【ねずみとおうさま】小さな王様のために作られた、かわいいおとぎ話。時を越えて愛される、絵本界の不朽の名作です。【小学校低学年以上】
むかしむかし、すぺいんという国に、ひとりの おうさまが いました。この おうさまは 小さいときには、名まえをぶびとよばれました……。実在した幼い王様のために、養育係の神父が話した愛らしいファンタジー。
この本のイメージ 帝王学☆☆☆☆☆ ねずみかわいい☆☆☆☆☆ 王さまかわいい☆☆☆☆☆
ねずみとおうさま コロマ神父/文 石井桃子/訳 土方重巳/絵 岩波書店
スペイン国王、アルフォンソ13世が幼少の頃、養育係のコロマ神父から、じっさいに語られたおとぎ話が元になった童話だそうです。翻訳は、「クマのプーさん」の翻訳で知られる石井桃子。原題はRatón Pérez (ねずみのペレス) です。
この石井桃子さんという方は、日本児童文学の母みたいな方で、日本にまだ児童文学というジャンルが確立していなかった頃に、海外から良質の子供向け小説を探し出し、自分で翻訳したり、様々な方に翻訳を頼んだりして(「ドリトル先生」の翻訳を井伏鱒二に頼んだのはこの方)児童文学の普及につとめました。
なので、「翻訳」のところにこの方の名前があれば、まずまちがいないと言う感じなのですが、この絵本も名作です。
あらすじは、
スペインに「ブビ」という幼名の小さな王様がいました。(ブビはあかちゃんと言う意味で、幼いころ摂政であり母親のマリア・クリスティーナ王太后からアルフォンソ13世が呼ばれていた愛称です)
ある日、小さな王様の乳歯が抜けました。お母様にそれを見せると、「お手紙を書いて枕の下に置いておけば、ペレスというねずみが取りに来てくれますよ」と言いました。ペレスはスペイン中の子供の歯を集めて、贈り物と交換してくれるねずみなのです。
王様はがんばってお手紙を書いて、枕の下に抜けた歯と一緒に置いて寝ました。
夜になると、めがねをかけて騎士のすがたをしたねずみのペレスがやってきて、王様はペレスと仲良しになりました。
ペレスは、これから自分の家に寄ってから、パブロという貧しい家の男の子の歯を取りに行くと言います。
王様は、ぜひ一緒に行きたいとせがみ、ペレスにねずみに変身させてもらい、パプロの家まで行くのです。
初版は1953年。
70年近く愛されるロングセラーです。アルフォンソ13世は昭和天皇とも親交があったらしく、実は日本とはゆかりの深い物語だったようです。
文章は平易で読みやすく、ちょっとした数字や漢字以外はすべてひらがなで書かれているので、小学校低学年から、かしこい子なら幼稚園から読めます。読み聞かせにも最適です。
また、文章もさることながら、絵がとにかくかわいい。
子供の姿の王様も、スペインの騎士ふうの衣装を着てねずみに変身した王様も、ねずみのペレスも、娘のねずみも部下のねずみたちもみんな、みんな、ねずみっぽさを残しながら、目がつぶらで愛らしいのです。ねずみたちの衣装も色彩豊かで、夢のある挿絵です。
また、作中のお母様の金言に
「こわいと おもうのは ようじんぶかい人
それを がまんするのが つよい人」(引用)
と言うものがあり、考えさせられます。
つまり、怖いと思わない人の強さは本当の強さではない、と言うのです。
深いですね!
わたしはたいへん怖がりなので、勇気をいただいた思いです!(←いい気になるな)
お話も、文章も、絵も、すべての点ですばらしく、「全人類読め!」と言いたくなるくらいの名作絵本。何十年も愛されるのも納得です。
絵本や児童文学を読んでいると、こういう体験が出来るのが何より幸せ。
ここ何年も目の前のことだけを追いかけて生きていて、絵本や小説、漫画やアニメーションから、ずっと長いこと遠ざかっていました。でも、やっぱり、わたしは本やファンタジーが大好きです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。かわいらしい絵本です。とにかく絵がかわいいので、大人のなごみ絵本としてもおすすめ。
スペインのお菓子と言ったら、チュロスくらいしか知らないのですが(汗) 読後はチュロスとコーヒーで、一休みしましょう。
時間をとって、ゆっくり読書を楽しんでくださいね!
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