【ドリトル先生】ドリトル先生、ついに月から帰還。動物としゃべれるお医者さんの不思議ファンタジー【ドリトル先生月から帰る】【小学校中学年以上】

2024年3月5日

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ドリトル先生月から帰る   ヒュー・ロフティング/訳 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

ドリトル先生が月に行って一年がたとうとしていました。パドルビーでは、ドリトル先生からの通信を今か今かと待っています。そしてついに月食の日、トミーは月に狼煙が上がっているのを見たのでした。

この本のイメージ  動物園の立て直し☆☆☆☆☆ トミーの成長☆☆☆☆☆ 紳士とは☆☆☆☆☆

ドリトル先生月から帰る  【ドリトル先生シリーズ 9 】  ヒュー・ロフティング/訳 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

<ヒュー・ロフティング> 1886〜1947年。イギリス生まれ。土木技師を経て、1912年アメリカで結婚し、文筆活動に入る。著書にドリトル先生シリーズ。

 ドリトル先生シリーズの第9巻。先生がついに月から帰還します。

 第8巻で、ドリトル先生の弟子トミー・スタビンズは、月の住人オーソ・ブラッジから強制的に地球に戻されてしまいました。トミーは両親に無断で巨大蛾ジャマロ・バンブルリリイに密航して月に来たので、先生はなんとしてでもトミーだけは安全に家に帰さなければならないと思っていたのです。

 つまり、オーソ・ブラッジは、トミーさえいなければ、ドリトル先生は地球になんの未練もなく、ずっと月にいてくれるだろうと考えたのですね。

 そんなわけで、それを充分理解しているトミーは、先生は帰って来ないのではないかとずっと心配していました。実際、ドリトル先生の未知のものに対する知りたい欲求は、常人をはるかに超えていますからねえ。

 しかし、ドリトル先生は帰ってきました。パドルビーのみんなの想像をはるかに超えた形で。

 月世界に半年近くいたトミーは、帰還時に2m70cm以上の大男になっていましたが、ドリトル先生は5m57.5cmになって戻ってきました。
 もちろん、月にゆくときに乗った巨大蛾ジャマロ・バンブルリリイに乗ることはできない大きさになってしまったので、今回は巨大なイナゴに乗って帰ってきたのでした。

 巨大化したトミーは地球で暫く暮らしたらふつうの大きさに戻ったことから、ドリトル先生もがんばれば戻るはずでしたが、いまの状態では家にも入れません。しばらくはサーカス時代のテントを庭に設置して、そこで暮らすことに。

 そして、そこでドリトル先生は、とんでもない同行者を紹介します。それは、月の猫でした!

 いままで、様々な動物たちと共同生活をしてきたドリトル・ファミリーでしたが、猫だけはいませんでした。猫だけは、ほかの動物たちとうまく共存できなかったからです。
 そんなドリトル家に、猫が来たから大騒ぎ。

 しかし、月の猫は平和的で大人しく、「ほかの動物は食べない、ミルクしか飲まない」という誓いを立てて地球に来ており、そして、それを守る穏やかな動物でした。安心したドリトル・ファミリーは、だんだんとこの猫と打ち解けるようになります。

 後半は、ドリトル先生が帰還したことで、動物園を元通りに立て直したり、先生が月での体験を執筆する環境を整えるために四苦八苦する物語です。この物語の中でトミーは大きく成長します。

 今回のテーマは、「自分と相手の損得がぶつかりあったときにどうするか」と言う、かなり高度なもの わたしは、児童文学には、教訓的童話とそうでないのがあると思っています。教訓的な童話と言うのは、「赤ずきんちゃん」とか「花咲爺さん」みたいな、「知らない人を信用して道草をしてはいけない」とか、「強欲になってはいけない」とか、そういうわかりやすいメッセージのある物語です。

 これらのお話の場合、善良な人は金銀財宝などを得て幸せになりますし、悪い人や親の言い付けを守らなかった子供はひどい目に遭います。だから、「ひどい目に遭いたくなければ、善良に生きよう」と言うお話です。

 でも、この形式のお話には限界があって、この教訓の基本にあるのは「損得勘定」なのです。

 教訓的な童話と言うのは、小さな子供の恐怖心や損得勘定にアクセスして、「ひどい目に遭いたくなければいい子でいよう」とか、「得をしたければ善良に生きよう」と言うつくりをしています。もちろん、小さな子供に道徳を教えるためには、これはとても大切なことです。

 しかし、ドリトル先生はそこを一歩先に進んで、「たとえ自分が損をしても、救うべき人がいたら救う」生き方を選択します。それを、精神科医の大平健先生による今回の巻末解説では、「紳士だから」と書いています。

 本物の紳士は「自分が得をするために頑張るのではなくて、困っている人を助けるために、自分が多少損をしてもがんばることができる人」のことなのだ、と言うわけなのです。
 強き者がより弱き者を助けるために多少の損を背負う。古くから西洋では騎士道、日本では武士道と言われているものです。

 すべての人が自分の欲求を全部叶えようと主義主張を押し付けあったら、そこは血で血を洗う修羅の世界になってしまいます。だからと言って、すべての人の自由を全部制限したら、ガチガチの不自由な世界になってしまいます。

 全員が自分の主義主張をおしつけあい、勝手気ままに自由に生きるよりも、それぞれの事情を配慮して、それぞれがほんのすこしだけ相手のために譲り合うほうが、逆説的に全員がのびのびと自由でいられる、それがドリトル先生を通じてロフティングが表現しようとした世界でした。

 子供の頃は、あまり意識せずに読んでいましたが、今読み返すと、ロフティングが小さな子供たちのために作品に込めたメッセージがひしひしと伝わってきます。彼が次の世代たちに残したかった世界は、ドリトル・ファミリーのような世界だったのでしょう。

 ほかのドリトル先生の本は、どの本から読んでもだいたいお話はわかるのですが、この「月シリーズ」は、完全にお話が続いているので、「月からの使い」「月へゆく」「月から帰る」の順番でお読みになることをおすすめします。

 古風な言い回しが大丈夫なら、岩波少年文庫版を。文章が美しく、お子様の語彙力向上になりますし、ドリトル先生の言葉が、よりイギリス紳士らしく感じられます。また、アヒルのダブダブの上品なおばさんぽさや、トミー・スタビンズの利発そうな品のよさも魅力です。

 100年前の紳士が夢見たユートピアの物語です。人類の未来への夢がいっぱい詰まっています。お子様の情操教育にも、大人の和みとしても、おすすめの名作です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はいっさいありません。レトロでほのぼのとしたファンタジーです。まだ人類が月面到達する前の、100年前の人が想像した月世界なので、事実とちがうところが多々ありますが、ファンタジーとして名作です。
 外出できないときは、家で読書をするのがいちばん。
 電子書籍版もありますので、紙の本で場所をとるのが嫌な場合は、電子書籍で。

 読後は熱々の紅茶とビスケットをご用意くださいね。

 

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