【ビッケと木馬の大戦車】戦わない小さなバイキングの冒険第5巻。ブルガリアでの冒険【小さなバイキングビッケ】【小学校中学年以上】

2024年3月5日

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ビッケと木馬の大戦車 ルーネル・ヨンソン/作 エーヴェット・カールソン/絵 石渡利康/訳 評論社

ビッケたちフラーケ一族は友達のブルガリアがブルドゥース人たちに攻め込まれそうなのを知って、救援に行きました。ブルドゥース人たちは、おそろしい野蛮人で、ビッケたちは苦戦します。さて、今回のビッケの策は……

この本のイメージ 今度はブルガリア☆☆☆☆☆ 偵察って大事☆☆☆☆ 考えるって大事☆☆☆☆☆

ビッケと木馬の大戦車 ルーネル・ヨンソン/作 エーヴェット・カールソン/絵 石渡利康/訳 評論社

<ルーネル・ヨンソン>
1916年~2006年。スウェーデンのニーブロに生まれる。スウェーデンのジャーナリストにして児童文学作家。1963年に、『小さなバイキングビッケ』を刊行、1965年ドイツ児童図書賞を受賞。

 「小さなバイキングビッケ」は、世代を超えて愛されている児童文学で、日本ではテレビシリーズアニメーションになったこともありますし、近いところでは昨年、アニメーション映画化されました。
 挿絵のビッケの姿が世界的にも定着しているので、アニメ化されたときの姿はたいてい、それに準拠しています。

 小さなバイキングのシリーズ、第5巻はブルガリア編です。

 フラーケ一族とブルガリア人は、週に一度伝書鳩を送って連絡を取り合う仲でした。ブルガリアが、恐ろしいブルトゥース人たちに襲撃されそうだと知り、ビッケたちフラーケ一族は加勢に来たのです。

 しかし、野蛮なブルドゥース人と首領ブルレットは恐ろしい人たちでした。襲い来る野蛮なブルドゥース人たちを、ビッケたちはうまく撃退できるでしょうか。

 と、いうのが今回のあらすじ。

 今回は篭城戦です。
 とはいえ、ヨーロッパの昔のお城は、お城の中に街があって、かなりいろんなものが備わっています。

 日本のお城は砦のようになっていて城下町はお城の外ですが、ヨーロッパのお城は城下町がまるごと城の中にあるイメージです。お城の中に農場もあるし鍛冶屋もあります。
 城門を閉めてしまったらいくらでも篭城できるので、今回の戦いは、ブルドゥース人たちがいかにブルガリアの城の高い城壁を乗り越えるか、そしてビッケたちがいかにそれを阻止するかの戦いになりました。

 野蛮なブルドゥース人のなかにもアイディアを出す人間がいて、あの手この手でやってきます。
 それに対して、ビッケは、いつものようにうんうん考えて対抗策をひねり出します。

 ビッケの魅力は、困難なときに常にそれを乗り越える打開策を出しますが、けっして相手を陥れて「しめしめ」と楽しんでいるわけではないところ。彼はとにかく怖がりで、戦いの前はいつもぶるぶる震えていますし、基本的に争うことや戦うことは大嫌いです。

 ビッケは危機に瀕したとき、ギリギリのときに、大好きなお父さんや仲間たちを助けようと必死になるためにとんでもないアイディアが出てくるのであって、積極的に他人を攻撃するために知恵を出しているわけじゃないんです。

 この物語では、毎回、そこのところだけは念を押すように丁寧に描いていて、そこが大好きな部分です。

 ビッケの知恵はやさしさから生まれている。そして、本当にたいせつな「強さ」とは、「やさしさから生まれた知恵」なのだ、というのが、シリーズを貫く、変わらぬテーマです。

 この「小さなバイキング」のシリーズは、どの巻から読んでもお話がわかるようになっており、この巻だけ読んでも楽しく読むことが出来ます。物語の中で「トロイア戦争」をモチーフにしたくだりもあり、お子様に歴史に興味をもってもらう横展開も考えられます。

 しかし、「どうしてビッケが頼りにされているか」「なぜ小さな子供が大人と一緒に遠い国に戦いに出ているのか」などの説明は、1巻にあるので、最初から順番に読んだほうがわかりやすいでしょう。

 小さな章に細かく分かれているので、読み聞かせにもぴったり。

 残酷なシーンはなく、悪人はいつもちゃんと改心して善い人になるのも魅力です。誰かが不幸になるお話ではなく、全員が幸せになるハッピーエンドです。

 さらに「ビッケ」のすごいところは、物語が終わったときに、関った人たちが全員賢くなって、より文明的に幸せになっているところです。

 人が争いあうのは知恵や知識が足りなくて不幸だからであり、みんなが賢くなって幸せに生きられるようになれば争いはなくなるはず、と言う作者の信念が貫かれているのです。

 知恵とは争いや不幸をなくすために使うものだということ、そして、正しく頭を使えば、ビッケのように争いや不幸をなくせるはずだと言うこと……単純だけど大切なことだと思います。

 物語の中で「頭がいいキャラ」って、どうしても冷たい印象になりがちですが、ビッケはそれと正反対。臆病で心配性、とても怖がりだけど、仲間想いでやさしい性格です。

 今回も、敵軍にも知恵者がいるので敬意を表して残酷なことはしたくないと言うビッケ。この物語の初版は1974年ですが、こういうところが時代を越えて愛される秘密だと思います。

 今は、あまり動き回ることができない時期ですが、週末にゆっくりと「戦わないバイキング」の物語を楽しんでみてはいかがでしょうか。大人のなごみ本としても、おすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。ビッケたちは味方だけでなく敵も救いますし、悪い人間は改心して善人になり、最終的に幸せになります。悪をコテンパンにやっつけて「ざまあみろ」という話ではなく、危険や困難をアイディアで乗り越える物語です。しかも、とんちが効いていて、どれも楽しい。

 字は程よく大きく、むずかしい字にはふりがながふってあり、文章は平易で読みやすいので、小学校中学年から大丈夫。低学年でも読み聞かせなら、たのしめると思います。大人のリラックスタイムにもおすすめです。
 アニメ世代には懐かしく、また、若い大人には肩の力をぬいて気持ちを楽にしてくれる物語です。
 週末のお風呂上りなどにぜひどうぞ。

 

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