【ムジナ探偵局】へんてこ横丁の探偵の不思議事件簿【名探偵登場!】【小学校中学年以上】

2024年3月17日

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ムジナ探偵局 名探偵登場! 富安陽子/作 おかべりか/画 童心社

へんてこ横丁のつきあたりの古本屋「狢堂」にはもう1枚、奇妙な看板がありました。それは「狢探偵局」。店主は嶋雄太朗。狢(むじな)とは、人を化かす狸のことです。いったい、この店は何をする店なのでしょう?

この本のイメージ 妖怪☆☆☆☆☆ 幽霊☆☆☆☆☆ 名探偵☆☆☆☆☆

ムジナ探偵局 名探偵登場! 富安陽子/作 おかべりか/画 童心社

<富安陽子>
富安 陽子(とみやす ようこ、1959年2月15日~)は、日本の児童文学作家。東京都生まれ。和光大学人文学部卒業。25歳でデビューし、1989年「クヌギ林のザワザワ荘」で日本児童文学者協会新人賞、小学館文学賞、1997年「小さなスズナ姫」シリーズで新美南吉児童文学賞、2000年「空へつづく神話」でサンケイ児童出版文化賞を受賞。「やまんば山のモッコたち」はIBBYオナーリスト2002文学作品に選出。2011年、「盆まねき」で第49回野間児童文芸賞、第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。2021年、「さくらの谷」で第52回講談社絵本賞を受賞。(wikipediaより)

<おかべりか>
1950年埼玉県に生まれる。オリジナル作品に「よい子への道」「よい子への道2」「とちめんぼう劇場」「やきゅうじょうにいこう」(福音館書店)「しずちゃんのおつかい」(ひかりのくに)「おだんごちゃん」(童心社)など。挿絵に「ムジナ探偵局」シリーズ(童心社)「やまんば妖怪学校」シリーズ、「おばけやさん」シリーズ(偕成社)「はっけよい鯉太」(フレーベル館)「空を飛んだポチ」(講談社)「日本のわらい話」(ポプラ社)など多数。

 オカルトって、おおまかに分けると四種類あります。

 ひとつめは「人外のものが怖いオカルト」。妖怪や幽霊が登場して人間を襲ったり懲らしめたりして、そのモンスター感がものすごく怖い系のお話です。
 二番めは「人間が怖いオカルト」。幽霊などオカルト要素は出て来るのだけど、登場する人間たちの悪意や強欲など、人間の悪い心と、その因果応報が一番恐ろしいという系のお話。
 三番目は「かっこいいオカルト」。これは、オカルト的な要素をスパイスにして、主人公が悪と戦うタイプのお話です。「少年ジャンプ」に多いですね。オカルトアクションファンタジーというジャンル。これには一番目と二番目の両方の要素が入っていることが多いです。
 そして、四番目が「怖くないオカルト」です。人外の存在と人間の心の交流などを描き、ほのぼのとした雰囲気につつまれる「いい話」系のお話です。

 このブログでは、基本的に怖い話やアンハッピーエンド、バッドエンドは取り上げないので、このブログで紹介するオカルトは三番目と四番目、と言うことになります。

 今回の「ムジナ探偵局」は、四番目。人間と怪異の共存を描いたほのぼのストーリーです。

 「ムジナ探偵局」は「天と地の方程式」「シノダ!」など、日本神話や日本の妖怪をテーマに、独特のファンタジーを書き続ける富安陽子先生の人気シリーズ。
 本日ご紹介するのは第1巻「名探偵登場!」です。初版は2007年。やはり、この頃の名作は多いですね。ロングセラーになっているシリーズもたいてい、この頃スタートです。

 いままでも、「怖くないオカルト」は、「グリーン・ノウ」「メアリー・ポピンズ」「モンスター・ホテル」「お江戸あやかし物語」「コンビニたそがれ堂」など、和洋とりまぜてご紹介してきましたが、ほのぼの+探偵+オカルト と言うのは、なかなか面白い組み合わせだと思います。

 おはなしは……

 へんてこ横丁のつきあたり、「古書商 狢堂」(こしょあきない むじなどう)の看板のわきに「狢探偵局」と言う不思議な看板がかかっています。

 店主は「ムジナさん」こと嶋雄太朗。店には時々、不可思議な事件を携えて奇妙な依頼人が訪れます。
さて、ムジナさんは、これらの事件をどう解決するのでしょう?

