【ルドルフといくねこくるねこ】教養のある猫、ルドルフのお話、その3。ルドルフ浅草に行く。【ルドルフとイッパイアッテナⅢ】【小学校中学年以上】

2023年1月25日

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ルドルフといくねこくるねこ ルドルフとイッパイアッテナⅢ 斉藤洋/作 杉浦範茂/絵 講談社

ある日、川のむこうからドラゴン兄弟がやってきました。おそろしい野良犬に兄のブラッドが襲われたのだ。イッパイアッテナはブラッドの敵討ちに加勢することになり、残ったテリーとルドルフは…… 

この本のイメージ 今度は電車に乗る☆☆☆☆☆ 成長☆☆☆☆☆ 自分とは☆☆☆☆☆

ルドルフといくねこくるねこ ルドルフとイッパイアッテナⅢ 斉藤洋/作 杉浦範茂/絵 講談社

<斉藤 洋>
日本のドイツ文学者、児童文学作家。亜細亜大学経営学部教授。作家として活動するときは斉藤 洋と表記する。代表作は「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」など。

<杉浦範茂>
1931年、愛知県生まれ。東京芸術大学美術学部卒。グラフィック・デザインと児童図書のイラストレーションで活躍。1979年、「ふるやのもり」(フレーベル館)で小学館絵画商。1983年、「まつげの海のひこうせん」(偕成社)で絵本にっぽん大賞、ボローニア国際児童図書展グラフィック賞を受賞。1985年には芸術船奨文部大臣新人賞を受賞。

ルドルフといくねこくるねこ ルドルフとイッパイアッテナⅢ 斉藤洋/作 杉浦範茂/絵 講談社

 字が読めて書ける、教養のある猫たちの物語、「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズの第3巻です。このシリーズは、「ルドルフが書いた」ことになっています。

 ルドルフがそこらへんの紙に書き溜めた文章を、斉藤先生の家にそっと置いていったものを、清書した、と言うつくり。猫の手で、ここまでの長編を書くとは。あなどれない猫よ、ルドルフ。

 今回のお話は……

 川向こうの市川で、足の長いブルドッグのようなすがたの、おそろしい野良犬が暴れているらしい。飼い猫のドラゴン兄弟は、兄のブラッドを病院送りしたその野良犬に敵討ちしたくて、デビルをやっつけたイッパイアッテナたちの噂を聞きつけてやってきたのだ。助太刀に行くイッパイアッテナ。そして、ねこ質として残る末っ子のテリー。

 ルドルフは、留守番としてテリーと残ることにしたけれど、そんな折、金物屋の飼い猫ブッチーの身の上にも重大な変化が起きていました。

 なんとなく挙動不審なブッチーが、どうしても浅草でハトを獲りたいと言うので、一緒に電車に乗って浅草へ。そこで、ルドルフは、なんと、なつかしいリエちゃんを見かけてしまい……

 ……と、いうのがあらすじ。

 今回のテーマは「自分とは何か」。
 深いです。

 「ルド。おまえは飼いねことかノラねことかいうことに、ずいぶんこだわっていたみたいだけど、おれは、そういうの、おかしいと思う。」
 「おかしいって?」
 「おまえは、ねこっていえば、飼いねこか、ノラねこか、そうでなければ、おまえみたいな、半分飼いねこで半分ノラねこの、どれかだと思っているだろ。」
 「うん。まあ、そうだけど。」
 「おれは、そういうふうな見方がまちがっていると思う。おれは、飼いねこでもないし、ノラねこでない。おれはねこだ。」
 「おれはねこだ……?」(引用p151)

 ブッチーとルドルフの会話ですが、これ、人間にとっても大切なことですよね。
 職業とか、肩書きとか、役割とか、そんなものがどんなに変わっても、自分は自分だ、と言うこと。

 わかっていてもそれがなかなか難しく、往々にして役割や肩書きが一人歩きしてしまうものです。でも、そんなのは関係なくて、「自分は自分、ねこはねこなのだ」とブッチーは気がついたというわけです。ブッチー、すごい。

 ブッチーの飼い主、金物屋さんは、店が苦しくなって銀行に閉店をすすめられ、店をたたんで親戚のいる茨城に引っ越したのでした。
 金物屋さんは、ブッチーも引越し先に連れてゆくつもりでしたが、引越し先がアパートであること、飼い主がわりと後先考えず「まあなんとかなるだろう」と行動するタイプであること、アパートでブッチーを飼えなくなったとき、引越し先に知り合い猫は一匹もいなく、いまの場所のほうが親しい猫たちがいることなどから、ブッチーは飼い主の手を逃れ、この土地でノラねことして生きて行く決意をしたのでした。

 この決断。ブッチーは、飼い主の性格をよく把握したうえで、自分で判断しています。そりゃ、自分の人生(ねこ生?)なんだから、当たり前といえば当たり前なのですが、なんとなく流されて飼い主の決断に従ってしまったりしない。もうここで、すでに心が飼い猫じゃありません。

 この、全体を見渡して、自分と相手にとっての最善を判断する。なんて、人間でもなかなか出来ない、難しいことじゃないでしょうか。

 今回、ルドルフは、ブッチーと一緒に、足の長いブルドッグと戦います。ルドルフもイッパイアッテナに頼るのではなく、ブッチーやデビルと協力しておそろしい敵と戦えるようになったのでした。
 ルドルフ、電車にも乗るし、着実に成長しています。

 それにしても、小学校中学年向けの児童小説に「自分とは何か」と言う哲学的なテーマを容赦なくぶっこんでくる斉藤先生、すごいです。子どもをまったく子ども扱いしていない。
 子どもたちがこの小説の意味を読み解けると、信頼しているんですね。確固たる信念を感じます。

 「自分とは何か」なんて、大人でもなかなか内省しないものです。しかし、小学生のときからそういうことを考えられる子どもは、いい大人になるでしょうねえ。子どもの頃に斉藤作品に出会えるのは、幸運です。

 こんなに、大人びた、深いことを考えるようになったルドルフですが、子ねこ時代のあどけない純粋さはそのまま。白狐魔丸もそうでしたが、斉藤作品の主人公は、どんなに困難を経験して成長しても、根っこのところが純粋でまっすぐで、それが魅力です。

 最後は、ちゃんとハッピーエンド。
 いろんなことを考えながら、成長してゆくねこたち。人間も負けちゃいられないなと思います。

 字は程よく大きく、ひらがなが多め。難しい漢字には振り仮名が振ってありますので、小学校中学年から。ルドルフの一人称で話が進むので、読み聞かせもおすすめです。

 ルドルフの成長を順に読んだほうがわかりやすいので、ぜひ「ルドルフとイッパイアッテナ」から。その次は「ルドルフともだちひとりだち」です。

 このシリーズ、まだまだ続くらしいので、続きを読むのが楽しみです。

※この本には電子書籍があります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。ルドルフが純粋でまっすぐなので、読んでいると癒されます。それだけでなく、ブッチーの成長など、哲学的なテーマもあり、HSPHSCのほうが、多くのメッセージを受け取れるでしょう。
 ラストも、万事まるっとハッピーエンドで、心がほっこりします。

 子どもから大人まで、全年齢におすすめです。
 読後は、雷おこしか、芋ようかんでお茶なんていかがでしょう。

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