【かいじゅうたちのいるところ】お仕置きされてもへこたれない、男の子の心の大冒険。神宮輝夫の名訳のロングセラー絵本【4歳 5歳 6歳】

2024年3月17日

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かいじゅうたちのいるところ モーリス・センダック/作 神宮輝夫/訳 冨山房

マックスはいたずらっ子。おおかみのぬいぐるみを着て大暴れ。「このかいじゅう!」おかあさんは怒って、夕食抜きで寝室に放り込んだ。ところが、部屋に、にょきりにょきりと木が生えて……

この本のイメージ 子どもの想像力☆☆☆☆☆ ちょっぴり反省☆☆☆☆☆ 母の愛☆☆☆☆☆

かいじゅうたちのいるところ モーリス・センダック/作 神宮輝夫/訳 冨山房

<モーリス・センダック>
モーリス・センダック(Maurice Sendak, 1928年6月10日 ~ 2012年5月8日)は、アメリカ合衆国の絵本作家。世界中で約2000万部売れた「かいじゅうたちのいるところ」をはじめ、80冊を超える作品を発表した。アニメーション映画や舞台美術も手がけた。

<神宮輝夫>
神宮 輝夫(じんぐう てるお、1932年2月26日~2021年8月4日)は、日本の児童文学翻訳、研究家。青山学院大学名誉教授。児童文学の翻訳を精力的に続け、アーサー・ランサム全集(ランサム・サーガ)のほか、リチャード・アダムズ「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」、モーリス・センダック「かいじゅうたちのいるところ」、ジョン・ロウ・タウンゼンド「アーノルドのはげしい夏」、ロイド・アリグザンダー「プリデイン物語」など、戦後の代表的な作品の多くを手がけた。ほか、自身による創作、評論等も多数。

 先日、亡くなられた神宮輝夫先生の名訳で知られるロングセラー絵本です。
 原題はWhere the Wild Things Are. 原書初版は1963年。日本語版は、1966年に「いるいる おばけが すんでいる」というタイトルでウエザヒル出版から最初に翻訳、その後、神宮輝夫先生の新訳が1975年、冨山房より出版されました。

 Wild Things を「かいじゅう」と訳したのが神宮先生で、その結果、約100万部のベストセラー、いまでも愛され続けています。

 この「怪獣」と言う言葉、そもそもの起源は古いものの、1960年代~1970年代は、空前の「怪獣」ブームで、ゴジラからはじまって、ウルトラマンなど、「怪獣」の登場する子供向け番組が目白押しの時代でした。

 男の子なら必ず「怪獣図鑑」や「怪人図鑑」を持っていたし、ビニール製の怪獣人形遊びも大流行しました。「怪獣」は、男の子の最も身近な存在と言ってもよかったのです。

 そんな時代ですから、「かいじゅうたちのいるところって、どんなところだろう?」と、わくわくした気持ちにさせられたのでした。

 このお話は、「おしいれのぼうけん」とも共通点があります。こどもがいたずらをして、お仕置きで部屋に閉じ込められてしまう。ところが、男の子の想像力は無限大で、閉じ込められてもメソメソせず、心は冒険の旅に出てゆく。

 冒険の先で出会った「かいじゅう」などの悪者は、大人たちの化身です。普段、自分を𠮟ってばかりの怖い怖い大人たちを、子どもの力で手なづけたり、やっつけたりします。

 でも、最後はちょっぴりさみしくなって、家に帰ってくる。そこでは大人があたたかく迎えてくれる。

 この絵本では、いたずらしたマックスを夕飯抜きで寝室に閉じ込めたはずのお母さんが、ちゃんとほかほかの晩御飯を用意してくれています。

 たぶん、この絵本は「大人の心」で読むと、「なんだ、この可愛げのないわがままな子どもは! まったく反省していないじゃないか」と思うと思います。

 でも、子どもって、本来はこういうものですよね。空想の翼はどこまでも広がっているし、心はいつも冒険の旅に出ている。
 むしろ、親のいいつけをよく聞いていたずらもせず、𠮟られたらしょぼんと反省してお部屋で何時間も大人しくしているような子こそ、この絵本が必要なのかもしれません。

 だって、マックスはちゃんと家に帰ってくるし、お母さんのありがたみも感じているからです。

 だから、この絵本、子どもの心を思い出しながら読むと、大人でもとたんにわくわくしてくるのです。
 ああそうだった、子どもって、部屋から一歩も出られなくても、雨の日でも、雪の日でも、心は遠く羽ばたいて、いろんな世界に行っていたものだ……

 子どもの心って、いろんなものがいっぺんに放り込まれているおもちゃ箱みたいです。とりとめがなくて、整理されていない。
 だから、大人の心で見ると「なんでこうなるの」の連続なのですが、子どもの心ではつじつまがあっているのです。

 たぶんそれは、考えていることが「面白いことをしたい」とか「お母さん大好き」とか、ものすごく単純で純粋だからでしょう。

 絵本や児童文学の中には、「長くつ下のピッピ」やこの「かいじゅうたちのいるところ」のように、大人になると「こんな子どもがいると困るなあ」と思ってしまうようなお話があります。けれど、いつか大人になるからこそ、子どもの時間は大切だし必要なのです。

 ちょっとおとなしめの、考え込みがちな男の子におすすめの絵本です。マックスのひたすらたくましい、のびのびとした様子にクスっとさせられます。かいじゅうたちも、どこかとぼけていてユーモラス。

 子ども心を思い出すために大人が読む和み本としても、おすすめです。マックスの表情が、どのページも、とにかく幼い男の子そのもので、いい感じに生意気でふてぶてしいのです。子ども時代の、不思議な万能感を思い出して、なつかしく感じると思います。

 小さなお子様から大人まで。想像する力を目覚めさせてくれる絵本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 とても良い絵本なのですが、お子さまによっては、怪獣のデザインが怖いと思う子がいるかもしれません。また、年齢によって「怖い」と感じる時期と「かわいい」と感じる時期があるようなので、お確かめください。

 内容については、かなり深いのでHSPやHSCのほうが多くのメッセージを受け取れると思います。
 内向的で、遠慮がちな、大人しいお子さまにはおすすめです。生命力のあふれる絵本です。

 

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