【ノーチラス号の冒険】ドイツからやってきた、「あの名作」の創作続編第2巻。深海で出会う最強ヒロイン【アトランティスの少女】【小学校高学年以上】
ノーチラス号の番人トラウトマンは、マイクをイギリスに送り届けたのち、深海に沈むつもりでした。ところが、思わぬ事態がおき、マイクたちは再びノーチラス号に乗り込むことになったのです。それは、ヴィンターフェルト艦長が、あのアロナクス教授の身柄を確保したからでした……
この本のイメージ アロナクス登場☆☆☆☆☆ 新展開☆☆☆☆☆ 最強ヒロイン☆☆☆☆☆
ノーチラス号の冒険 2 アトランティスの少女 ヴォルフガング・ホールバイン/作 平井吉夫/訳 創元社
<ヴォルフガング・ホールバイン>
ヴォルフガング・ホールバイン(Wolfgang Hohlbein、1953年8月15日~ )はドイツの小説家。ホラー、SF、ファンタジーを中心に執筆している。ノルトライン=ヴェストファーレン州ノイス在住。「パイレーツ・オブ・カリビアン」「インディー・ジョーンズ」を題材とした小説でも知られる。
ジュール・ヴェルヌの傑作海洋冒険小説「海底二万里」の続編を、ドイツのSF作家が書いた、二次創作的SF小説「ノーチラス号の冒険」シリーズ第2巻です。原書タイトルは、Operation Nautilus:Das Madchen von Atlantis.初版は1994年です。日本での初版は2006年。
第1巻「忘れられた島」が現在中古でしか手に入らない入手困難本なのですが、あまりにも面白いシリーズなので、あえてご紹介。第1巻は中古か、図書館でお読みください。そして、ぜひ電子化を!
ドイツ語タイトルを見ると、「おおっ、ドイツ!」って思いますよね。(なんだそれ) 日本では、ある時期、第1外国語がドイツ語だった時代があり、「メッチェン」とか言うと、旧制高校とかを思い出してしまいます。(古すぎですよ)いや、生きてないですよ、その時代(あたりまえだ)。わたしのじいさまとかの時代です。
海底二万里の作者、ジュール・ヴェルヌはフランス人ですが、ドイツにもこんなにも熱烈なファンがいたんですね。
作者の「海底二万里愛」が炸裂しているこのお話、「神秘の島」のネタは少しは入っているのですが、正確には引き継いでおらず、「海底二万里」の続編と言う形です。
「海底二万里」にもアトランティスの遺跡が登場しますが、今回はそれを膨らませていて、アトランティス時代の遺産が見つかるという物語。これが今後のメインストーリーになりそう。
また、ついに「海底二万里」の主人公、アロナクス教授が登場します。
原作のメインキャラが登場すると、胸が熱くなりますね。アロナクス教授もストーリーに深く関るキャラクターのようです。
主人公マイクは、ネモ船長の息子。天涯孤独だと思っていましたが、父からノーチラス号を受け継ぎます。しかし、世界は第1次世界大戦がおきようとしている時代、ノーチラス号が戦争に利用されることをおそれた潜水艦の番人トラウトマンは、マイクたちを送り届けた後、ノーチラス号とともに深海に沈む覚悟でした。
ところが、以前ノーチラス号でネモ船長とともにすごしたことがあるアロナクス教授が、特殊な潜水器の技術ともにヴィンターフェルト艦長に身柄を拘束されたらしい情報を知ると、マイクたちを再び迎えに帰ってきました。
はたして、ノーチラス号の秘密とは。
そして、マイクたちが深海の底で出会った美少女の正体は?
……というのが第2巻のあらすじ。
美少女の正体は、タイトルにもなっているのでばれてしまっているのですが、今回、最強ヒロイン、セレナが登場します。
そして、重要キャラクター、アスタロス。
アスタロスは片目の猫です。しかし、猫の姿をしていますが、人間の知っている猫ではないかもしれません。マイクとはテレパシーで会話が出来るようで、今後も、活躍してくれそう。
アロナクス教授登場で、彼を中心に話が回るのかと思いきや、後半は猫が大活躍します。猫好きは必読です。
完全な海洋冒険ものだった「海底二万里」とは違い、「ノーチラス号の冒険」はかなりファンタジックな物語のようです。今後はアトランティスの謎を追うお話になりそう。ノーチラス号も、ネモ船長が作ったのではなく、失われた文明の遺産のようです。
さて、そうなると、なぜネモ船長が幼い息子にノーチラス号を遺そうとしたのか、それも気になってきました。ヴィンターフェルトも世界征服を狙う悪党とかではなく、彼なりの正義があるようです。このあたりの謎は、きっとこれから解明されてゆくのでしょう。
「海底二万里」世代も、現代のお子さまも、純粋に楽しめる冒険小説です。もちろん、まずは「海底二万里」をお読みくださいね。読まなくても楽しめますが、読んでおくと「ああ、あれがこれか」みたいな楽しみがあり、面白さが二倍。
字はほどよい大きさで読みやすく、巻頭にキャラ表もついているのでわかりやすいのですが、難しい漢字にしか振り仮名が振ってないので、小学校高学年から。「海底二万里」がわりと難しい小説ですから、ちょうどいいかもしれません。寄宿舎の少年たちが冒険の仲間たちなので、「二年間の休暇」の雰囲気もあります。
わくわくの深海冒険小説です。
おじいちゃん世代から、お父さんお母さん、そして現代のお子さまたちへと、三代で楽しめる物語です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
大破壊シーンがありますが、気をつけて書かれているので、残虐シーンや流血シーンは驚くほどありません。「そういうシーンがあるのだな」とあらかじめ身構えていれば大丈夫な方ならおすすめです。
正統派の、純粋な冒険物語です。「海底二万里」のファンなら、うれしくなる細かい描写もあります。また、猫のアスタロスが大活躍するので、猫好きは必読です。
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