【くのいち小桜忍法帖】偽金の謎を追え。キュートな忍法帖三たび見参!【風さそう弥生の夜桜】【小学校中学年以上】

2024年3月11日

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風さそう弥生の夜桜  くのいち小桜忍法帖 斉藤洋/作 大矢正和/絵 あすなろ書房

あるときは薬種問屋の丁稚、あるときは愛らしい町娘、しかしてその実態は、公儀御庭役橘北家のくのいち四郎小桜。このたびは小判師失踪事件にからむ謎に、小桜たちが挑みます……

風さそう弥生の夜桜  くのいち小桜忍法帖 斉藤洋/作 大矢正和/絵 あすなろ書房

<斉藤 洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

 くのいち小桜忍法帖シリーズ三作目です。初版は2016年。
 「白狐魔記」に比べると短いお話で、挿絵が今風でとてもかわいいので読みやすいと思います。お話は、元禄時代、橘北家という架空の御庭役の家と、彼らの活躍の物語です。

 主人公は、小桜。普段は薬種問屋の丁稚として働きながら、くのいちとしての修行に励む橘北家の末娘。「おつとめ」と呼ばれる任務にあわせて、少年のすがたにも少女のすがたにも変幻自在。

 半守(はんす)という、しゃべるジャーマンシェパードをお供に、江戸の街を駆け巡ります。

 今回のお話は、
本石町の金座で働く職人が、謎の失踪を遂げる事件が相次いでいるらしい。雷蔵から小耳に挟んだ小桜。

 金座というのは、江戸で小判を鋳造するところ。
 そこから職人がいなくなるとは、ただごとではない。

 しかし、いなくなった職人は、しばらくすると帰ってくると言う。いったい、これはどういうことなのか。

 そして、同時にそのころ、兄たちとともに事件にかかわる小桜は、自分の仕事「おつとめ」の厳しさを知り、思い悩むようになります……

 と、言うのが今回のあらすじ。

 1巻、2巻と、明るくかっこいい忍法帖が続いてきたところで、今回は、あれですよ。「斉藤節」でございます。
 黒とも白とも言い切れぬ、自分の家の仕事の裏側を見て、悩み始める小桜。

 小桜も、すこしずつ成長して、お年頃になってきたのです。大人になったら、江戸で兄たちと一緒にいつ死ぬかもしれない「おとつめ」に励むか、どこかの外様藩に間者として嫁入りするか、「進路」選択の時がやってきます。

 けれど、お江戸大好き、おしゃれ大好きな小桜は、お江戸を離れるなど頭にありません。と、なると、血なまぐさいくのいちの道に入ることになるのですが……

 黒とも白とも言えぬ大人の世界に釈然としない小桜、そんな小桜のことを気にかけ、ときどき現れる、神出鬼没の歌舞伎役者、市川桜花。そして、謎のしゃべる犬、半守。

 ちょっぴりファンタジックで、そして華やかな忍法帖です。

 物語前半は、偽小判事件の捜査と顛末。忍者が行う、正々堂々とはゆかない方法に、「おつとめ」の裏側を見て小桜は悩みます。

 少年のような純粋な心で橘北家の「おつとめ」が一人前にできるよう励んでいた小桜ですが、どうやら御庭役は自分が考えていたような、「正義の味方」ではないらしい。大人の世界を垣間見て、そろそろ自分の人生を選択しなければならない年齢にさしかかってきた小桜。
 彼女は、どんな「進路」を選ぶことになるのでしょう。

 今回のエピソードで、兄たちが小桜をかわいがっている理由が、わかってきました。

 外様大名の間者として嫁入りさせることになれば、もう、ほぼ一生会えることはない。かといって、江戸にくのいちとして残るようなら、背中合わせの危険が待っている……長生きできる確率がうんと減ってしまいます。

 つまり、家族として一緒にいられる時間が極端に短いから、そのあいだにうんとかわいがっていたのです。

 さて、

 物語後半は、あの有名な事件の幕開け。「白狐魔記」第六巻「元禄の雪」の裏側を描きます。浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)突然のご乱心の裏には、こんな事情が……と、言うファンタジー。

 お話のボリュームはそんなにはなく、字はほどよい大きさで読みやすく、ほとんどの漢字に振り仮名が振ってあります。絵は今風のかわいらしい挿絵で、わかりやすいキャラクター表つき。お話はスピーディーですいすい読めます。

 「御庭役」や「橘北家」の設定はオリジナルですが、それ以外は元禄時代の風俗や設定など詳しく描かれており、歴史ファンにもうれしいつくりです。

 小桜がおしゃれでかわいらしく、アクションシーンはかっこいいので、女の子にも男の子にも。そして「白狐魔記」のファンにもおすすめです。

 このシリーズはあと一作。完結まで追いかけます。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 描写に気をつけて書かれていますが、切腹シーンがあります。

 しかし、映像的に美しいシーンも多く、また、時代劇っぽい言い回しなどもあり、時代物が好きな人にはおすすめです。
 読後は おいしい緑茶とお団子をご用意ください。

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