【黒ねこサンゴロウ旅のつづき】うみねこ族の船乗りと人間たちのファンタジー。その続き【ケンとミリ】【小学校低学年以上】

2024年3月16日

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ケンとミリ 黒ねこサンゴロウ旅のつづき 1   竹下文子/文 鈴木まもる/絵  偕成社

ぼくの名前はケン。13歳。いとこのミリの家庭教師のアルバイトのために、冬休みにハナミサキに来ていた。ハナミサキは五年前、サンゴロウという不思議な黒ねこに出会い、宝探しの冒険をした場所だった……

この本のイメージ ハードボイルド☆☆☆☆☆ ちょっぴりせつない☆☆☆☆☆ ハッピーエンド☆☆☆☆☆

ケンとミリ 黒ねこサンゴロウ旅のつづき 1   竹下文子/文 鈴木まもる/絵  偕成社

<竹下文子>
竹下 文子(たけした ふみこ、1957年2月18日~)は 日本の児童文学作家。夫は画家の鈴木まもる。福岡県生まれ、東京学芸大学教育学部卒業。大学在学中より執筆を行う。1978年「月売りの話」で日本童話会賞受賞。1979年『星とトランペット』で第17回野間児童文芸推奨作品賞受賞。1985年『むぎわらぼうし』で絵本にっぽん賞受賞。1994年『黒ねこサンゴロウ<1>旅のはじまり』『黒ねこサンゴロウ<2>キララの海へ』で路傍の石幼少年文学賞受賞。2009年『ひらけ!なんきんまめ』で産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞。2020年『なまえのないねこ』で日本絵本賞、講談社絵本賞受賞。(wikipediaより)

<鈴木まもる>
1952年、東京都に生まれ。「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さしえ賞を、『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。

 「黒ねこサンゴロウ」シリーズの続編シリーズです。初版は1996年。

 うみねこ族という、直立して歩くねこ族の冒険を描いた「黒ねこサンゴロウ」シリーズですが、最初のおはなし「旅のはじまり」の主人公は人間の少年ケンでした。ケンはハナミサキに向かう列車マリン号のなかでフルヤ・サンゴロウと名乗る立って歩いてしゃべる猫と出会い、宝探しの冒険をしたのでした。

「黒ねこサンゴロウ」のシリーズは、一話完結の形をとっているので、どの巻からでも読めるのですが、大きな流れとしてつながっているので、第1巻から順番にお読みになることをおすすめします。

 「黒ねこサンゴロウ 旅のはじまり」のレビューはこちら

 この物語はその五年後、いとこのミリの家庭教師のアルバイトをするために、ハナミサキのコテージにむかうケンの一人称ではじまります。

 ケンは、13歳になっていました。料理研究家の母親と小説家の父親が別居し、父親に引き取られたミリ。ミリは、とても独特の感性があり、小学校になじめず、学校に通わなくなっていました。ケンは、そんなミリの勉強の世話を頼まれたのです。

 ミリは「キララの海へ」で登場した、サンゴロウと心で交信できる女の子。
 ひとりで神経衰弱をして、一度も間違えずにカードを裏返せたりできる、ちょっと不思議な子です。

 ちょっとしたケンとのいさかいの後、ミリはコテージを飛び出してゆきます。そして、ホテルの船着場の無人の大型モータボートに勝手に乗り込んでしまったミリを見つけ、ケンもボートに乗り込みますが、じつはこのモーターボート、ちゃんともやい綱がかかっておらず、いつの間にか漂流してしまいます……

 さて、ふたりは助かるのでしょうか

 と、言うのがストーリー。

 今回は、人間のケンとミリのお話なので、サンゴロウは少ししか登場しません。
 けれども、ケンもミリも自分だけの夢を見つけます。

 今回のサンゴロウの名言はこちら。

 「鳥はあらしのとき、どうするか知ってるかい。できるだけ安全なところにかくれて、じっとしている。船だってそうだ。港にはいって、あらしをやりすごす。にげるんじゃないぜ。やりすごして、夜があけたら、またでていくんだ。もっと遠くにいくためにさ。」(引用122)

 あらしをやりすごすのは、逃げることじゃない。鳥が命を守るためにやること。より遠くへ飛ぶために、やること。

 いい言葉ですね。

 小学二年生のミリは、学校になじめず、不登校になっていましたが、お母さんと一緒に北海道に引っ越したあと、彼女の「空を飛びたい」と言う夢を彼女なりにかなえようとします。

 いつもいつもおんなじペースで頑張る必要はない。頑張れないときは、「あらしをやりすごす」。そして、また遠くへ飛んでゆく。

 よく「ここで頑張れなければ、どこへ言っても無駄だ」と言う言葉を聞きますが、そんなこともないと思うんです。確かに、乗り越えなければならない壁というのは、人それぞれあるとは思いますが、サンゴロウの言うように、あらしをやり過ごして、元気が回復してきたら、また遠くへ飛べばいいと思うのです。

 確かに、困難を自分の力で克服していないと、また同じ困難がやってきたときに立ち向かえない、と言う考え方もあって、それはそれで一つの正しさなんですけど、火山の噴火や地震など、天変地異に立ち向かえる人はいないし、100キロの荷物を自力では持ち上げられないし、人間には、できないことっていうのはあると思います。

 また、わたしが五キロ持ち上げるのと、おすもうさんが五キロの荷物を持ち上げるのでは、同じ五キロでも同じではないように、人それぞれに困難の度合いも違います。

 でもそこで「同じ人間だ、同じ五キロだ、できるはずだ」って言われたら、困っちゃいますよね。
 ミリのいっぷう変わったところが受け入れられて、彼女が夢にむかってぐんぐんすすんでゆくラストは、さわやかな癒しに満ちています。

 もともと、ちょっとニヒルな黒ねこサンゴロウは、彼自身が孤独を愛し、海を愛し、旅を愛するねこ。このシリーズは、そんな、ちょっと「ふつう」から外れた人たち(ねこたち?)の物語なのです。

 字はほどよく大きく、ひらがなが多めで、漢字にはふりがながふってありますので、小学校低学年から。読み聞かせもおすすめですが、男の子の一人称なので、ぜひお父さんが読んであげてくださいね。

 ひとりで本を読むことが好きな、しずかな男の子、女の子におすすめのシリーズです。ケンとミリのふたりがそれぞれの道を見つけ、2巻からはまたサンゴロウの物語に戻ります。

 新しいサンゴロウの冒険が楽しみです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ミリの両親が別居していると言う設定です。それ以外には、あまりネガティブな要素はありません。ミリは不登校ですが、いじめなどの描写はありません。
 内向的で、悩みやすい子の背中を押す物語です。大人も癒されます。

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