【図書館からの冒険】古い図書館には別の世界への扉があって……わくわくの冒険ファンタジー【小学校高学年以上】

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図書館からの冒険 岡田淳/作・絵 偕成社

渉は小学六年生。ゴールデンウィークにおじいさんの弟、敬二郎大おじさんのところに預けられることになった。敬一郎おじさんの「斉藤書店」の隣には「双葉館」と言う閉鎖された図書館がある。渉は、図書館が取り壊しになる前にそこで一晩過ごしてみたくなり……

この本のイメージ 異世界ファンタジー☆☆☆☆☆ 環境問題☆☆☆ ハッピーエンド☆☆☆☆☆

図書館からの冒険 岡田淳/作・絵 偕成社

<岡田淳>
日本の児童文学作家。著書『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞を、『こそあどの森の物語』で野間児童文芸賞を受賞し国際アンデルセン賞の国際児童図書評議会(IBBY) オナーリストに選ばれた。翻訳家、挿絵・イラスト作家、エッセイストでもある。

図書館からの冒険 岡田淳/作・絵 偕成社

 岡田淳先生のファンタジー、「図書館からの冒険」です。初版は2019年。岡田先生は美大卒なので、挿絵は御自身で描かれています。キャラクターの表情とか、ポーズとかが生き生きしてリアリティがあるので、これはそれぞれ、モデルがいる気がします。

 岡田先生は小学校教師をされていた期間が長く、そのせいか、小学校の校内から異世界へ迷い込む話が多いのです。
 確かに、わたしの子どもの頃も、どの学校にもたいてい「七不思議」みたいな怪談があって、異世界に入っていけそうな不思議なドアとか、何に使っているのかわからない倉庫とか、夕方になるとちょっぴり怖い人体解剖模型とかがありました。

 学校って、子どもにとっては、ミステリーな場所だったと思います。

 この物語の主人公、渉(わたる)は小学六年生。両親は海外から雑貨を輸入して販売する仕事をしているため、ゴールデンウィークは買い付けに出かけてしまい、その間、祖父の弟の敬二郎おじさんの営む「斉藤書店」に預けられました。

 敬二郎おじさんは、昔から面白い話を聞かせてくれる人なので、渉はだいすきなのです。
 おじさんの得意のホラ話のなかに、書店の隣にある小学校の、双葉館という図書館から不思議な世界に入り込むシリーズがあり、渉はその話がとりわけ好きでした。

 しかし、小学校が廃校になり、双葉館が取り壊しになると聞き、最後にしのびこんでみたいと考えます。閉鎖された図書館で、寝袋で一晩寝るだけのつもりだった渉ですが、そこで見知らぬ子どもに出会い、不思議な世界へと入り込むのでした。

 そこは、敬二郎おじさんから聞いていたシバノザキ島。けれど、地震と嵐で島は荒れ果てていて、おそろしい怪物まで襲ってくるのです……

 ……と、いうのがあらすじ。

 ゴールデンウィークのあいだの出来事なので、たった6日間。けれども、次々と事件が起きるので、密度が濃い物語です。
 もともとおじさんに話を聞いていたからと言うのもあるのですが、渉くんがとても順応力がある子なので、戸惑ったり混乱したりして行動や判断が鈍ることがありません。しっかりした子だなあ。

 地震や嵐の後、ありあわせのもので生活する人たちの描写がリアルです。岡田先生は兵庫の方なので、ご自身の体験から書かれた部分もあると思います。

 異世界ものとしての単純な面白さもあるのですが、大人が読むとずしんと来る問題も背景に語られていて、深いお話です。シバノザキ島がほんとうはどうすべきだったのか、同じような事件に自分が巻き込まれてしまったときに、ちゃんと判断が出来るのか……など、考えさせられます。

 岡田先生の物語には、時々そういう「問いかけ」があり、「自分だったらどうするか」「自分だったらどう判断すべきか」と、読後に考える時間が必要になります。
 しかもそれは、そんなに簡単には答えが出ない問題ばかり……つまりは、手持ちの知識ではすぐに答えを出せないので、自分で様々なことを調べたり学んだりしてから考える必要がある問題なのです。さすがは小学校の先生です。

 家にいて、ゆっくり時間がとれるときは、そんな読書がおすすめです。

 ストーリーとしては、とてもわかりやすい正統派の冒険小説ですが、楽しく読んだ後にも、親子で様々なことを話し合うことができるファンタジーです。
 都会の子が読めば都会の子の、地方の子が読めば地方の子なりの、それぞれが違った感想を持つでしょう。そして、大人が読めば、まったく違う感想を抱くかもしれません。

 純粋な娯楽として「難しいテーマ」を素通りして楽しむこともできますし、真正面から受け止めて深く考えることもできます。様々な読み方ができる、正統派の児童文学です。

 非常にボリュームのある物語です。一応「小学校高学年以上」となっていますが、ほとんどの漢字に振り仮名がふってあるので、かしこい子なら中学年から。がんばれそうならぜひ挑戦してほしい。もちろん、大人が読んでも楽しめます。

 シバノザキ島のキャラクターがどこかなつかしい雰囲気で、そのうえ個性的で楽しいので、わくわくした気持ちで最後まで読めます。ハッピーエンドで、ラストもさわやかです。これは続編があったら読みたいですね。

 今年の夏は、本のなかで冒険を楽しみましょう。きっと新しい発見があります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。安心してお楽しみいただけます。
 また、深いテーマもひそんでいるので、HSPやHSCのほうが多くのメッセージを受け取れると思います。親子で読んで話し合うのもおすすめです。

 ただ、難しさや深刻さはなく、むしろ、ノスタルジックな雰囲気のするファンタジーです。やさしい世界観で、悪人は登場しません。考えさせられるところはありますが、全体的にほのぼのとした空気に包まれており、読後はあたたかい気持ちになれます。大丈夫です、おすすめです。

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