北屋敷のオッレです。この本では、オッレにはシャスティンという妹が出来ます。
やかまし村の一年を描いた物語で、季節はクリスマスの時期からはじまるので、この季節に読むのがぴったり。
おだやかで、ほほえましい子どもたちの日常が描かれています。
「やかまし村」ではサンタクロースがくるのではなく「クリスマスの小人」がプレゼントを持ってくるのだそうです。「小さいイエス様」が贈り物を持ってくる、と言われている国もあるらしいので、それに似ている気がしますね。
楽しいクリスマスをすごし、おおみそかから新年と、とくに大きな事件もなく、「子どもってこうだよね」と言うエピソードの連続が続きます。けれど、これがなんとも言えず楽しくてなごむのです。
好きなエピソードは、天気が悪くて外で遊べなくて、なんとなく退屈な日、お母さんに「わたしだったら、カステラを焼くわ」と言われて、リーサがお母さんに教えられながらカステラを焼くお話。
これが意外にも上手に出来て、楽しくなってしまうのです。
子どもたちの秘密の通信で、他の子たちをお茶にさそうと、ブリッタとアンナもお菓子をつくることにし、みんなで天気のよくない日も楽しくすごしたというもの。
これって、今、わたしたちがしていることと似ています。
また、学校の先生に「いいことをしなさい」と言われて、ことさらいいことをしようとしたら失敗してしまい、自然に何かをしてあげたいと思ったらうまく行く話も好き。
実際「他人にいいことをしてきてください」っていう学校の宿題は、わりと難しいと思います。
困っている人に親切にしましょう、みたいなことを先生は求めているのですが、それはそれ以前に誰かが困っていなければなりません。けれど、この村、ほんとうに平和なんです。
自分がいいことをするために、他人が困っていることを無理やり探すとやっぱりおかしなことになってしまいます。
でも、そこでがんばっちゃうリーサたちも、子どもらしくてほほえましい。
どの話も素朴な、子どもたちならではの日常なのですが、おとぎ話のようにキラキラして感じられるのは、自分が大人になってしまったからかもしれません。
短いお話のオムニバスなので、本を読みなれないお子様が一章ずつこつこつと読むのもいいですし、読み聞かせにもおすすめです。文章が、リーサの一人称なので、読書習慣がない小さな子には読みやすいでしょう。読み聞かせもいいですが、逆にお子さまに読み聞かせしてもらっても、楽しそうです。
やかまし村の子どもたちの遊びは、現代ではできないこともあるけど、カステラを作ったり、持ち物にペンキをぬったり、宝さがしごっこをしたりと、現代生活でできそうなものも、たくさんあります。
雪深い村で、楽しくすごすリーサたちの生活を感じながら読書を楽しむのもよし、リーサたちのように自宅生活を満喫するのもよし、どちらも家で過ごす時間を豊かにしてくれそうです。
クリスマスからはじまる物語なので、クリスマスプレゼントにも。
そして、もちろん、大人が自分への和み時間をプレゼントするのにも、この本はおすすめです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はいっさいありません。ほのぼのとして楽しい、子どもたちの日常物語です。小さな女の子の一人称なので、大人が読むと一気に子ども時代にタイムスリップできます。
読み聞かせにも最適。
ジンジャークッキーを焼くお話と、カステラを焼くお話がとてもおいしそうなので、読後はぜひ、ジンジャークッキーかカステラでティータイムを。
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