【としょかんライオン】もし、図書館にライオンがやってきたら? 心があったかくなる、図書館ファンタジー【4歳 5歳 6歳 7歳 8歳】

2024年3月5日

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としょかんライオン ミシェル・ヌードセン/作 ケビン・ホークス/絵 福本友美子/訳

ある日、図書館にライオンがやってきました。図書館員のマクビーさんはびっくりして図書館長のメリウェザーさんに報告します。メリウェザーさんは聞きました。「それで、そのライオンはきまりをまもらないんですか?」

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 垣根を越えた友情☆☆☆☆☆ 図書館愛☆☆☆☆☆

としょかんライオン ミシェル・ヌードセン/作 ケビン・ホークス/絵 福本友美子/訳 岩崎書店

<ミシェル・ヌードセン>
アメリカ、ニューヨーク在住の作家、編集者。作品は幼児向けの絵本が多い。図書館に勤めた経験もある。

<ケビン・ホークス>
アメリカ、メイン州在住のイラストレーター。自作の絵本のほか、数多くの絵本の絵を描く。「大森林の少年」、「ウエズレーの国」など。

<福本友美子>
児童書の研究、評論、翻訳、書誌作成などをする。立教大学講師。図書館に勤めた経験がある。(以上本書より)

 2006年初版、日本では2007年初版のロングセラー絵本です。
 図書館好き、読書好きの人の間では、ご紹介するまでないくらいの有名な絵本なのですが、今回しみじみ感動して、あえて記事にしてみました。

 図書館にライオンが来る話です! もうそれだけで、ウキウキしてしまう人もいるのではないでしょうか。

 お話は、ある日図書館にライオンがやってくるところから始まります。
 ライオンが貸し出しカウンターの横からずんずん奥へ入ってきます。
 図書館員のマクビーさんは、あわてて図書館長のメリウェザーさんに知らせに行きました。

 「で、そのライオンは としょかんのきまりを まもらないんですか?」

 メリウェザー女史はきまりには厳しい人ですが、ライオンがきまりをやぶったわけではないなら、そのままにしておきなさい、と言います。

 ライオンは子供たちに愛され、やがて図書館のお手伝いをするようになりました。
 しかし、ある日、メリウェザー館長が高い棚の本を取ろうとして転げ落ち、倒れてしまったとき、ライオンは助けを呼ぼうとして大声で吼えてしまいます。

 メリウェザー館長は助かりましたが、「図書館で大声を出してはいけない」と言うきまりを破ってしまったライオンは、みずから図書館を出て行ってしまいました。

 ライオンがいなくなって、寂しくなる子供たちと館長。マクビーさんはライオンを探しに町へ出ます。そして……

 と言う、お話。

 ラストは心温まるハッピーエンドです。

 このお話のテーマはふたつ。
 ・ルールは守らなきゃいけないが、やぶってもいい時がある(人の命を助けるためや緊急時など)
 ・同じものを大切にする心があるなら、垣根を越えて手を取り合おう

 図書館にライオンがずんずん入ってくる衝撃的なシーンから始まるので、「いったい何がおきたの?」と言う驚きが先に来ます。

 けれど、読みすすめてゆくと、ファンタジー仕立てのつくりでありながら、このライオンは何かの比喩であることがわかってくるのです。

 見た目や先入観でうまくコミュニケーションできないけれど、努力すればわかりあえる存在━それが、このライオンがあらわしている「何か」なのです。

 メリウェザー館長は、ルールに厳しい人です。
 「廊下を走ってはいけない」「大声を出してはいけない」など、図書館のルールは厳しく守らせます。しかし、ルールを守ってさえいれば誰であろうと━たとえライオンであろうと━図書館を利用していいと考える、おおらかさがあります。これが彼女の魅力です。

 ただルールで人を縛るのではなく、「きまりを守っていれば、分け隔てはしません」と言う主義なんですね。そして、自分自身もきちんとルールを守る。

 冒頭のたった4ページで、メリウェザー館長が厳しさと愛情深さをあわせもつ魅力的な女性だとわからせるのは見事です。

 メリウェザー館長と仲良くするライオンに焼きもちを焼いてしまうマクビーさんもかわいくて、彼はライオン相手に人間相手のように焼きもちを焼いてしまう。つまり、ライオンを対等の存在として見ているわけです。

 この絵本は、表テーマの「ルールは守らなきゃいけないが、やぶってもいい時がある」と裏テーマの「同じものを大切にする心があるなら、垣根を越えて手を取り合おう」が見事に絡み合って、ほのぼのとした優しいハッピーエンドへと流れ込んでいます。

 ルールを守るからこそ恐れや偏見を越えて未知の存在と仲良くすることが出来るし、未知の存在を受け入れる柔軟性があるからこそ不測の事態にルールをやぶることもある。

 とはいえ、こんな小難しいことを考えなくても、ライオンと図書館の子供たちとのほのぼのファンタジーストーリーとしても楽しめますし、メリウェザーさんとライオンの心の交流話としても、そして、マクビーさんとライオンの奇妙な友情話としても楽しめます。

 何度読んでも新たな発見があり、その都度、様々なメッセージを受け取れる名作です。さすがは世界的ロングセラー。

 字は全部ひらがななので、ひらがなが読めるなら、どなたでも読むことが出来ます。
 しかし、図書館と本が大好きな子供向けに作られた絵本なので、文章の平易さのわりにテーマが深く、文章として読めても内容を理解するにはある程度の情緒の成熟が必要かもしれません。
 ちょっぴり大人びたお子さまにおすすめ。

 親子で一緒にいろいろなことを想像しながら読み聞かせするのもいいかもしれません。
 大人のなごみ絵本としてもおすすめで、お風呂上りなどに読むと、おだやかな気持ちになれます。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。むしろ、HSPHSCにおすすめの絵本です。本が好きで、繊細で敏感なお子様のほうが、多くのことを受け取れると思います。ライオンがほとんどデフォルメされてないリアルな絵なのに、表情豊かでとてもかわいいので、大人の和み絵本にも最適です。

 「図書館」と「ライオン」でピンと来た方はぜひ!
 ドラゴンのファンタジック本屋さんの絵本と、あわせてどうぞ。

 

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