【ランサム・サーガ】新しい友達との出会い。雪に閉ざされた長い冬休み【長い冬休み】【小学校高学年以上】

2024年2月29日

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長い冬休み 上下  ランサム・サーガ 4   アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳  岩波少年文庫

ドロシアとディックは、ディクソン農場に冬休みの間滞在している都会のきょうだいでした。ふたりの休暇は、冬の農場でのふつうの冬休みになるはずが、ある日、遠く離れた農場の窓と、カンテラの光で会話したことで、ウォーカーきょうだいとブラケット姉妹に出会います。そして、素敵な冬休みの始まり始まり。

この本のイメージ 冬の湖水地方☆☆☆☆☆ 新しい出会い☆☆☆☆☆ リーダー不在☆☆☆☆☆

長い冬休み 上下  ランサム・サーガ 4   アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳  岩波少年文庫

 ランサム・サーガ四作目は、冬の物語です。設定としては二月の話なのですが、「冬休み」がテーマなので、そろそろご紹介。今回は、ドロシアとディックのふたり、Dきょうだいという新しいメンバーが加わります。

 ディックというと、山田ミネコ先生の「最終戦争シリーズ」を思い出します。たぶん、ランサムファンだと推測しているのですが。山田ミネコ作品にはときどきランサムぽい要素を感じるのです。昔、何かで山田ミネコ先生の描いたディック・カラムを見た気がするのですが、誰がご存知ではないでしょうか(古すぎて細かすぎるだろ) まあ、化石な話は置いといて、本題に戻しましょう。

 今回は、冬の休暇のお話。子どもの頃に読んだときには気がつかなかったのですが、今回の主人公はディック・カラム。姉のドロシアとともに、都会からディクソン農場に休暇をすごしに来た、星が大好きな男の子です。姉のドロシアは、ティティに似た空想癖のある女の子で小説家志望。

 ある日、ふたりは湖で楽しげにボートを漕いでいる八人の子どもたちを見かけます。そして、彼らの顔が遠くの農場の窓から見えたので、「火星との通信ごっこ」として、カンテラの光で呼びかけてみることを思いつきました。
 すると、向こうもカンテラの光で返事をしてくれたのです!

 それがきっかけで、6人の子どもたち━ウォーカーきょうだいとブラケット姉妹━とディックとドロシアは仲良くなりました。

 どうやら、ウォーカーきょうだいたちの返信はモールス信号だったらしいのですが、ディックはモールスを知らなかったので、会話が成立せず、業を煮やしてツバメ・アマゾンチームが会いに来たようです。

 冬休みはあと一週間ですが、新しい出会いで楽しい休暇になりそうだと、喜んだのもつかの間、ナンシイがなんとおたふく風邪にかかってしまいます。

 おたふく風邪が指定伝染病だったことから、子どもたちは全員、学校通学を停止処分に。結果的に一ヶ月冬休みがのびることになりました。(ただし、家族と下宿先以外の人たちとの接触は×) 不自由なこと、不便なことをすべて「冒険」に変えてしまうツバメ・アマゾンチームは、ただちに検疫船旗を掲げ、楽しい自粛生活に入りました。ナンシイも自宅でを揚げます。

 隔離されたナンシイとは、会話が許されません。二階の窓の向こうのナンシイと、庭の子どもたちが手旗信号で会話をしたり、文通したりして連絡を取り合います。

 そして、今回の主人公ディックは、他の子どもたちに手旗信号やモールス信号、縄のもやいかた、薪の火のつけ方などを教わりながら、みんなの冒険ごっこになじんでゆくのです。

 みんなは、湖が全部凍結したら、その最北端を「北極」に見立てて、北極探検をしようと決めていました。ところが、ちょっとした手違いから、とんでもないことがおきてしまい…… 

 と、いうのが今回のあらすじ。

 今回の主人公はディック。彼の成長物語です。
 ディックとドロシアは、まさに都会っ子というきょうだいなのですが、ツバメ・アマゾンチームと出会うことで、彼らの「冒険ごっこ」の楽しさにどんどん巻き込まれてゆきます。崖の上の羊を助けたり、帆をつけたそりで爆走したりと、ディクソン農場に来たばかりの時には想像もつかなかったことをやってのけるようになりました。

 子どもたちの出会いのシーンがとてもよくて、ナンシイの「あなたたちって何者なの?」「わたしたちは探検家と船乗りよ」と言う問いに、ディックとドロシアは「天文学者」「物語を書く(小説家)」と答えるのです。
 もちろん、この答えは子どもたちに大好評で、あっという間に仲間になったわけです。

 今回の物語では、ナンシイは途中でおたふく風邪になって前線を離脱してしまいます。
 でも、子どもたちの中では彼女はやっぱりリーダーなので、ペギイが代理をがんばりつつ(けなげにもナンシイの口癖を真似たりもする)手旗信号や手紙で連絡を取りナンシイならではの様々な冒険アイディアをもらって、楽しく休暇を過ごすのです。

 あいかわらず、日常を非日常にしてしまう、子どもたちの想像力がすばらしい。どんなときも、空想力と創意工夫で楽しく過ごしてしまう、ツバメ・アマゾンチームには、いつもすがすがしい気持ちにさせられます。

 くしくも自粛の冬休みですが、ディックたちと一緒に心は湖水地方で楽しくすごしましょう。
 いつだって、心は冒険できるのです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド

 ネガティブな要素はほとんどありません。明るくさわやかな少年少女小説です。真冬の湖水地方で、子どもたちが楽しく過ごすだけなのに、とにかく、わくわくして盛り上がります。大人たちも、素敵な人たちばかり。
 お茶のシーンがどれもおいしそうなので、ぜひ、熱々の紅茶とジンジャークッキー、パウンドケーキなどをご用意くださいね。

 

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