【ムーミン】冬に目が覚めたムーミントロールの大冒険。静かな夜に読みたい児童文学の名作【ムーミン谷の冬】【小学校中学年以上】

2024年3月5日

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ムーミン谷の冬   トーベ・ヤンソン/作 山室静/訳 講談社

春まで冬眠しているはずだったのに、どういうわけか冬に目が覚めてしまったムーミン。彼は生まれてはじめてムーミン谷の冬を体験します。冬にしか出会えない様々な生き物たちと交流して、だんだんと春がやってくるのを体験するのです……

この本のイメージ 冬のムーミン谷☆☆☆☆☆ ミイ大活躍☆☆☆☆☆ あとはおなじみはムーミンだけ☆☆☆☆☆

ムーミン谷の冬   トーベ・ヤンソン/作 山室静/訳 講談社

<トーベ・ヤンソン>
(Tove Marika Jansson [tu?ve mari?ka j??ns?n] 女性、1914年8月9日 – 2001年6月27日)は、フィンランドのヘルシンキに生まれたスウェーデン語系フィンランド人の画家、小説家、ファンタジー作家、児童文学作家。代表作は「ムーミンシリーズ」

 トーベ・ヤンソンのムーミンシリーズ。原題は “Trollvinter". 原作の初版は1957年です。

 ファンの多い、冬のお話です。今の季節にぴったりなのでご紹介。

 いつもは、冬の間(11月~4月くらいまで)は、冬眠してしまうムーミン一家。ところが、なぜだかムーミントロールだけが、冬に目を覚ましてしまいます。

 いつものムーミン谷は、一面の銀世界。雪にとざされたムーミン谷を、ムーミンが大冒険します。

 じつは、冬のムーミン谷は、冬にしか訪れない不思議な生き物たちの世界だったのです。ムーミンは、いままで出会ったことがなかった冬の住人たちと交流します。
 ムーミンママが備蓄した食料を食べながら、夏の間は水あび小屋に使われている小屋で過ごしたり、オーロラを見たり、外でたき火をしたりして、ムーミンはたくさんの「はじめて」を体験することができました。

 やがて、あたたかい嵐とともに春がやってきます。
 雪が解け始め、ムーミンママも目を覚ましました。

 いつものムーミンの仲間たちと再会したムーミンは、冬を体験することで、ひとまわり成長していました。

 と、いうのがあらすじ。

 今回のお話には、おなじみのメンバーはほぼ登場しません。スナフキンは南に旅に出ており、置手紙だけで登場します。ムーミンママとスノークのおじょうさんはラストに少し、パパはまったく登場しません。けれども、ミイは、冬でもへいちゃらで大暴れします。

 今回のお話で、ムーミントロールと行動をともにするのは、「おしゃまさん」と訳されることもあるトゥーティッキ。しましまのお洋服を着て、赤い帽子をかぶっています。この赤い帽子はリバーシブルで、裏が青色になっており、彼女は春になると裏返して青い帽子をかぶります。

 トゥーティッキは、冬の間、ムーミンパパの水あび小屋に棲みついていました。ムーミンは、トゥーティッキと一緒に、生まれてはじめての冬を体験します。

 見慣れたムーミン谷のはずなのに、冬は別の世界のよう。知らないことがいっぱいです。そして、冬にだけムーミン谷に訪れる不思議な生き物たちと交流したり、同じように目を覚ましたミイたちと冬だけの遊びをしたり、そして寒さで遭難した人たちを助けたりして、ムーミンははじめての冬を過ごします。

 しっぽが自慢の子りすや、自分のことをオオカミだと信じ込んでいる犬のめそめそ、言葉の通じない不思議な生き物たち……
 そして、いつも楽天的なヘムレンさんも登場します。

 冬の季節だけにあらわれる物静かで控えめな生物たちと、彼らとの交流に慣れてしまったムーミンが、陽気で楽天的なヘムレンさんをわずらわしく思うシーンなどは、思わずクスっとしてしまいます。

 夏の季節なら、ヘムレンさんは、ゆかいで楽しい人として人気者なんでしょう。善い悪いではなく、適材適所。どんな人にもそれぞれのよさがあり、それぞれに合った世界がある、と言うヤンソンの世界が、わたしは大好きです。

 「これで、ぜんぶ経験したんだ。一年を。冬さえも」
 ムーミントロールはつぶやきました。
 「ぼくは、1年を通して生きぬいた、最初のムーミントロールなんだ」(引用p166)

 最初は、未知の世界にわくわくし、そして、なかなかおとずれない太陽にイライラし、不思議な生物におびえたり、ミイたちと楽しく遊んだりしながら、最終的にはムーミンは春の訪れをさみしく思うまでになります。
ひとつの季節をすごしただけなのに、遠い国を旅して帰ってきたような成長をとげるムーミン。

 そして、そのムーミンの冬の間の冒険を、まるっと全肯定して受け止めるムーミンママ。

 

ここからネタバレ 平気な方だけクリック

 「人生って、ほんとにおもしろいものよね。銀のおぼんの使い方はひとつきりだと、みんなが信じてきたのに、ぜんぜんべつの、ずっといい使い方があったのね。それから、みんなに『そんなにたくさんジャムを作って、どうするの?』なんていわれてたけど━━ちゃんと、ぜんぶ食べてもらえたんだわ」(引用P188)

 ママのこの言葉、本当に大好きです。
 ムーミンママの秘蔵のジャムは、冬の寒さで遭難した人たちにムーミンが食べさせてなくなってしまったのでした。おそらくは、ムーミン屋敷の備蓄食料は、春先の食べ物が乏しい季節にムーミン一家が食べるために用意してあったものなんだと思います。
 けれど、ママはそれをムーミンが使い切ってしまったことを喜んでいるのです。その後、「あなたが、お客さんのお世話をちゃんとしてくれたおかげで、わたしはどこへ行っても、はずかしい思いをしないでいられるわ」とまで言います。

 ムーミントロールへの思いやりや愛情はもちろんのこと、「ジャムは食べてもらうためにある」「困っている人を助けるのはよろこばしいこと」、と言うムーミンママのおおらかで愛情深い人生観が表れている言葉です。

 「あなたのおかげで、わたしはどこへ言ってもはずかしい思いをしない」と言うのは、「あなたを誇りに思う」ってことです。お母さんに内緒で大失敗したと思い込んでいた息子にとって、これ以上の言葉はないんじゃないでしょうか。

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 厳しい冬の物語ですが、ラストでの春の訪れでの感動が大きく、すがすがしい気持ちになります。
ムーミンはどれから読んでも話が通じるので、冬の季節に読み始めるなら、この本からはじめてみてもいいでしょう。すっと心に入り込んでくる、そして、力をくれる本です。

 この冬は、あたたかい部屋で読書をするのがぴったり。
あつあつの飲み物を飲みながら、寒い国の物語を読んで、ほっこりしてくださいね。

※ムーミン全集は電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。冬から始まって、最後に春が来るお話なので、読後感もさわやかです。
 ムーミンママのジャムがとてもおいしそうなので、読後はベリーのジャムとパンケーキで、ティータイムはいかがでしょう。ジャムは、クランベリーかリンゴンベリー、ストロベリーがおすすめです。

 

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