【クララ白書】少女小説の名作。氷室冴子が描く、寄宿舎青春物語【電子書籍】【中学生以上】

2024年3月16日

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クララ白書Ⅰ 氷室冴子/作 集英社

わたし、桂木しのぶ。友達からは「しーの」と呼ばれてる。家の都合で、徳心学園中等科の女子寮・クララ舎に入ることになったんだけど、ここには途中入寮の生徒にはいっぷう変わった入団式がある。上級生の出した「テスト」を期日までにクリアしないといけないのだ。

この本のイメージ 女子校☆☆☆☆☆ 寄宿舎☆☆☆☆☆ トキメキスクールライフ☆☆☆☆☆

クララ白書Ⅰ 氷室冴子/作 集英社

<氷室冴子>
氷室 冴子(ひむろ さえこ、本名:碓井 小恵子(うすい さえこ)、1957年1月11日 ~ 2008年6月6日) 1957年北海道生まれ。藤女子大学国文学科卒業。77年、「さようならアルルカン」で青春小説新人賞受賞。少女小説の代表的人気作家。著書に「なんて素敵にジャパネスク」など多数。 

 わたしの「読まずに死ねない作家リスト」の第1位、氷室冴子先生の作品にようやく着手。
 80年代を代表すると言ってもいい、超人気少女小説作家でございました。

 あまりにも大人気すぎて、知ったときにはブームに乗れず、全盛期に一冊も読んでいないのです。本好きの女子で氷室先生を読んでいないのは、むしろ異端なのではなかろうか。でも、ずっとずっと読みたかったので、読めて幸せ。

 「クララ白書」は、氷室先生の初期の代表作品です。初版は1980年。氷室作品は、女の子がたくさん出てきてわちゃわちゃする青春物語系の話と、ファンタジー系列のお話があって、どちらもとても人気があります。

 キャラクターはエッジが効いていて、どのキャラも魅力があり、若い頃にどれだけ布教されたかわかりません。有間皇子や高城さんなんて、本当に人気がありました。
 また、とにかく文章が上手いのです。テンポよく軽快で、読みやすいのに描写力がある。少女たちの表情や、しぐさが生き生きと伝わってくるし、情景が目に浮かびます。

 そして、ひねりのある表現も効いている。

 「朝の勝負がきまらない」って、当時、みんな使っていました。なつかしい。どういう意味かって? 朝、出ればスッキリするあれですよ。乙女だから直接的には表現しないのです。

 「クララ白書」は、北海道札幌市にある、徳心学園と言う女子校の中等科寄宿舎「クララ舎」で繰り広げられる、コメディタッチのガールズスクールライフ。札幌の藤女子中学校がモデルと言われています。

 主人公は桂木しのぶ。通称しーの。
 しーのは、家の事情で、三年生から中等科の寄宿舎に入ることになりました。

 ところが、この「クララ舎」には、途中入寮の学生のために伝統の入団式があって、先輩の出した「テスト」を期日までにクリアしなければならないのです。

 もちろん、失敗してもいいのですが、三年生はクララ舎のなかで下級生より様々な特権があり、途中から入って特権だけうけるのはよろしくない。だからこその「入舎テスト」なので、失敗なんかしたら乙女の名折れです。と、言うわけで、しーのは、同時期に入寮する佐倉菊花と紺野蒔子の三人で、テストに挑戦することになりました。

 今年のテストは「真夜中に調理室へ忍び込み、全舎生分のドーナツを揚げること」。

 さて、しーのたちは、この難関を突破できるでしょうか?

 ……と、いうのがあらすじ。 オムニバス形式で、短編が五編収録されています。 寄宿舎での、個性的なメンバーでの青春物語は、かつて少女小説や少女漫画で多くの名作が生まれました。男子校ものでは「ここはグリーンウッド」が有名です。「グリーンウッド」は「クララ白書」の男子校版という感じ。

 クララ白書の魅力は、キャラの立った名物生徒たちの熱い友情と、いい感じに希薄な恋愛描写です。
 たとえば、しーのは、とある事情で寿家光太郎くんという大学生と仲良くなるのですが、とくにラブ描写は見当たらない。(正直、中学生にとって大学生って、わりとおっさん扱いのところがあるので仕方がないかもしれませんが)
 彼のいとこ鈴木夢見としーのが光太郎をはさんで三角関係になるかと思いきや、まさかの展開です。でも、そこがいいのです。

 ふつうの作家、とくに男性作家だったら、ここで三角関係にしちゃうだろうなと思うと、少女読者からの氷室作品への絶対的信頼の理由が理解できます。

 「クララ白書」を読んでいて思い出すのは、「赤毛のアンシリーズ」の第3巻「アンの愛情」で、大学生となったアンたちが友人たちと一緒に暮らす「パティの家」。乙女の夢がいっぱい詰まった、女子大生どうしの共同生活です。

 女の子たちが「家」に縛られず、自分だけの「砦」を持ちたい、そんな夢をかなえてくれるのが「寄宿舎もの」の魅力。

 青春時代のきらめきと、あこがれと、乙女の友情がいっぱい詰まった、正統派少女小説です。
 かつての少女にも、いまの少女にも、乙女心を持つ男子にも、乙女心を知りたい男子にもおすすめです。

※紙の本では入手困難ですが、電子書籍があります。電子書籍で読める名作をお探しなら、迷わずこれを!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はいっさいありません。明るく、健全で、前向きな少女小説です。コメディタッチのガールズスクールライフで、終始楽しんで読めます。お見舞いや差し入れにも、最適。インターネットやスマホが無い時代の、古きよき少女たちの青春物語です。

 読後は、もちろん、ドーナツでティータイムを。

 

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