【海辺の町の怪事件】ビクトリア時代の少女ステラの不思議な大冒険!ファンタジー三部作開幕【ステラ・モンゴメリーの冒険】【小学校高学年以上】
両親がいないステラは、三人のおばさんに育てられていました。そんなステラは、おばさんたちが静養のために滞在している高級ホテルで、不思議な出来事に遭遇します。見知らぬ老人が死ぬ前にステラに預けた小さなびん。そして、それを追う、不気味な男……ステラの冒険が始まる!
この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ ビクトリア時代☆☆☆☆☆ 冒険のはじまり☆☆☆☆☆
海辺の町の怪事件 ステラ・モンゴメリーの冒険 1 ジュディス・ロッセル/作 日当陽子/訳 評論社
<ジュディス・ロッセル>
オーストラリア在住の作家、イラストレーター。現在までに13冊の物語を発表。さし絵、絵本の仕事は80冊を超える。オーストラリアのメルボルンで、猫とともに暮らしている。日本では「ルビーとレナードのひ・み・つ」「名探偵スティルトン ぬすまれた財宝をさがせ!」などの絵本が紹介されている。
<日当陽子>
子どもたちが読みたいと思う本を紹介したくて翻訳家に。おもな訳書に『ハリーとしわくちゃ団』、『6この点―点字を発明したルイ・ブライユのおはなし―』「リトル・プリンセス」シリーズ、「魔女の本棚」シリーズなど。
初読です。
原題はWithering-by-Sea;A Stella Montgomery Intrigue One.オーストラリアでの初版は2014年。日本語版初版は2018年です。
ウィザリング・バイ・シーは、ステラの滞在している「マジェスティック・ホテル」のある海辺の町の名前です。
お話は……
時はビクトリア朝時代。
海辺の高級リゾートホテルで、三人のおばさんと一緒に暮らすステラには両親はいません。
老人の身体に良いといわれる温泉があるホテルで、三人の厳しいおばさんたちにお勉強や行儀作法など「レディのための教育」をされつつ暮らすステラは、一人で古い地図帳を読むくらいしか楽しみがありませんでした。
ところがある日、このホテルで怪事件が起こり、見ず知らずの老紳士から、死の間際に不思議な小瓶を預かります。
そのときから、ステラは大事件に巻き込まれてしまうのです……
と言うのがあらすじ。
タイトルだけではジャンルがわからなかったのですが、これはファンタジーです。
不思議な老紳士が死ぬ前にステラに預けた小瓶をめぐって、彼女は「教授」と呼ばれる奇怪な男に狙われるようになります。
大人はまったく頼りにならず、ステラは自分自身の知恵と勇気で潜り抜けてゆく。
そのなかで親しくなる子どもたち、そして、唯一の大人の味方、猫使いのカペッリ氏など、仲間を増やしつつ、大冒険を繰り広げるお話です。
このおはなし、驚くほど大人が頼りになりません。大人で協力してくれるのはカペッリ氏くらいなのですが、それでもスポット的に助けてくれる程度です。一番怖いとき、一番大変なときは、ステラがひとり、または知り合った子どもたちと一緒に乗り越えてゆくしかないのです。
でも、これは子どもが読んだら、大人が読む以上にハラハラドキドキしながら読めるのではないでしょうか。
子どもたち、なかなか強くてしぶといのです。ステラは、大好きな地図帳に書いてあった豆知識を駆使して、何度も危機を乗り越えます。
そして、だんだん、ステラ自身にも不思議な力があることがわかってきます。
知り合った少年、ベンは、ステラのことを「フェイ」だと言いますが……
「フェイ」とは妖精のこと。ステラは、ふつうの人間ではないのでしょうか。
また、おばさんが持っていた、昔の写真から、ステラはどうやら双子だったらしいとわかるのですが……もう一人はいったいどこにいるのでしょうか。
ステラの生い立ちや正体など、まだまだ謎はいっぱい。事件は、いったんは終了しますが、大きなおはなしはまだまだ続くようです。
文章は読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってありますので、小学校高学年から。
純粋な冒険ファンタジーなので、男の子でも女の子でも楽しめると思います。
作者はイラストレーターでもあるので、挿絵は本人が手がけています。これが、すごく雰囲気がある絵で、物語にぴったり。物語の世界にひたりながら最後まで楽しめます。
読み応えがあるので、大人にもおすすめ。
ハラハラドキドキのゴシック・ファンタジーをどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
気をつけて書かれているため、残酷シーンはありませんが、ちょっぴりダークな雰囲気のするファンタジーです。
哲学的な要素は少なめで、ビクトリア朝の雰囲気や、ファンタジックな設定を楽しむ物語です。大人の力がほぼほぼあてにならないので、子供たちががんばる展開が、手に汗握ります。
読後はあたたかい英国紅茶でティータイムを。
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