【よるくま】働くママと子どものメルヘン。愛されるロングセラー絵本。ママくまをさがす夜の旅【2歳 3歳 4歳】
ママ、あのね、きのうのよるね、うんとよなかに かわいいこがきたんだよ……。ぼうやのところに、くまのこがやってきました。名前は「よるくま」。よるくまは、おかあさんを探していたのです……
この本のイメージ 母の愛☆☆☆☆☆ 子の愛☆☆☆☆☆ 働くママに☆☆☆☆☆
よるくま 酒井駒子/作 絵 偕成社
<酒井駒子>
兵庫県生まれ。『きつねのかみさま』(ポプラ社・作:あまんきみこ)で日本絵本賞。『金曜日の砂糖ちゃん』(偕成社)でブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌賞。『ゆきがやんだら』(学研)はオランダで銀の石筆賞を受賞。『ぼくおかあさんのこと…』(文溪堂)では、フランスでPITCHOU賞、オランダで銀の石筆賞を受賞
本日は、伝説のロングセラー絵本「よるくま」のご紹介。
1999年に初版が出版されてから、何度も再版され愛される名作です。
ストーリーは……
ぼうやがベッドに入り、寝る前にママに話しはじめる、不思議な話をはじめます。
ママ、あのね、きのうのよるね、うんとよなかに かわいいこがきたんだよ。
それはくまの子、名前は「よるくま」……
よるくまは、おかあさんを探しに来たのでした。目が覚めたら、おかあさんがいなくて、泣いてしまうよるくま。ぼうやは、よるくまと町へ出て、おかあさんくまをさがします。
ハチミツを買いにお店に行ったかな? それとも公園かな? それともおうちに戻っているかな?
おかあさんが見つからないので、よるくまは泣き出します。よるくまの涙は、夜のようにまっくら。
流れ星に助けを求めたら、夜空で魚釣りをしていたおかあさんくまに釣り上げられました。
「ごめん ごめん、おかあさん おさかなつって おしごとしてたの」
おかあさんくまは、よるくまとぼうやを背負って帰ります。
「あしたになったら おさかなをやこうねえ。あさごはんにたべようねえ」
そんなおはなしを話し終わったら、ぼうやは眠ってしまっていました。
……と、いうのがあらすじ。
夜を題材にしているので、深い深い青い絵の本です。
けれど、あたたかなメッセージに満ちていて、子どもの気持ちで読んでも、親の気持ちで読んでも、しみじみとした相手への愛情が伝わってきます。
これは、働く親と、親を家で待つ子どもの物語です。
子どもは、親が外で働いていて家にいないことの意味が、あまりわかっていません。ただ「目が覚めたらお母さんがいなかった」だけが事実で、だから必死に探し回ります。
子どもなりに心当たりを探すのですが、それはおかあさんが連れて行ってくれた場所です。子どもの知っている、かぎられた世界なのです。けれども、子どもにとってはそれが世界のすべてです。
自分の知っている場所にいない=おかあさんが世界から消えてしまった
と、よるくまは泣きますが、流れ星がおかあさんを見つけてくれました。おかあさんはお魚を釣って働いていたのでした。
あさごはんにお魚を食べようねえ、たくさん釣れたので、残りはお魚屋さんに売って、そのお金でぼうやの自転車を買おうねえ、
あしたはバスに乗って自転車屋さんにいこうねえ、とおかあさんは言います。
とても短いお話なのですが、この小さなファンタジーのなかで母親が「自分の世界」からいなくなっているときは母親が働いていること、そして、そのお金で子どもである自分はご飯を食べることができ、欲しいものを買ってもらえていることなど、子どもが知りたい「お母さんが家を留守にする秘密」をみごとに教えてくれています。
「おかあさんはおまえが大好きよ」とか、「おまえのために働いてるんだよ」とか、「おかあさんの仕事はおまえを食べさせるためなのよ」とか、そんな言葉はいっさいなくても、必要なことが全部書いてあるのです。
「好き」とか「大切」とか「愛情」とか、そんな言葉もひとつも書いてありません。
けれど、物語と絵の中に母の愛がいっぱいに詰まっていて、一ベージごと、読むごとにあふれ出してきます。もちろん、子どもの母親への愛も。
お子さまが寝る前の読み聞かせに、ぜひこの絵本を。もちろん、大人のなごみ絵本としても、おすすめです。
大人が自分のために読むと、また違った気持ちがやってきます。とても清らかな、癒しの波が心の中に広がり、しずかでやさしい気持ちになる絵本です。
こういうのを名作と言うんですね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
おすすめです。子ども時代まっさかりのHSCのお子さまにも、働くHSPママにも、そして、時々子ども心を取り戻したい大人にも。繊細な方のほうがずっと多くのメッセージを受け取るでしょう。
親子の夜の読み聞かせにはもちろん、大人の週末のリラックスタイムにも。一人で、静かな時間をすごすときに、おすすめです。
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