【天と地の方程式】古事記をベースにした新感覚和ファンタジー第3巻。おそらく完結編。【小学校高学年以上】
ついに全員揃ったチームカンナギ。大蛇に飲まれたヒカルは、不思議な能力を発揮する。それぞれの特殊能力が発現してゆくなか、自分の役割がわからないアレイ。しかし、アレイがすべての鍵をにぎっているのだった……
この本のイメージ 古事記☆☆☆☆☆ オカルト☆☆☆☆☆ 異能者バトル☆☆☆☆☆
天と地の方程式 3 （あめとつちのほうていしき） 富安陽子/作 五十嵐大介/絵 講談社
＜富安陽子＞
富安 陽子（とみやす ようこ、1959年2月15日～）は、日本の児童文学作家。東京都生まれ。和光大学人文学部卒業。25歳でデビューし、1989年「クヌギ林のザワザワ荘」で日本児童文学者協会新人賞、小学館文学賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズで新美南吉児童文学賞、2000年「空へつづく神話」でサンケイ児童出版文化賞を受賞。「やまんば山のモッコたち」はIBBYオナーリスト2002文学作品に選出。2011年、「盆まねき」で第49回野間児童文芸賞、第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。2021年、「さくらの谷」で第52回講談社絵本賞を受賞。（wikipediaより）
＜五十嵐大介＞
五十嵐 大介（いがらし だいすけ、1969年4月2日～）は、日本の漫画家。埼玉県熊谷市出身。神奈川県鎌倉市在住。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。
1993年に『月刊アフタヌーン』にてデビュー。高い画力と繊細な描写で自然世界を描く。2004年、『魔女』により文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、2009年、『海獣の子供』により第38回日本漫画家協会賞優秀賞、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
富安陽子先生の古事記をベースにした新感覚和ファンタジー第3巻。一応の完結編です。
天ツ神に招集された、特殊能力保持者たち、チームカンナギ。脅威の記憶力アレイ、数学の天才Q、音楽の天才ヒカル、怪力のハルコ、予知能力のピコ、退魔のプロ・イナミ、そして最後のメンバーも登場します。
彼は「告げる者」。メッセージを伝える能力者でした。
しかし、記憶力がすぐれたアレイが自分の能力を何に役立てるべきなのかがいまひとつわかりません。自分が何をすべきなのか……わからないまま、アレイは「先触れ」にこたえ、戦いに備えますが……
はたして、黄泉ツ軍の侵攻は止められるのか。チームカンナギの運命は？
と言うのが、今回のあらすじ。
2巻がとんでもないところで終わっていたので、かなりハラハラしましたが、3巻の冒頭でヒカルの能力が発現します。ひとりひとりが、どうやら大切な役割があるらしいとわかってきました。
第3巻は完結編なので、お話はこのままフルスロットル。ここまで謎に包まれたままラスト近くまでなだれ込むのはすごい。ラストでは、いままでの伏線を見事回収、アレイは主人公らしく、アレイにしかできない方法で敵を撃退します。
いやあ、こう来るとは！
戦いの中でチームカンナギのあいだにも友情が生まれ、距離があったアレイやQたちもとてもいい関係になりました。神様は幼子が好きなので、もう少しすると、アレイたちはカンナギから卒業してしまいます。
けれど、この友情はずっと続きそう。
お話自体は、続編が作れそうな展開ではあるので、運がよければ続きを読むことができるかも。ただ、アレイ、Q、ヒカル、ハルコがカンナギでいられるのも、あと2年くらいだと思います。むしろイナミのほうがまだまだやれる……おそるべし。
特殊な能力を持ち、それにより孤独を抱えていたカンナギたちですが、それぞれが自分の能力と焦らずうまく付き合ってゆこうと思えるようになります。とくにアレイは楽天的なQに救われます。おそらく、ヒカルも同じようにハルコに救われるのでしょう。
ラストでぴたっと、パズルが合わさる瞬間が気持ちいい、抜群の構成力。
魅力的なキャラクターと、ミステリアスな雰囲気の和ファンタジーです。小学校高学年以上なら、何歳でもおすすめで、読み応えも充分。和風の退魔バトルものがお好きならストライクだと思うので、ぜひどうぞ。
文章は読みやすいのですが、難しい漢字のみ振り仮名がふられているので、小学校高学年から。ただ、かしこい子なら中学年からでも大丈夫。予備知識として、あらかじめ古事記を読んでおくと、わかりやすいし、より楽しめると思います。もちろん、読後に横展開で日本史や古事記を勉強するのも面白そうです。
ただし、完全にお話が続いているので、まずは「天と地の方程式」第1巻から。
あっと言う間に不思議世界に連れていってくれる、疾走感あふれるオカルトファンタジーです。
※このシリーズは電子書籍もあります。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ムカデが大量に出てくるシーンがあります。それ以外は、アクションシーンなどもありますが、大丈夫だと思います。「そんなシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫ならおすすめ。
日本神話が好きだったり、退魔ものが好きな方なら、きっと好きだと思います。
児童文学というより、本格オカルトアクションファンタジーです。大人でも楽しく読めます。
https://www.mmanorhouse.com/2021/06/07/post-7303/
