【ライオンと魔女】クローゼットの扉を開けてナルニアへ!色あせないファンタジーの名作の開幕【ナルニア国ものがたり】【小学校中学年以上】

2024年2月28日

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ライオンと魔女  ナルニア国ものがたり 1   C・S・ルイス/作 瀬田貞二/訳 岩波少年文庫

ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィのきょうだいは田舎の学者先生の家に疎開していました。ルーシィはかくれんぼの途中で、ワードローブの扉から見たこともない不思議な世界へ入ってしまいます。そこは、一面の雪の世界でした……

この本のイメージ わくわく☆☆☆☆☆ 不思議☆☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆☆

ライオンと魔女  ナルニア国ものがたり 1   C・S・ルイス/作 瀬田貞二/訳 岩波少年文庫

<C・S・ルイス>
本名クライブ・ステープルス・ルイス(Clive Staples Lewis 1898年11月29日 – 1963年11月22日)。アイルランド系のイギリスの学者、小説家、中世文化研究者、キリスト教擁護者、信徒伝道者。全7巻からなるハイファンタジー小説『ナルニア国物語』の著者として有名。

 昨日はC・S・ルイスの誕生日だったんですね。ちょうど「ライオンと魔女」の読み直しを終えたところでした。

 「ナルニア国ものがたり」は、世界3大ファンタジーの一つと呼ばれていた時代がありました。(残りの2つは「ゲド戦記」「指輪物語」) この三つの中では、「ナルニア国ものがたり」がいちばん子どもにとって読みやすいお話だと思います。

 もともと、友人の娘ルーシィ・バーフィールドに捧げられた物語なので子どもに読みやすいように配慮されているからでしょう。「不思議の国のアリス」「クマのプーさん」など、特定の子どものために書かれた物語はたいてい名作です。

 「ナルニア国物語」は、最初「ライオンと魔女」だけで完結するつもりの物語でしたが、読者の要望にこたえて7巻まで刊行されました。ですから、それぞれの巻だけでお話が完結するように書かれています。

 わたしが若い頃は、そもそも「ファンタジー」と言うジャンルの小説がとても少なかったので、主人公が異世界に迷い込むお話や、不思議な生物と旅をしたり、魔法を使ったりするお話は、「浦島太郎」や「不思議の国のアリス」、「桃太郎」や「シンデレラ」など、せいぜい昔話や神話を楽しむ程度でした。

 今は、良質のファンタジーがたくさん読めて、ほんとうにいい時代だと思います。

 この「ライオンと魔女」は初版が1950年。いまから70年前になります。イギリスで数々の名作児童文学が生まれた時代です。
 なぜかというと、1939年から1945年までの第二次世界大戦によって、世の中が疲れ果てていたからです。

 ファンタジーやSFと言うと、「現実逃避」と言う批判を受けることがよくあります。漫画やアニメーションが好き、ファンタジーやSFが好き、絵本や児童文学が好きと言うと、まあ二言目に言われるのはそれ。
 「現実を直視しようよ」「広い世界を見てみようよ」と言うやつ。

 けれども、そもそもファンタジーが生まれたわけは、現実がひどすぎて生きる希望を持てなくなった人に、「まだまだ世界は美しい」と知らせるためだったのです。

 この「ナルニア国物語」は、作者のC・S・ルイスが熱心なキリスト教徒だったため、聖書が下敷きになっています。聖書がうまく理解できないような小さな子どもにキリスト教の考えを教えようと言う意図もあったようです。

 しかし、押し付けがましい説教臭さはなく、子どもらしい愛情や冒険心にあふれた、生き生きとした物語になっています。実際、キリスト教徒でもなんでもないわたしはそんなことを知る前は、まったく気がつかずに読んでいましたからね。

 ストーリーについては有名だと思うのですが、かいつまんでご紹介すると、

 第二次世界大戦中、戦乱を逃れて田舎に疎開した、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィのペベンシーきょうだいは、ある学者先生の古いお屋敷に下宿していました。

 四人がその大きなお屋敷でかくれんぼをしている途中、ルーシィは作り付けのワードローブの扉から、一面の雪世界へと迷い込んでしまいます。

 そこは、悪い魔女のせいで絶対に春が来ない「ナルニア」という不思議な国でした。
 ルーシィは、そこで親切なフォーン、タムナスにもてなされ、現実の世界へ戻ります。そして、ルーシィの話を聞いて次はエドマンドが迷い込みます。しかし、エドマンドが出会ったのは、人間の子どもの侵入を恐れた悪い魔女でした。
 悪い魔女にだまされて、魔法のお菓子を食べてしまったエドマンドは悪い心を抱いてしまいます。

