【ガラスの犬】「オズの魔法使い」の作者ボームの短編集。ゆかいで楽しいファンタジー【小学校中学年以上】

2024年3月17日

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ガラスの犬 ボーム童話集 フランク・ボーム/作 津森優子/訳 坂口友佳子/絵 岩波少年文庫

「オズの魔法使い」で知られるフランク・ボームは、オズシリーズ以外にも楽しい作品を数多く書いています。これは、ボームの短編が八篇収録された、明るくゆかいなファンタジー短編集です。

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ ユーモア☆☆☆☆☆ 教訓☆☆☆

ガラスの犬 ボーム童話集 フランク・ボーム/作 津森優子/訳 坂口友佳子/絵 岩波少年文庫

<フランク・ボーム>
ライマン・フランク・ボーム(Lyman Frank Baum、1856年5月15日~1919年5月6日)は、アメリカ合衆国の児童文学作家、ファンタジー作家。60編以上の童話、児童文学作品を執筆しており、特に「オズの魔法使い」をはじめとする「オズ」シリーズの作者として有名。戯曲家、俳優、自主映画制作者でもある。

 「オズの魔法使い」で有名な、フランク・ボームの短編集。原題はAmerican Fairy Tales.原書初版は1901年。日本語版初版は2021年6月15日。出たばかりです。

 この短編集は、ちょうど、ボームが「オズの魔法使い」を出版した翌年に出版されており、ボームの人生でいちばんいい時期に書かれたと言われています。

 収録されているのは、

 ・屋根裏の盗賊
 ・ガラスの犬
 ・クォック王妃
 ・クマを持った女の子
 ・妖精ポポポと鳥たちの帽子
 ・魔法のあめ玉
 ・時をつかまえた少年
 ・ふしぎなポンプ

 の八編です。

 ボームはもともと、子どもたちのために説教臭いお話ではなく、純粋に楽しめるファンタジーを書きたいと願い、「オズの魔法使い」を書いたといわれています。

 けれど、この本にはちょっぴり教訓が含まれていて、それぞれのお話のラストには「このおはなしの教訓は……」と短いコメントが書かれているのです。

 でも、これがまったく説教臭くなくて、このコメントがいい感じの「オチ」になっており、さいごまで読むとクスっとしてしまいます。どんなときも物語を楽しくしようとするボームらしい「教訓」なのです。

 この短編集を執筆していた当時、ボームは「オズの魔法使い」で大成功して、とてもいい状態だったらしいので、物語も明るくてゆかいなものばかり。

 わたしが好きなのは、「クマを持った女の子」。教訓としても大切です。「ガラスの犬」はお話が始まったときには考えられない方向に転がってゆき、意外なラストを迎えます。まさかこんな話になろうとは。

 ラストに「教訓」なんて書いてありますが、どの話も、ありきたりの予定調和的なお話ではなく、「なんでこうなるの」と言う意外性の連続。それなのに、最後はちゃんとおさまるところにおさまっているのです。これは天才的。

 どの話も面白く、笑いながら読めるメルヘンファンタジーです。ひねりが効いている楽しいお話が読みたいなら、迷わずこれ。
 また、人とお金の関係についてそれとなく考えさせてくれせるお話が多く、「お金との健全な付き合い方」を教えてくれます。
 こういうお話を小さい子どもの頃に読んでおくと、大人になったときの様々なお金のトラブルへの「予防接種」になると思います。

 最後のお話「ふしぎなポンプ」に登場する甲虫は、原作ではただbeetle (甲虫)と書いてあるだけだそうです。翻訳では「コガネムシ」となっていますが、死にそうなコガネムシを二度も助けたおばあさんは、本当にやさしいですね。こんな慈悲深い人はもっといい思いをしてもいいと思います。

 わたしなら、コガネムシだけは絶対に助けたりしません。見つけ次第、駆逐します。(でも、わたしよりコガネムシのほうが圧倒的に強い……悔しい)

 だってねえ、コガネムシって中世で、あまりにも強すぎてローマ教皇から破門されたんですよ?

 虫害がどうにもひどくて、どうしようもなくなった農民たちが教会に頼り、教会がコガネムシを破門したと言うわけです。この時代は、「すべての生物は神様が創った」と信じられていたので、教会から破門されれば命が消えるだろうと農民たちは思ってのことでした。
 当然ながら、コガネムシは死にませんでした。(ちなみにバッタも破門されています)

 わたしは、いつもこの季節にコガネムシを見るたびに思うのです。「奴らは……破門されている……」
 邪悪なコガネムシよ、わたしはおまえたちだけは許すことができない……ッ!(狭量)

 そんなわけで、わたしはコガネムシに助けてもらうことができない運命です。むしろ、さんざん駆除して嫌われている。でもいいんです。コガネムシだけは助けたくない(頑固)。まだバッタのほうが許せる。緊急時の食料にもなるし。正義の味方だし。

 あなたはどんな虫なら助けますか?

 明るく楽しく、ゆかいなファンタジーです。読後感もすごくよくて、もやもやした気分のときはぜひ。簡単な漢字以外は振り仮名がふってあるので、小学校中学年から。短編集なので、読み聞かせにもおすすめです。

 外出できないとき、ちょっぴり心が曇り気味のときにおすすめの、ナンセンスファンタジーです。
 ストレスがたまり気味のときは、大人の癒し本としてもおすすめですよ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。明るくて、ゆかいで楽しいメルヘンファンタジーです。面白くて、ちょっとひねりが効いていて「おいおい、そう来たか」と楽しむことができます。

 読後はカラフルな色のかわいいお菓子や、キンキンに冷やしたソーダ水などでリラックスタイム。透き通っていてしゅわっとしたクリームソーダみたいな、童話集です。

 

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