【ぐるんぱのようちえん】50年以上愛されるロングセラー。ともだちのほしいゾウのぐるんぱの物語【4歳 5歳 6歳】

2024年3月17日

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ぐるんぱのようちえん 西内ミナミ/作 堀内誠一/絵 福音館書店

ぐるんぱはとってもおおきな ぞう。 いつもひとりで くらしていたのです。ひとりぼっちのぐるんぱが、いろんな人のもとで働いて、やがて楽しい幼稚園をつくるまでのお話です。

ぐるんぱのようちえん 西内ミナミ/作 堀内誠一/絵 福音館書店

<西内ミナミ>
1938年9月24日 京都市生まれ、生後、岡山県宇野港外の直島に両親と移り住む。以後宮城県、秋田県の鉱山などへ父親の転勤に伴って移り、成長期を海山で過ごす。
15歳で上京、都立豊多摩高等学校、東京女子大学へ進学。クラブ活動で児童文学の創作をめざす。大学在学中に「日本児童文学」に旧姓の伊藤ミナミ名で「けちんぼケーチン君」が掲載される。大学卒業とともに(株)博報堂にコピーライターとして入社。1964年退社。(株)アド・センターに転職。1965年アートディレクター・堀内誠一氏の薦めにより「こどものとも」(福音館書店)5月号に「ぐるんぱのようちえん」を執筆(絵:堀内誠一)。翌年同書が傑作集として出版され、以来ロングセラー絵本となる。1970年フリーとなり児童書の創作に専念。同時に家庭・地域文庫活動をはじめ、現在に至るまで子どもの読書推進活動に携わっている。(公式HPより)

<堀内誠一>
1932年東京生まれ。グラフィックデザイナー、絵本作家。主な絵本作品に「くろうまブランキー」「くるまはいくつ」「たろうのおでかけ」「ぐるんぱのようちえん」「こすずめのぼうけん」「ちのはなし」(以上福音館書店)、「おひさまがいっぱい」(童心社)、「かにこちゃん」「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)など多数。1987年没。

「虹いろ図書館のへびおとこ」にも登場した「ぐるんぱのようちえん」。初版は1965年。
50年以上愛されるロングセラーです。

お話は……

 ひとりぼっちの大きなゾウ、ぐるんぱは、友達もいなくてさみしくて泣いていました。ほかのゾウたちは、ぐるんぱを綺麗に洗って、町へ働きに出します。ところが大きなぐるんぱは、どこで働いても失敗ばかり。
 ビスケットやさん、食器工場、靴屋さん、ピアノ工場、自動車工場……。ぐるんぱは、一生懸命に働きますが、つくるものが大きすぎるのです。

 ところが、12人の子供がいるお母さんと出会い、ぐるんぱはいままでつくってきたものを使って子どもたちの世話をし、幼稚園を作ります。ぐるんぱは大きなピアノを弾いて歌を歌い、ビスケットを子どもたちにあげ、大きな靴は遊び場にし、大きなお皿はプールになりました。

 みんながしあわせになって、ぐるんぱもしあわせ。めでたしめでたしです。

 ……と、いうのがあらすじ。

 この絵本が出版された頃、まだまだ日本には戦争の影響が残っていました。
 孤児も多く、職を転々とする人も多かった時代です。

 冒頭でひとりぼっちのゾウのぐるんぱが、さみしくて泣いているところからはじまります。この世界にゾウはぐるんぱだけなのかな?と思うと、そうではなく、たくさんのゾウたちがいて、ぐるんぱを心配して身体をきれいに洗ってくれて、働きに出してくれます。こんなに心配してくれるゾウたちがいるのに、どうしてさみしいのでしょう?

 だから、ぐるんぱの「ひとりぼっちでさみしい」は、たぶん、同じゾウの仲間がいないからじゃないんですよね。

 町に働きに出たぐるんぱは、一生懸命働きますが、どの職場で何をつくっても、大きすぎて失敗ばかり。すぐにクビになってしまいます。
 この当時「働く」と言えば「何かをつくる」こと、と言うのも時代を表しています。
 お菓子、食器、靴、ピアノ、自動車……戦争が終わり、ようやく文化的な生活ができるようになった日本人の暮らしを豊かにしてくれるようなものばかりです。

 職場で大きなぐるんぱがつくるものは、全部大きすぎて彼はしかられてばかりでした。でも、12人の子どもたちを育てる子だくさんのお母さんと出会い、子守りを頼まれて、これらの失敗作が全部役立ったのです。

 つまり、その時は失敗したと思っていた、過去の仕事もちゃんと経験となって生きているんだということ。
 まったく関係のない、無駄な経験をしてきたと思われていた数々のできごとが、思いも寄らぬことで、パズルのピースのようにぴたりと合わさる時が来るのです。

 さいごのさいごに、いままでの、うまくいかなかった仕事で経験したことが全部生きてきて、素敵な幼稚園を作れるようになったというのが、この絵本のすばらしいところです。

 さて、この「子沢山のお母さん」の12人の子どもたち、はたしてこの子たちは、お母さんの実の子どもだったのでしょうか。
 もしかしたら、この子どもたちも孤児だったかもしれません。12人は多すぎるし、挿絵の子どもたちはそんなに歳の差が感じられません。
 そこらへんは、ぐるんぱが「なぜさみしいのか」同様、ぼかされています。

 けれども、もし、ぐるんぱが孤児だったとしたら、そして12人の子どもたちが孤児だったとしたら、孤児のぐるんぱが、孤児たちを幼稚園を作って助けることができたとしたら、それは最高に幸せなことかもしれません。

 子どものときは、純粋に楽しんで読むことができ、大人になると別の物語が見えてくる、不思議な絵本です。
 長く愛される童話には力があります。外に出られないこの季節、家でたくさん本を読みましょう。読み聞かせにもおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。親子で一緒に読むのにおすすめの絵本です。いろんな仕事場で失敗したと思われていたぐるんぱの経験が、ラストで一気にひっくり返り、ぐるんぱだけのかけがえのない体験になります。

 ぜひ読み聞かせをし、読後は一緒におしゃべりしてみてください。それぞれのシーンがいろんな解釈ができる名作です。

 

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