【魔女狩り人の復讐】ルイスとジョナサンのイギリスでの大冒険。マナーハウスの怪。【ルイスと不思議の時計 5】【小学校中学年以上】

ルイスとジョナサンは、イギリスの遠縁のマナーハウスに滞在していました。そこは、かつて魔女裁判が行われていた場所で、おそろしい秘密が隠されていたのです……
この本のイメージ ゴシックホラー☆☆☆☆☆ マナーハウス☆☆☆☆☆ ルイスの成長☆☆☆☆
魔女狩り人の復讐 ルイスと不思議の時計 5 ジョン・べレアーズ/作 三辺律子/訳 静山社
<ジョン・べレアーズ>
ジョン・ベレアーズ(John Anthony Bellairs、1938年1月17日 ~1991年3月8日)は、アメリカの小説家。児童向けのファンタジー小説を得意とした。代表作として『霜のなかの顔』、「ルイスと不思議の時計」シリーズ、「ジョニー・ディクソン」シリーズなど。
ルイスと不思議の時計シリーズ第5巻は、ルイスとジョナサンのイギリス旅行中の物語です。
じつはこのシリーズ、作者が「ジョン・べレアーズ」となっていますが、原作者のジョン・べレアーズが三作目を書いた後死去しており、遺稿をもとにしてSF作家、ブラッド・ストリックランドが書き上げたものだそうです。この巻の冒頭部分はべレアーズの原稿があったらしく、続きをストリックランドが仕上げたようなのですが、どこが境目かわからないほど自然です。
もともとの「ルイス」シリーズには、「内向的な男の子の成長」と「女の子の自己実現」があり、この独特の持ち味がどこまで継承されるのかは興味がありました。いまのところ、さほどの違和感なく受け継がれているように思います。
今回は、ルイスとジョナサンのイギリスでの冒険物語です。ふたりは夏休みを利用してヨーロッパ旅行に来ていたのですが、その間の何日かをイギリスの遠縁ペリー・バーナヴェルトのマナーハウスですごすことにしたのです。
そこは、かつて地下室で魔女裁判が行われていた場所でした。しかも、ルイスのご先祖様は魔女狩り人マラキア・プルイットの罠により魔法使いの嫌疑で裁判にかけられ、屋敷を取り上げられて死刑になりそうだったところをすんでのところできり抜けたらしいのです。
その時乗っ取られた屋敷がバーナヴェルト家に戻ってくるまで何十年もかかったという、いわくつきのマナーハウスだったのでした。
ルイスは、謎めいたマナーハウスで探偵ごっこをしている間に、とんでもない悪霊を甦らせてしまいます。怪異に飲み込まれるマナーハウス。そして、友人の危機。はたして、この困難をルイスは乗り越えられるのでしょうか。
と、いうのが今回のあらすじ。
この巻ではじめて「ルイスがシャーロック・ホームズの大ファンで、シャーロックのように観察眼と推理力にすぐれている」という新設定が登場します。ちょっとびっくりしたのですが、この物語の冒頭は原作者のべレアーズ自身が書いた遺稿があったようので、この設定はもとからあったもののようです。
ルイスは、イギリスのバーナヴェルト屋敷で働くグッドリングス夫人の息子、バーティと仲良くなります。バーティは目がほとんど見えないのですが、そのぶん勘が鋭く、目に見えないものの気配を感じ取れます。そして、様々な情報から推理を組み立てることが好きなルイスとバーティは「ホームズとワトソン」ごっこをして遊ぶようになりました。
しかし、この「ごっこ遊び」が彼らを危機に陥れます。
屋敷に隠された宝を探そうと探検を続けるうちに、ルイスは屋敷に封印された「おそろしいもの」を復活させてしまったのでした。
ツィマーマン夫人もいない、ジョナサンにも頼れない状況で、ルイスはこの危機を乗り越えなければなりません。
ここからは、ルイスの底力が試されます。恐怖の連続ですが、ワトソン役のバーティとルイスは、勇気を振り絞っておそろしい悪霊に立ち向かいます。
今回は、ルイスがかなり成長します。また、旅行の間に少し痩せます。ちょっぴり頼もしくなってニュー・ゼベダイに戻って来たルイスたちを待っていたのは、過去での冒険から帰り魔力の復活したツィマーマン夫人と、やはり修羅場を潜り抜けたローズ・リタでした。
この、ひと回りもふた回りも成長したルイス・ファミリーを待ち受けるのはどんな事件なのでしょうか。
次巻を読むのがほんとうに楽しみです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ゴシックホラーなので、ちょっと怖くてどきどきするシーンがあります。けれども、子供向けなので、残虐シーンや流血シーンなどはありません。
しかし、停電したマナーハウスでろうそくの光で行動するなど、いままでの中でいちばん雰囲気たっぷりのお話になっています。
スコーンでお茶をするシーンがとてもおいしそうなので、読後はぜひ、熱々のミルクティーとスコーンでティータイムを。
ラストは、心温まるハッピーエンドです。
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