【ビッケのとっておき大作戦】スウェーデンからやってきた、戦わないバイキング。ビッケの物語完結編【小さなバイキングビッケ】【小学校中学年以上】

2021年9月23日

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ビッケのとっておき大作戦  ルーネル・ヨンソン/作 エーヴェット・カールソン/絵 石渡利康/訳 評論社

ビッケたちは、航海の途中で、あるおそろしい街にたどり着きました。街の人たちはみなやせ細り、苦しそうなのに立派で大きなお城には、太った王様たちがいるというのです。そこで……

この本のイメージ ゆかいな☆☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆☆ 幸せな社会☆☆☆☆☆ 

ビッケのとっておき大作戦  ルーネル・ヨンソン/作 エーヴェット・カールソン/絵 石渡利康/訳 評論社

<ルーネル・ヨンソン>
1916年~2006年。スウェーデンのニーブロに生まれる。スウェーデンのジャーナリストにして児童文学作家。1963年に、『小さなバイキングビッケ』を刊行、1965年ドイツ児童図書賞を受賞。

ビッケのとっておき大作戦  ルーネル・ヨンソン/作 エーヴェット・カールソン/絵 石渡利康/訳 評論社

 

 ルーネル・ヨンソンの小さなバイキングシリーズ、第六巻は、「ビッケのとっておき大作戦」。原書初版は1975年。原題はVicke Viking stortar tyrannernaです。この本だけ、翻訳が遅く、2012年に日本で出版されました。

 さいごの作品は、ビッケたちフラーケ族のバイキングが、ついにバイキングをやめようとする、そんなお話です。
 数々の冒険の末に、フラーケ一族のバイキングたちにも変化が訪れ、それぞれの仲間たちが、それぞれの欠点を克服し、ハルバルも略奪よりは交易を、戦いよりは話し合いを選ぶようになります。

 そんな彼らの前に、ある、おそろしい独裁者の王様たちの町が現れます。そこでは、巨大な城に住む三人の王様と三人の大臣が、町のすべてを支配し、町の人たちは食べるものもろくに食べられず、やせ細って重税にあえいでいました。

 見かねて街の人たちをビッケたちが救います。
 けれども、その街がまともになったかというと、そうではなく、別の場所で交易をしてから帰り道にそこへ寄ると、さらにひどい街になっていたのでした……さて、ビッケたちは、街の人たちを救えるのでしょうか。

 と、言うのが今回のあらすじ。

 六巻目は、今までのお話の中で、いちばん深くて、そして、ラストにふさわしいお話になっています。

 様々な場所で暴れていたバイキングの面々も、戦ったり略奪したりするよりも、話し合いや取引、交易で品物を得たほうが得だという事に気がつき始めます。
 いままでのシリーズではぶつかり合いの多かった荒くれものたちも、この巻では、それぞれのよさを認め、ほめあったり、欠点をゆるしたりして、関係性に変化が訪れました。

 また、一握りの人たちが、多くの人々を残酷な方法で支配する恐ろしい街には、ハルバルたちがバイキングたちの「ティング」と言う、みんなで話し合いで決める方法を教えます。これは、近代議会のもとになった「民会」というものだそうです。

 ルーネル・ヨンソンがビッケを通して伝えたかったこと、目指したことなどが、いちばんよくわかる形で描かれている巻でした。

 大昔の北欧に、かなり近代的な政治システムがあったのは、この本を読んではじめて知りました。このシステムはバイキングによって、各地に伝えられたようです。同様のものは、アイルランドにもあったようで、ケルトやバイキングは、かなりすすんでいたんですね。

 ビッケという少年は、架空のキャラクターですが、ルーネル・ヨンソンは、ビッケを通じて、一貫したテーマを伝え続けています。

 それは、「勇気を持って争いあうよりは、臆病でも知恵を使い、戦わずに解決すること」

 これは現代でも、子どもたちを悩ませる問題ではないでしょうか。つらいとき、苦しいとき、理不尽な目に遭ったとき、ぶつかってケンカするほうがいいのか、争いを避けるほうがいいのか。

 ビッケは徹底して争いを避けます。臆病で勇気がないといわれても、いくじなしと馬鹿にされても、知恵で解決するほうを選びます。そのための勇気を出すことはいといません。これは、「小さなバイキング」シリーズでは、貫かれているポリシーです。

 知恵を使って問題を解決することで臆病と言われることは、恐れない。それが、ビッケの持つ「勇気」なのです。そして、そのためには、死に物狂いで考えて、知恵を出す。

 体力も腕力もなく、怖がりで、すぐにぶるぶる震えてしまうけれど、ピンチのときは死に物狂いで考えて、なんとかしてしまう、そんなビッケだから、フラーケ一族の誰よりもたよりにされるようになりました。

 けれど、ビッケの知恵はピンチを乗り越えるためのもの。けっして「しめしめ」と、誰かを追い詰め追い落とすためのものではありません。誰も犠牲になることなく、みんなが幸せになるための知恵なのです。そこも、ヨンソンは徹底しています。

 人はなんのために勉強するのか。なんのために知恵が必要なのか。
 それは、争わないためであり、みんなが幸せになるためであり、誰も不幸にしないためなのだ。

 小さなバイキングの最後の冒険にふさわしく、最終巻のヨンソンのメッセージは、ストレートです。

 シンプルで、でも、大切なことかもしれません。ほんとうの「勇気」とはなんなのか。「知恵」とはなんなのか。
 そして、勇気と知恵ははなんのために使うのか。

 字は程よく大きく、文章は平易でわかりやすく、とても読みやすい本です。小学校中学年からの本ですが、低学年から読み聞かせをしても。
 そして、大人が読んでも、大きな学びがあり、すばらしい名作です。

 どの巻から読んでも面白く楽しめますが、順を追って読んだほうがビッケの成長が理解できるので「小さなバイキング」からお読みになるのをおすすめします。

 時を越えて愛される物語です。
 「戦わないバイキング」の冒険を、お楽しみください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。明るく楽しい、とんちの効いた物語です。けれど、深いテーマもあって、子どもから大人まで、幅広くおすすめします。
 ビッケが毎回、おもしろ装置を作るので、小さなお子様の図工意欲をかきたてそうです。ユーモアあふれる展開は、大人の和み時間にもおすすめ。週末のお風呂上りなどに、肩の力をぬいて楽しめます。

 読後は、北欧風のベリーのジャムとパンケーキ、コーヒーでリラックスタイムを。

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