【白鳥の湖】夢のように美しいツヴェルガーの絵本。子どもから大人までおすすめ【子どもから大人まで】
「白鳥の湖」はチャイコフスキーがバレエ上演のために創作した物語ですが、どうやら当初はハッピーエンドだったようです。それを知ったツヴェルガーが、独自の解釈で絵本を作成しました。
この本のイメージ 美☆☆☆☆☆ ハッピーエンド☆☆☆☆☆ 画集としてもすばらしい☆☆☆☆☆
白鳥の湖 ピョートル・チャイコフスキー/原作 リスべート・ツヴェルガー/文・絵 池田香代子/訳 ブロンズ新社
<ピョートル・チャイコフスキー>
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーはロシアの作曲家。バレエ音楽で広く愛されている。代表作は「白鳥の湖」「ロメオとジュリエット」「くるみわり人形」など。
<リスべート・ツヴェルガー>
1954年、オーストリアウィーン生まれ。美術学校を卒業後、E.T.A.ホフマンの『ふしぎな子』のイラストでデビュー。1990年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞。
「白鳥の湖」のストーリーをご存知ですか?
チャイコフスキーがバレエ公演のために書き下ろした戯曲で、オデット姫とジークフリート王子の悲恋の物語です。
昔のおとぎ話って、「なんでこうなるの」と思ってしまうくらい、ヒロインにとってとことん理不尽な話が多く、この「白鳥の湖」もそういうお話でした。いや、ふつうこれ、ハッピーエンドにするでしょ、なんでここでそうなるのよ、と子どもの頃大憤慨した記憶があります。
ところが、このおはなし、どうやらチャイコフスキーが最初に作ったときには、ハッピーエンドだったらしいのです。
その最初のバレエ公演があまりにも不評で、興行的に大失敗だったことから、チャイコフスキーの死後書き直されたものが、現在公演されている「白鳥の湖」だとのこと。
そうだったんですか!
わたし、チャイコフスキーへの認識をあらためましたよ。いい人だったんですね!(小並感)
その真相を知ったオーストリアの画家リスべート・ツヴェルガーが創作したのがこの絵本です。彼女は、あとがきで、「白鳥の湖」の原作にとても納得がいかず、もともとの話がハッピーエンドだったと知って、安心してこの絵本を作ったと書いています。
ただ、その「書き換え方」も、まずは従来型でお話を終えてから「実はね」と続けているので、伝統的な「白鳥の湖」のストーリーが好きな人に対しても配慮されています。細やかですね。
この絵本には「オデット」「ジークフリード」などの固有名詞は登場しません。ですから、伝統的な「白鳥の湖」とは違う、新解釈の「白鳥の湖」と言うこともできるし、チャイコフスキーの創作した原点に戻ったともいえるのです。
これは、ちょっと大人っぽい絵本です。物語としては、子供向けに簡単な文章で書かれているのですが、(とはいえ、漢字は使われていて振り仮名がふってあります)絵が幼児向けという気がしません。
リスべート・ツヴェルガーの絵本は、「ブレーメンの音楽隊読み比べ」の記事でも紹介していますが、子どもらしさやかわいらしさなどは一切なく、ひたすら容赦なく美しいのです。
文章は平易で、すべての漢字に振り仮名が振られていますが、漢字は多め。大人が楽しむ絵本としても意識されているつくりだと思います。
見開きで、左ページ上にその章の楽譜、その下に文章、右ページにフルカラーのイラストが描かれており、装丁も凝っていて絵本というよりも画集という感じ。
総ルビ(すべての漢字に振り仮名)とはいえ、使用されている漢字の分量は多いので、お子さまに読ませるときは、まずは大人が一緒に、読み聞かせからのほうがよいでしょう。
これは、子どもの頃、「白鳥の湖」のストーリーに納得がいかなかった大人のための癒し本のような気がします。
隅から隅まで、お洒落で美しく、ため息が出てしまいます。わたしが子どもの頃、こんなお洒落な絵本はありませんでした。いまの子どもは、選択肢が多くて幸せですね。
幼いときは、目が大きくて可愛らしい絵を好むものですが、まれに、このような芸術的な絵が好きな子もいますので、絵画やバレエがお好きなお子さまには、読み聞かせにおすすめの絵本です。
また、逆に、絵本を読んでお話に興味をもったお子様には、クラシック音楽やバレエへの横展開も期待できます。すでにバレエを習っているお子様へのプレゼントにもおすすめ。
ただひたすら「美」の力が強い絵本です。
子どものための絵本を買わなくちゃ、でも自分のための画集もほしい、と言うふたつの欲を同時に満足させてくれます。
お子様が寝た後、ハーブティーでも飲みながら一人で読み直してみてくださいね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
美しい絵本です。HSPやHSCにおすすめします。
どちらかと言うと、大人の癒し本です。子どもの頃「白鳥の湖」のストーリーに納得がいかなかった方は、ぜひこれを。
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