 最終的にきょうだいは全員でナルニアに迷い込みます。
 そこにあられる、不思議なライオン、アスラン。

 さて、雪に閉ざされたナルニアは、もとの平和なナルニアにもどるのでしょうか。

 と、言うのがあらすじ。

 若い頃、女の子どうしのあいだで一番人気はアスランでした。ピーターじゃなくて。
 ディズニープリンスの中でいちばん人気は野獣だし(マイ図書館をプレゼントって素敵過ぎませんか? どう考えても野獣一択ですよね!)、女の子は動物が好きですよねえ。と言うか、子どもにとっては、人間と動物のあいだの垣根がそんなにないように思います。

 魔女が人間の子どもを恐れるのは、

 アダムの肉、アダムの骨が
 ケア・パラベルの王座について、
 悪い時世が終わるもの  (引用 115p)

 と言う予言があったからでした。

 ナルニアでは、人間の男の子を「アダムの息子」人間の女の子を「イブの娘」と呼びます。
 (ちなみに、いにしえの少女漫画に「イブの息子たち」と言うのがありましたが、元ネタはここでしょう。抱腹絶倒のギャグマンガですが。どんなギャグかというと、マリー・アントワネットの頭に宇宙戦艦ヤマトがついてるみたいな)

 予言を知っているナルニアの住人たちは、ペベンシーきょうだいを手厚くもてなしてくれます。
 食べ物がおいしそうなファンタジーは名作と言う法則がありますが、ルーシィたちに親切にしてくれる妖精や動物たちのお茶や食事、お菓子がどれもすごくおいしそうなのです。
 親切にしてくれない人のお菓子もおいしそうなんですけれどね。

 エドマンドが夢中になってしまう魔女のお菓子は、日本の翻訳では子どもに理解しやすいよう「プリン」に改変されていますが、原作では「ターキッシュディライト」という、トルコのお菓子だったようです。

 調べてみると、トルコでは「ロクム」と呼ばれ、甘みのあるでんぷん粉を固めたもので、どうやら「わらびもち」や「ゆべし」に似た感じ。
 かといって、「わらびもち」って翻訳されていたら、かなりちがった雰囲気になりましたよね……

 お話は、子供向けの勧善懲悪ではありますが、魔女にそそのかされたエドマンドのいじわるで、ルーシィが嘘つきだと思われてしまうところ、それを学者先生が筋道立てて論破して守ってくれるところ、魔女の秘密警察が人間の子どもに親切にした者を連れ去ってしまうところなど、あの大戦をくぐりぬけた世代が書いたらしい、リアルな描写もあり、童話としての面白さの底に深いメッセージがちりばめられています。

 雪の季節で始まり、サンタクロースがやってくるシーンもあることから、この季節に読むのがぴったり。
 文章は平易で読みやすく、難しい漢字にはふりがながふってあるので、小学校中学年からならだいじょうぶ。かしこい子なら低学年から読み聞かせするのもいいでしょう。クリスマスプレゼントにも、おすすめです。

 クローゼットの扉の向こう、子ども心はずむ大冒険の旅へ、ご一緒しましょう。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 最初に申し上げて起きますと、「ナルニア国ものがたり」シリーズの最終巻「さいごの戦い」は、HSPやHSCにとっては、ちょっとショックな展開が待っています。

 この「ライオンと魔女」だけでしたら、とても明るく、良い話だと思います。シリーズを最後まで読んだとき、ちょっぴり切ない気持ちになるかもしれませんが、「そういう話なのだな」と身構えていたら大丈夫な方ならおすすめです。HSPやHSCのほうが、深く、たくさんのメッセージを受け取れると思います。

 作中に出てくるお菓子がどれもおいしそう。マーマレードがたっぷり入ったパウンドケーキやペストリーが食べたくなるかも。または「本当はこういうお菓子らしいよ」と、わらびもちやゆべしを、熱いミルクティーと一緒に食べるのもいいかもしれません。
 和菓子とミルクティーは、すごくあうのでおすすめです。

 

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