【長い長いお医者さんの話】90年前の、チェコのナンセンスファンタジー。明るく楽しい童話集【小学校中学年以上】
チェコの文豪カレル・チャペックのナンセンスファンタジー短編集。お兄さんのヨセフ・チャペックの挿絵とともに多くの人々に愛されてきたロングセラー童話です。
この本のイメージ 不条理ファンタジー☆☆☆☆☆ 抱腹絶倒☆☆☆☆☆ 荒唐無稽☆☆☆☆
長い長いお医者さんの話 カレル・チャペック/作 中野好夫/訳 岩波少年文庫
<カレル・チャペック>
1890年~1938年。チェコの作家、劇作家、ジャーナリスト。兄は、ナチス・ドイツの強制収容所で死んだ画家・作家のヨゼフ・チャペック。劇作「R・U・R」で有名になり、「労働」を意味するチェコ語「robotaロボタ」から新造語「ロボット」を産んだ。
チェコの文豪、カレル・チャペックの童話集です。
どこかなつかしい気持ちになる、ナンセンス童話で、今昔物語とかに雰囲気が似ています。
どこまでが本当でどこからが嘘なのかわからないような。いや、全部架空の話なんですけども。
近所の気のいいおじさんが、お茶かお酒でも飲みながら大ぼら話をしているのを聞いているようなお話です。巻末に寺村輝夫先生の解説があり、カレルチャペックを読んで影響を受けて「ぼくは王さま」を作った。それがのちに「こまったさん」「わかったさん」にいたる、とあります。
ああーー。わかるわかる。あの、わかったさんの謎の不条理感。たしかに通じるものがあります。
こういうハチャメチャさは、逆に近年のファンタジーにはあまり見られません。コンピューターゲームの影響かもしれませんが、むしろ、最近のファンタジーは、世界観も展開も、ある程度の規則性があります。
昔のファンタジーって、もっととりとめがなかったんですよね。どっちがいい、とも言えませんが、昔のナンセンスファンタジーや、不条理ファンタジーは、今読むと少し懐かしい感じがします。
日本の漫画だと、ほら、あれですよ。
吾妻ひでお先生のギャグマンガとか、魔夜峰夫先生の「パタリロ!」とかですよ。(いつも古いよ)
魔夜先生は最近「翔んで埼玉」が映画化されたりしてるので、ご存知の若い方も多いはず!
この短編集は美しいお姫様とか、冒険少年とかが出てくるファンタジーじゃなくて、ゆる~い脱力系です。
でも、この独特の持ち味に癒される人も多いと思うので、本日はご紹介。
収録されているお話は
・長い長いお医者さんの話
・郵便屋さんの話
・カッパの話
・小鳥と天使のたまごの話
・長い長いおまわりさんの話
・犬と妖精の話
・宿なしルンペンくんの話
・山賊の話
・王女さまと子ネコの話
です。
挿絵はお兄さんのヨセフ・チャペックさんが描いていますが、この絵もとぼけてるんです。
わりと多くの人から指摘されていることですが、この「カッパの話」の挿絵のカッパが、すごく、日本の昔話のカッパに似てる。
1931年にチェコの画家ヨセフ・チャペックが描いたとすると、90年前のチェコの人がイメージするカッパと、わたしたち日本人がイメージするカッパは同じものだったという事になります。
と言うか、チェコにカッパがいたというのが驚きなんですが。
アイルランドなどに伝わるケルト神話におけるティル・ナ・ノーグ(常若の国)が、日本の昔話の竜宮城に似ているなど、西洋と日本の昔話には、たまに驚くような共通点があります。
今回も、いちばんの驚きポイントはカッパの絵でした。それに、ヒドラという、日本神話のヤマトノオロチみたいな蛇が出てくるお話もあるんです。ね、面白いでしょ。
とても短いお話のオムニバスなので、少しずつ読みすすむことが出来ます。収録されているお話自体は多く、1冊としてはかなりのボリュームがあり、お徳感はあります。
深く考えなくても楽しめる、明るくって時々クスッとできる童話集です。男の子にも女の子にも、そして疲れてる大人にもおすすめです。肩の力を抜いて読めます。
逆に、読書感想文を書くのは、ちょっと大変かもしれません。頭をからっぽにして、お気楽になりたいときに。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。軽くてゆかいな童話集です。短いお話ばかりなので、コーヒータイムやティータイムにちょっとずつ読んで楽しむことができます。読み聞かせにも。
チェコのお菓子とか、ぜんぜんまったく知らないんですけど(汗)。スパイスを使ったお菓子が多いみたいなので、読後は紅茶とジンジャークッキーでティータイムを。シナモンティーもいいですね。
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