【リンバロストの乙女】「そばかすの少年」の続編。少女小説の名作を「赤毛のアン」の村岡花子の翻訳で。【中学生以上】

2024年3月17日

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リンバロストの乙女 上下   ジーン・ポーター/作 村岡花子/訳 河出文庫

リンバロストの森に母と二人暮らしのエルノラ。賢いエルノラは、母が快く思わないなか、虫の収集で学費を稼ぎ、町の学校に通うことを決意しますが……  村岡花子がこよなく愛した少女小説。「そばかすの少年」の続編です。

この本のイメージ 大自然☆☆☆☆☆ 成長☆☆☆☆☆ 恋☆☆☆☆☆

リンバロストの乙女 上下   ジーン・ポーター/作 村岡花子/訳 河出文庫

<ジーン・ポーター>
ジーン・ストラトン・ポーター(Gene Stratton-Porter、1863年8月17日~1924年12月6日)は、アメリカ合衆国インディアナ州ウォバッシュ郡出身の作家、自然写真家、博物学者、映画プロデューサー。日本では小説『そばかすの少年』『リンバロストの乙女』の作者として知られている。

<村岡花子>
村岡 花子(むらおか はなこ、1893年〈明治26年〉6月21日~1968年〈昭和43年〉10月25日)は、日本の翻訳家・児童文学者。児童文学の翻訳で知られ、モンゴメリの著作の多くと、エレナ・ポーター、オルコットなどの翻訳を手がけた。基督教文筆家協会(現日本クリスチャン・ペンクラブ)初代会長(在任、1952年〈昭和27年〉6月~1958年〈昭和33年〉10月)。

 「そばかすの少年」の続編というか、姉妹編とも言うべき少女小説です。原書初版は1909年。日本初版は1940年(清水暉吉訳)。村岡花子訳の初版は1957年です。

 この物語では、蝶が大きな役割を持ち、要所要所で印象的な場面を彩っています。

 作者のジーン・ポーターが博物学者だったため、森の自然の描写が深く、美しい森の植物や、鳥や、とくに蝶のすがたがありありと表現されているのです。

 また、「そばかすの少年」の登場人物「鳥のおばさん」や、エンゼル、そばかすも登場し、重要な役割を果たします。

 ストーリーは……

 賢く美しい少女エルノラは、リンバロストの森の端で、母と二人暮らし。母は、夫を事故で失ってから娘に心を閉ざしていました。しかも、高騰する固定資産税を払うために森を開墾する男手もないふたりは、貧しい生活を余儀なくされていました。

 偏屈な母と貧しい生活を続けるエルノラは、町の学校に行くことを決意します。

 しかし、母に学校に行く許可をとったのはいいものの、エルノラは学費がかかることを知りませんでした。入学当日に、お金がなくて退学になるかもしれないと知ったエルノラ。そんな彼女を助けてくれたのが、「鳥のおばさん」ことリンバロストの博物学者です。

 友達のいないエルノラは、森の生き物を友達とし、蝶や蛾を愛し、そのなきがらを大切に保存していました。それは、世界の収集家にとって、とても価値あるものだったのです。
「鳥のおばさん」は、エルノラからそれを買い取ることを約束、そのお金で彼女は学費を出せることになりました。

 学校に通えるようになったエルノラは、彼女の賢さと才能を開花させます。母親との確執を乗り越え、優秀な成績で卒業し、大学を目指し…そして…

 と、言うのがあらすじ。

 前半は、エルノラが母との確執を乗り越える成長物語、後半はエルノラの恋の物語です。後半にはエルノラの応援者として「そばかすの少年」でおなじみのエンゼルやそばかすも登場します。

 決して名前が出ない「鳥のおばさん」ことリンバロストの博物学教授は、おそらく、作者ジーン・ポーターの分身ではないでしょうか。働く女性の先達者のような彼女ですが、情に篤く、世話好きで、陽気で、とにかくかっこいい。
 彼女が、優しく、明るく、エルノラを導きます。

 近所のウェスレイさん夫婦や、孤児のビリー、クラスメイトたちなど、エルノラの理解者がすこしずつ増えてゆき、孤独だったエルノラの人生は明るくひらけてゆきます。それと同時に、彼女の数学の能力やバイオリンなど、数々の才能も花開きます。

 後半は、美しく成長したエルノラと、リンバロストに静養に来た学者のフィリップの物語。
 フィリップとの恋愛物語と激動の展開、恋のライバルエディスが起こしたラストの奇跡は、なつかしの昔の少女漫画のようなドラマチックさです。昔の上原きみこ先生の漫画のような雰囲気。(「ロリイの青春」ご存知ですか? 馬好きなら一読の価値ありの、馬のモノローグがあったり、馬の目にびしばしのまつげがあったりする乗馬漫画です……若い人にはわかりませんよね……)

 非常にオーソドックスで、古めかしい少女小説でありながら、博物学に人生を賭ける「鳥のおばさん」や、深い母子の確執、プライドの高いライバルヒロインの劇的な心の成長など、女性の成長と自己実現の要素もあり、今でも色あせない魅力を感じさせます。

 読みやすい文章ですが、漢字にほとんど振り仮名がないので、中学生から。
 村岡花子の文章が上品で美しく、思春期の少女の心のひだと、リンバロストの美しい自然を細やかに伝えてくれています。

 いにしえの文学少女が愛した少女小説を、この機会に、ぜひ。
 まずは「そばかすの少年」からお読みください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。古き良き少女漫画が好きだった方にはとくにおすすめです。上原きみこ先生全盛期時代の少女漫画の雰囲気があります。
 昔の文学少女がこよなく愛した少女小説です。

 少年が主人公の少女漫画がお好きな方は「そばかすの少年」、正統派少女漫画がお好きな方は「リンバロストの乙女」がおすすめです。(わたしは「そばかすの少年」のほうが好きです)

 読後は、森の香りのするハーブティーで、素朴なティータイムを。

 

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