 ……と、いうのがだいたいのあらすじ。

 短編集なので、「白い木箱」「小さなアブ」「学校の事件」の三篇が収録されています。

 短編なのに謎解き要素があるので、じっくりと読んで楽しむタイプの小説です。
 内容的にも、子供向けの純粋さがありつつも幼稚さはなく、それぞれに読み応えがあります。
 そのうえ、なんと総ルビ(すべての漢字に振り仮名がふってある)なので、ひらがなさえ読めれば何歳でも読める全年齢対応なのです。

 小学校1年生には少し難しいかなとは思うのですが、漢字の勉強をかねながら、こつこつ読むのもいいでしょう。(※最初の投稿で源太くん1年生くらいと書いていましたが、いま読み直したら五年生でした。訂正して再投稿いたしました)

 主人公の嶋雄太朗は、ちょっととぼけた昼あんどんタイプ。間抜けそうに見えるのに切れ者と言う、「夢水清志郎」とかにも通ずるものがありますね。わりと私立探偵ってこういうタイプが多いかも。(いや、夢水さんはだらしなさすぎますが……)→後日、夢水清志郎は、昼行灯ではなく、「欠落した天才タイプ」と判明。誤解を訂正いたします。(2021.10.27 追記)

 ムジナさんは、ちょっとつかみどころのない、不思議な感じの探偵さんです。このつかみどころのなさの理由は、第2巻で判明します。

 事件は妖怪や幽霊がらみの事件なのですが、漫画「ゲゲゲの鬼太郎」などに比べるとほのぼのとしていてブラック要素がなく、やさしい展開です。
 怪異が人を脅かしたり、騙したりするのではなく、怪異と人間が共存している世界のお話。

 「ゲゲゲの鬼太郎」は困りごとを抱えた人間が妖怪ポストに手紙をいれることで、鬼太郎が助けにきてくれるというお話ですが、ムジナ探偵局の場合は、困っているのが人間とはかぎりません。
 でも、ムジナさんは、みんなが幸せになれるようにちゃんと動いてくれるので、ラストはいつも気持ちのいいハッピーエンドです。

 この手のお話で、いちばん低年齢向けなのは「モンスター・ホテル」です。その後「お江戸あやかし物語」の次くらいでしょうか。「ムジナ探偵局」はなかなか、ボリュームがありますが、このボリュームで総ルビはかなりうれしいですね。

 どれもすっきりとしたハッピーエンドですし、ちょっとした豆知識が入っていることもあって、知識欲も満たされます。主人公が古い本に囲まれて暮らしているという設定も、個人的にはツボです。
 本好きが登場するお話は、読んでいるお子さまも本好きにします。

 わたしが小さな子どもだった頃、家の中で本ばかり読んでいる子は「変わり者」でした。
 いまだと家で大人しく本を読んでいたら「いい子」「かしこい子」などと言われそうですが、当時はそんな時代ではありません。
 むしろ、「元気がなくて子どもらしくない」と嫌われていたくらいです。そのくせ、自分の子供に宿題や計算ドリルなどは、熱心にやらせたがる親は多く、昔の子どもって、わりと「楽しむための読書」からは遠い生活をしていたのです。

 最近になって、小さな子どもの読書量の大切さが論じられるようになりました。別に純文学や名作でなくてもよく、どんな本でもとにかく大量に読むことが読解力向上の近道なのだそうです。

 このブログでは「楽しみのための読書」の原点に戻り、わたし自身が読んで楽しい児童書を中心にご紹介しています。
 子どもだけでなく、大人だって児童書や絵本を読んでいい、と思うのです。時代を超えて残っている児童書には、普遍のテーマが潜んでいることが多く、何度読み返しても新しい発見があります。

 また、子どものための小説は、ごまかしがきかないので、登場人物たちの純粋さに心が洗われることも。

 「ムジナ探偵局」は、子どもも大人も楽しめるオカルト探偵物語です。日本の妖怪が登場する和ファンタジー、怖くないオカルトが好きな方にはおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。ほのぼのとしたオカルト事件簿です。短編のオムニバスなので、忙しいときには少しずつ読んで楽しむことができます。「モンスター・ホテル」がお好きなお子さまにはその上級編としておすすめ。

 読後はおいしいヨウカンが食べたくなるので、あらかじめ用意しておくことをおすすめします。もちろん、おいしい緑茶もね。

 

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