【ドリトル先生】ドリトル先生、ノアの方舟の秘密に迫る。100年前の動物ファンタジー【ドリトル先生と秘密の湖】【小学校中学年以上】

2021年5月12日

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ドリトル先生と秘密の湖 上下  【ドリトル先生シリーズ 10 11 】  ヒュー・ロフティング/訳 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

月から帰ったドリトル先生は、月の植物を地球で育てようとして失敗を繰り返していました。そんなとき、ポリネシアとトミーは、秘密の湖のドロンコなら、太古の秘密を知っているのではないかと考えたのですが……

この本のイメージ 長い長いカメの話☆☆☆☆☆ 大洪水とノアの伝説☆☆☆☆☆ 独裁者とは☆☆☆☆☆

ドリトル先生と秘密の湖 上下  【ドリトル先生シリーズ 10 11 】  ヒュー・ロフティング/訳 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

<ヒュー・ロフティング>
1886~1947年。イギリス生まれ。土木技師を経て、1912年アメリカで結婚し、文筆活動に入る。著書にドリトル先生シリーズ。

ドリトル先生と秘密の湖 上 【ドリトル先生シリーズ 10 】  ヒュー・ロフティング/訳 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

 

 ドリトル先生シリーズも、あとわずかとなりました。この「秘密の湖」は、作者のロフティングが存命中に出版された最後の作品です。

原題は、Doctor Dolittle and the Secret Lake. アメリカでの初版は1950年です。(舞台はイギリスですが、出版はアメリカ)

 お話は、

 月から帰ったドリトル先生は、月の植物を地球で育てる実験をして、失敗を繰り返していました。月の植物が地球で育てられることができれば、人間はもっと長寿になり、様々な問題が解決できると思ったのです。

 けれども、失敗の繰り返しで、気落ちしてしまうドリトル先生。

 そんな先生を心配したポリネシアとトミーは、ドリトル先生が昔、ファンティポ王国に旅したときに出会った、旧約聖書の時代から生きている大亀ドロンコなら、長寿の秘密を知っているのではないかと思いつきました。
 しかし、当時のノートを探していた彼らは、おそろしい事実を知ってしまいます。

 なんと、ねずみがこれらの貴重なノートを全部噛み千切ってしまっていたのでした。

 ショックをうけるドリトルファミリー。

ドリトル先生と秘密の湖 下  【ドリトル先生シリーズ 11 】  ヒュー・ロフティング/訳 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

 そんなとき、スズメのチープサイド夫妻が、命がけでアフリカのファンティポ王国へ旅して戻ってきました。ドロンコの消息を確かめに行っていたのです。
 ドロンコは、つい最近起きた大地震で、土砂の下に埋もれてしまい、生死不明となっていたのでした。

 ドロンコ救出のため、アフリカへの航海を決意するドリトル先生。今度はトミーも一緒です。
 ついに、「アホウドリ号」に乗って、ドリトル先生の最後の大航海がはじまるのでした……

 と、いうのがあらすじ。

 今回は、上下巻の大長編です。

 上巻は、ドリトル先生がアフリカへの航海に乗り出す前のどたばた。
 実験が失敗続きで気落ちしている先生や、ねずみがノートをダメにしてしまうエピソードに混じって、アイリッシュ・セッターのプリンスのお話が入っています。
 これは、ドリトル屋敷の生活になじめなかったプリンスが新しい飼い主を探すために新聞広告を出すお話。

 つまり、人間が「こんな犬欲しい」と広告を出すのではなく、犬が「こんな飼い主ほしい」と条件を書いて広告を出してもいいじゃないか、というお話です。人間なら、雇用主が従業員募集の広告を出せるように、従業員がわもこんな上司募集と広告を出してもいいんじゃないか、っていう。
 わりと現代にも通じますね。

 また、土砂に埋もれたドロンコを救助すのに、以前ドリトル先生が命を助け、妹のサラが怒って家を出て行った原因になった、あのワニが大活躍。

 なつかしいファンティポ王国のココ王も登場し、ほぼオールスターキャストです。

 下巻は、救出されたドロンコの語る、ノアの方舟で有名な大洪水時代の長い長いお話。大洪水の前に人類を支配していたマシュツ王とその都シャルバの栄光と滅亡、王の奴隷であったエバーとガザを助けてアメリカ大陸を発見する話など、波乱万丈なストーリーです。

 今回のお話は、人間はどうして傲慢になってしまうのか、そして、この地球に人間ははたして必要なのか。と言う、かなり深いテーマに切り込みます。

 お話の中で、「人間は滅ぼすべきだ」と主張する動物たちに対して、ドロンコが人間擁護の演説をするシーンがあります。

 大洪水によって、ほとんどの自然は破壊されてしまった。人間がいなければ、植物を再びよみがえらせる事はできない。そして、植物が無ければ草食動物は生き延びられない。草食動物が絶滅してしまえば、肉食動物も絶滅してしまう。
 だから、人間は助けるべきなのだ、と言うのです。

 ドロンコが助けようとしたエバーは王宮の園丁で、その恋人ガザは歌を歌う奴隷でした。そういうふたりが生き残ったのも、意味があることのように思います。ロフティングは、もし人類が仕切りなおしをするのなら、生命を育て、芸術を愛する人たちによって、あらたな文明を築き上げるべきだと思ったのでしょう。

 ドリトル先生は、徹頭徹尾、価値観の違うものどうしの相互理解や、多様性を説いています。当時の時代の人特有の誤解はあれど、訴えていることは、「大いなる受容」であり、排斥や分断は否定しています。

 じつは、様々な哀しい誤解があり(アフリカの王国描写が間違っているなど)、ドリトル先生シリーズは、巻によっては出版されていない国もあります。

 日本は、ドリトル先生を全巻読める貴重な国なのです。

 100年前に、多様性や異文化の相互理解を説いた名作です。井伏鱒二の名訳で読める贅沢を、どうぞ体験してくださいね。

 科学技術などは、100年前の人が想像で書いている部分があり(月世界のことや、その時代の人が考えた未来装置など)、今読むとおかしく思うところはあるかもしれませんが、現代にも通じることが多く、時代を越える名作です。

 ドリトル先生シリーズもあと二冊。遺作をまとめた「緑のカナリア」と「楽しい家」となります。さいごまでご紹介しますので、楽しみにしてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。繊細で哲学的な部分も多く、HSPHSCの方のほうが多くのことを受け取れると思います。純粋に、動物ファンタジーとしても、面白く読めます。
 なつかしい顔ぶれも大集合の、楽しい本です。

 読後は、トロピカルフルーツと英国紅茶でティータイムを。

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