【34丁目の奇跡】1947年の名作映画の小説版。地上のサンタクロースが起こす奇跡の物語【小学校中学年以上】

2024年2月29日

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34丁目の奇跡 ヴァレンタイン・デイヴィス/作 片岡しのぶ/訳 あすなろ書房

クリス・クリングルは老人ホームで暮らすおじいさん。でも、彼は自分のことをサンタクロースだと言うのです。誰も本気にしないけれど、クリスはそんなことはおかまいなし。そして、彼の周囲にはどんどん奇跡が広がって……

この本のイメージ クリスマス☆☆☆☆☆ 現実VS夢☆☆☆☆☆ 奇跡☆☆☆☆☆

34丁目の奇跡 ヴァレンタイン・デイヴィス/作 片岡しのぶ/訳 あすなろ書房

<ヴァレンタイン・デイヴィス>
アメリカの劇作家。ミシガン大学卒業後、イエール大学大学院で演劇を学ぶ。小説には「春の珍事」映画脚本には「三十四丁目の奇跡」「グレン・ミラー物語」など。

 1947年のモノクロアメリカ映画、「三十四丁目の奇跡」の脚本を書いたヴァレンタイン・デイヴィス自身が書き下ろしたノベライズ小説です。ストーリーは映画とほぼ同じですが、キャラクターの心情をもっと突っ込んだ形で書いてあり、読んだ後だとより映画を楽しむことができます。

 映画は、その後、1994年にリメイクされています。実はリメイク版はちゃんと見ていないのです。ネットで予告編とあらすじだけは見ました。映像が美しく、子役が無敵のかわいらしさです。でも筋立ては最初のものが驚くほど完成されているのでアレンジって難しいんだろうなと感じました。

 昔の映画女優さんって、なんであんなに美しいのでしょうね。背筋とかもすっとしてて、同じ人類とは思えないほどです。

 この映画、アメリカのクリスマスシーズンには必ず放送される人気映画らしく、もう何十回何百回と繰り返し放映されるくらいの国民的映画だそうです。日本の「クリスマスソングと言えばあれ」、みたいな感じなのでしょうか。

 「つらい時代にこれを見て元気を出してもらいたい」と言う、切なる願いに満ちた映画です。小説のほうも映画のキモを大切にしつつ、説明不足だった部分を膨らませており、すべてのキャラクターの背景がよくわかる作りになっています。

 あらすじは、

 メイプル・ウッド老人ホームに暮らすクリス・クリングル(サンタクロースの別名)は、自分のことをサンタクロースだと主張する老人でした。

 老人ホームの主治医のピアスは、クリスのことを「わたしがサンタクロースだ」と信じていること以外はいたって正常、すばらしい人格者だと太鼓判を押しています。けれど、「わたしは本物のサンタクロースだなどと主張し続けると、いつかは精神病院に入れられてしまうかもしれないよ」と忠告すると、クリスは憤慨して老人ホームを出て行ってしまいます。

 老人ホームを飛び出して職と住居を探していたクリスは、偶然、大手デパート「メイシー」が主催するクリスマスパレードのサンタクロース役の老人が昼間から酒を飲んで酩酊している場面に出会います。格調高いデパート「メイシー」のサンタクロースが酔っ払いなんて、許されない。

 パレード担当者のドリス・ウォーカーは、突然の大ピンチに、偶然知り合ったばかりのクリスにサンタクロースの代役を頼みます。それがきっかけで、クリスは「メイシーのサンタクロース」として働くようになりました。

 ヒロインのドリスは離婚して娘のスーザンをひとりで育てているキャリアウーマン。けれど、過去に傷ついた経験から、娘にはおとぎ話を「嘘」だと教える、夢を持たないリアリストになっていました。そんなドリスを心配する、お向かいの家の若手弁護士フレッド・ゲーリー。

 クリスはスーザンやドリスを心配して、ふたりを見守るために、お向かいのフレッドと暮らすことにします。

 さて、「メイシー」はクリスマス商戦の真っ只中。職場でクリスは上司から「子どものほしがるおもちゃが売り場にないときは、このおもちゃをすすめろ」と売れ残り商品リストを渡されます。「売り場のサンタクロース」は、お客さんをだまして、ほしくもない商品を買わせる仕事だと気づいたクリスは「そんなのはサンタクロースじゃない」と憤慨します。

 クリスはデパートのクリスマス商戦の指示にはまったく従わず、あくまで「サンタクロース」としてお客と子どもたちの味方になって働くのでした……

ここからネタバレ 平気な方だけクリック

 つまり、子どもがほしがるおもちゃがメイシーになければ、それを置いてあるほかの店を教えてしまうのです。

 上司は大激怒しますが、これがかえって大好評。「メイシーは良心的でいいデパートだ」「本物のサンタクロースがいるデパート」とお得意客が増える結果となりました。

 ところが、クリスのことを気に入らない人間が1人いました。それは、メイシーの主治医のソーヤー。彼は、クリスを陥れ、精神病院に入院させようと画策します。

 罠にはまったクリスは、簡単には脱出できなくなってしまいます。クリスを助けるために、立ち上がる弁護士のフレッド。でもそれは、かなり難しいミッション。

 「サンタクロースは実在する。そして、それはクリス・クリングルである」と、法廷で証明しないとならないのです。

 はたして、クリスはこの危機から脱出できるのでしょうか。そして、ほんとうにクリスはサンタクロースなのでしょうか。

 ……と、いうお話。

 もとの映画も小説も、緻密に計算されており、最後にすべての伏線が綺麗に回収されてゆくので気持ちいい。とくに法廷のシーンは爽快です。

 メイシーズはニューヨークに実在するデパートで、メイシーとギンベルは日本で言えば、新宿の三越と伊勢丹みたいな犬猿の仲、ライバル関係のようです。確かに、三越に行って店員に「伊勢丹で買うといいですよ」と教えられたら、かなりびびりますね。

 クリスはほんとうにサンタクロースだったのか、それともサンタクロースだと思い込んでいるただのおじいさんだったのか、それは、どうぞお読みになって確かめてみてください。読んだ人それぞれに、それぞれの答えがあると思います。

 もちろん、読後は映画も楽しんでみてくださいね。

 「これぞクリスマス」と言うお話なので、クリスマスプレゼントにもぴったり。映画を見てから読むもよし、読んでから映画を見るのもよしです。

 映画は、「アマゾンプライム」で見ることが出来ますよ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。天使や精霊などファンタジックな存在は登場しませんし、クリスは魔法を使うわけではありませんが、奇跡を起こし続けます。

 「おお、奇跡ってこういうものなのか!」と目を開かされるハートフルストーリーです。
 小学校中学年以上から読めると思いますが、大人も楽しめる小説です。後半の法廷のシーンは、日本の小説にはあまり無いので、なじみがないかもしれませんが、論破論破の連続なので、お子様には痛快だと思います。

 あたたかいお部屋で、熱々のココアやコーヒーをお供にぜひ、どうぞ。

 

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