【りんご畑の特別列車】特別列車に乗って異世界旅行? 柏葉ワールドへ冒険ツアー【小学校中学年以上】

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りんご畑の特別列車 柏葉幸子/作 愛敬由紀子/絵 講談社青い鳥文庫

小学5年生のユキはピアノ教室からの帰りの列車で、不思議な体験の後、知らない駅で降ろされてしまいます。困り果てたユキは、紅さんと了さんの姉弟が「メリィさんのところへ行け」と投げてくれた地図にある旅行代理店に行くのですが、それは不思議な大冒険のはじまりでした。

この本のイメージ 魔法☆☆☆☆☆ 奇妙奇天烈☆☆☆☆☆ 異世界旅行☆☆☆☆☆

りんご畑の特別列車 柏葉幸子/作 愛敬由紀子/絵 講談社青い鳥文庫

<柏葉幸子>
日本の児童文学作家。岩手県宮古市生まれ、花巻市出身、盛岡市在住。東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)卒業。本業は薬剤師。
大学在学中の1974年、『気ちがい通りのリナ』が第15回講談社児童文学新人賞に入選しデビューする。翌年『霧のむこうのふしぎな町』と改題し刊行。

りんご畑の特別列車 柏葉幸子/作 愛敬由紀子/絵 講談社青い鳥文庫

 今日ご紹介するのは、柏葉幸子先生の不思議異世界ファンタジー、「りんご畑の特別列車」です。

 お話は、

 小学5年生のユキはピアノ教室からの帰りの列車で、乗客全員がりんごを食べ始めるという不思議な体験の後、知らない駅で降ろされてしまいます。

 困り果てたユキは、紅さんと了さんの姉弟が「メリィさんのところへ行け」と投げてくれた地図にある旅行代理店に行くのですが、それは不思議な大冒険のはじまりでした。

 荒れ放題の奇妙な屋敷で、ペキンポという透明人間、巨大なねずみのような動物チャップと仲良くなったユキは、ひょんなことからお城に魔法比べの勝負に行くことになりました。

 この世界の人間はみんな魔法を使えるけれど、ユキは使えません。けれど、ペキンポは人に姿を見られないので、ユキのしぐさにあわせてペキンポが何かをすると魔法のように見えると言うわけ。

 そこで勝ち残ったユキは、魔女退治の旅に出るチビ王子のお供に決定。

 さてさて、ユキは魔女を倒すことが出来るのか、この世界はどうなるのか、そして、ユキは家に帰れるのでしょうか……

 と、言うのがあらすじ。

 ペキンポのすがたが他人に見えなくなった理由は、王様のバカシルがペキンポの魔力をおそれてペキンポ以外の人間に「ペキンポを忘れる」魔法をかけたから。

 人から忘れられたペキンポはどんどんすがたが見えなくなって、存在が消えかかっていたのです。
現実でもそういうものかもしれません。

 バカシルがそういう手段に出たのは、ペキンポが強すぎてペキンポ本人に魔法をかけることができなかったからでした。
 しかし、その代償は大きく、国中の人の魔法の力は弱くなってしまうしペキンポも力をほとんど失ってしまったので、あらたな外敵から身を守る手段を失ってしまったのです。

 そこで、呼ばれたのがこの世界の人間ではないユキ。
 彼女の存在が突破口になったのでした。

 ユキはただ巻きこまれて不思議な世界にたどりつき、自分の家に帰りたいだけなのですが、「異質」である彼女の存在が、どんどん事態を好転させてゆきます。

 最後は気持ちのよいハッピーエンド。

 「霧のむこうの不思議な町」では、主人公リナが成長する話でしたが、このお話は主人公がただ自然にふるまっているだけで、主人公の周囲が成長する話でした。

 特別列車に乗る人たちは、それぞれがみな、自分にぴったりの異世界を持っていて、特別列車に乗ってそこと行き来できるようになるのだそうです。

 世界のどこかに、もうひとつの世界があって、そことときどき行き来する、そういう異世界ファンタジーが柏葉ワールドです。
 それは、どんな人もその人の心の中に、自分だけの世界があるのと似ています。

 自分の中に、自分だけの世界を作ることは、とても大切なことです。
 よくそれを「殻に閉じこもっている」とか、「社会に適応していない」と言う人がいますが、ひっきりなしに他人と会ったり、メッセージをやり取りしたり、大勢で出かけたりしていると、忙しすぎて何がなんだかわからなくなったり、自分のペースを見失ってしまったりすることもあります。

 一人でいる時間や、自分の世界をもつ時間はとても大切なのです。

 とはいえ、ペキンポのように世界から断絶してしまってもたいへんです。そこらへんのさじ加減が大切なのでしょう。

 柏葉ワールドは、読んでいると、同じような服を着て同じような髪型で同じ場所で同じようなことをする、そういう「交流」がもてなくても、自分だけの世界や自分なりの形での交流をすればいいのだ、と言う気持ちにさせてくれる作品ばかりです。

 井辻朱美先生の解説にもありますが、柏葉ワールドの魅力はその「無国籍さ」。
 西洋なのか、東洋なのか、和風なのかわからない、様々な国の不思議が雑居状態で入っているのが魅力です。
そんなごった煮の世界観だからこそ、柏葉作品に共通する「未知との遭遇」的なカルチャーショックが面白楽しいのです。

 「霧のむこうのふしぎな町」をはじめとする異世界旅行ものシリーズは、価値観の違う人たちと出会う驚きや喜びに満ちています。
 「モンスターホテル」シリーズは、恐ろしいイメージのモンスターたちが、じつは気のいい優しい奴らで、困っている人たちを助けたくてうずうずしていると言う、ほほえましいお話で楽しませてくれます。

 型にはまらないこと、自分とは違う人たちのことを尊重すること、理解できないことも面白がって受け入れること……
 シンプルだけれど、大切なことが、いつもいっぱい詰まっています。

 お話がストレートでわかりやすく、楽しく、そして、漢字にはすべて振り仮名がふってあるので、小学校中学年からお読みいただけます。長い文章の読み始めにもおすすめ。

 もちろん、大人が読んでも楽しめます。大人の心の中の子ども心に栄養を与えてくれるファンタジーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。楽しくてゆかいな、正統派の異世界迷い込み型ファンタジーです。
魔王はあまり頼りにならないけれど、ねずみのチャップは頼りになります。ヤンチャ王子のチビはかわいい。

 休日の大人の和みタイムに、読み聞かせに、お子様へのプレゼントにと、全方位におすすめの良質ジュブナイルです。

 読後は、ぜひアップルティーとアップルパイでティータイムを。

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