【モグラくんとセミのこくん】土の中で、ほのぼのライフ? 巣篭もりの夏におすすめ、もぐらとセミの子の友情物語絵本【4歳 5歳 6歳】
もぐらくんは土の中で、かぼちゃのおかしとたんぽぽのお茶を飲んで楽しく暮らしていました。そんなとき、迷子のセミの子と知り合って、ふたりは一緒に暮らすことになりました……
この本のイメージ ハートフル☆☆☆☆☆ 異種族交流☆☆☆☆☆ ハッピーエンド☆☆☆☆☆
モグラくんとセミのこくん ふくざわ ゆみこ/作 福音館書店
<ふくざわゆみこ>
東京生まれ。絵本作家。主な絵本に「ぎょうれつのできるパンやさん」「ぎょうれつのできるチョコレートやさん」他、ぎょうれつのできるおいしいえほんシリーズ(教育画劇)、「おおきなクマさんとちいさなヤマネくん」「ブルくんとかなちゃん」シリーズ(福音館書店)など多数。
この夏にぴったりの絵本です。
モグラくんは、土の中暮らし。土の中のおうちで、かぼちゃのお菓子を作ったり、たんぽぽのお茶を飲んだりして楽しく暮らしています。
そんなある日、土を掘っていたら、迷子のセミの子に出会いました。
ふたりは、モグラくんの家で一緒に暮らすことにします。
春も夏も秋も冬も、モグラくんとセミの子くんは、土の中のおうちで幸せです。
ところが、ついにセミの子くんは、セミになるときが近づいてきました。モグラくんが大好きなセミの子くんは、ずっと土の中にいようとしますが、倒れてしまいます。
土の中にいられなくなったセミの子くんを、モグラくんは抱え上げて、地上に出してあげます。そして……
と、いうのがあらすじ。
重大なネタバレをしてしまいますがハッピーエンドです。
出だしを読んだとき、「こ、これは哀しい話なのでは……!」とおびえたのですが、そうではありませんでした。だいじょうぶ。
セミは、土の中で幼虫として何年も生きますが、成虫になってセミとして生きるのは、ほんの数週間です。(以前は一週間と思われていましたが、今では一ヶ月くらいは生きているとわかっています)
ずっと仲良くしていた親友が、はかなく死んでしまう哀しいお話……ではなく、
立場の違う相手を思いやったり、違う生き方を尊重したりする、あたたかい気持ちや思いやりがしみじみと伝わるほんわかしたストーリーです。
また、モグラくんとセミの子くんが、暗くてじめじめしていると思われがちな土の中で、一緒にいろんな遊びをして、楽しく、幸せに暮らしているのもいいのです。土の中にいるから、不幸せ、なんてこともない。
地上には地上の幸せがあり、地下には地下の幸せがあるのです。
このセミは男の子なのか女の子なのかはわからないのですが、モグラくんのおうちのある木に産卵すれば、もぐらくんはセミくんの子どもにまた会えますね。そんなことも少し考えました。
もちろん、この物語の「外側」には、いつか死んでしまうセミ君がいます。しかし、それをあえて描かないことで、互いを思いやったり、ちがう価値観を尊重する大切さが見えてきます。
また、モグラくんが土の中のじめじめした暗いおうちで、ひとりぼっちでさみしく暮らしていたところにセミくんが現れて、楽しく暮らすようになりました、とかでないのもいい。
モグラくんは一人でも楽しくて幸せで、そこにセミの子くんが来たのです。一人でも幸せだけど、ふたりだともっと幸せで、だからこそ、セミの子くんのために、モグラくんはセミの子くんを地上に運んだのでした。そういうところが、この物語のいいところ。
ふくざわ先生の絵が、あたたかみがあって、かわいらしく、モグラくんだけでなく、セミの子くんも愛らしくて表情が豊かです。
モグラくんの土の中のおうちも、小さなかまどや切り株のテーブルなど、狭いけどなかなか素敵なんです。お茶やおやつもおいしそう。時々あらわれる森の動物たちも、みんなかわいい。
字はすべてひらがなとカタカナで、読みやすく、読み聞かせにもおすすめです。
友情や思いやり、友達のためにがんばること、など、たくさんの素敵なテーマが詰まっている、夏にぴったりの絵本です。
とくに、おうちから出られない、今年の夏にはおすすめ。
家の中には楽しいことがたくさんあるし、外に出られなくても友情を育むことが出来ます。そして、困っている友達に手を差し伸べることも。
性別も関係ない絵本ですので、男の子にも。女の子にも。
この夏の絵本にぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
哀しいお話ではありません。ハートフルストーリーです。ふくざわ先生の絵がとても可愛らしく、大人の和み絵本としてもおすすめです。
土の中で楽しく遊ぶ本ですので、巣篭もり期間にぴったりでもあります。
読後は、タンポポコーヒーが飲みたくなると思うので、ご用意ください。おやつはかぼちゃのお菓子かスイートポテトで。
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