【アグネス白書Ⅱ】伝説の少女小説を電子書籍で。ガールズスクールライフ完結編【電子書籍】【中学生以上】

2024年3月17日

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アグネス白書Ⅱ 氷室冴子/作 集英社

しーのたちも高等科2年生。先輩たちが卒業をひかえ、寄宿舎生活にも変化が訪れました。親友の菊花は夢を叶える一方、しーのは生徒会の派閥争いに巻き込まれ…… 伝説の少女小説完結編。

この本のイメージ 友情☆☆☆☆☆ 恋?☆☆☆☆☆ 学園コメディ☆☆☆☆☆

アグネス白書Ⅱ 氷室冴子/作 集英社

<氷室冴子>
氷室 冴子(ひむろ さえこ、本名:碓井 小恵子(うすい さえこ)、1957年1月11日 ~ 2008年6月6日) 1957年北海道生まれ。藤女子大学国文学科卒業。77年、「さようならアルルカン」で青春小説新人賞受賞。少女小説の代表的人気作家。著書に「なんて素敵にジャパネスク」など多数。

 わたしの個人的「読まずに死ねない作家リスト」第1位の氷室冴子先生の初期作品、伝説の少女小説の完結編です。このシリーズは、「クララ白書Ⅰ」が第1巻で、「クララ白書Ⅱ」「アグネス白書Ⅰ」とつづき、「アグネス白書Ⅱ」で完結しています。

 氷室先生の全盛期と言えば、そりゃあもうとんでもない人気で、この「徳心学園シリーズ」は周囲から何度布教されたかわかりません。

 しかし、当時の若者向け小説界というのは、おそらくはじめてのライトノベルブームで、(当時はライトノベルという言葉も生まれたばかり)栗本薫、赤川次郎、田中芳樹、菊池秀行、夢枕獏、新井素子、などなど(すみません、敬称略です(汗))錚々たる面々が毎月新刊を世に送り出し、書店の店頭を平積みで飾った時代です。何かを諦めなきゃ、お財布だって、部屋の本棚のスペースだって、限界があるわけですよ。漫画も買わなきゃいけないし……

 そんなわけで、なんとなく読みそびれて今に至り、「このままでは死ねぬ……ッ」(おおげさ)と、読み始めた次第。

 いやもう、べらぼうに上手いです。

 わたしはもうかなり歳なので、だんだん視力も読書スピードも衰えてきています。なにしろ、いちど身体を壊したときに、「本がまったく読めない」と言う奇怪な症状を発し、何年も苦しんだ経験があっての読書復帰なので、読むスピードが遅く、以前はなかった読み落としがあったり、戻って読み返さないといけないときもあります。

 ところが、氷室作品だけは、すいすいとハイスピードで読めるのです。

 これが、「会話文が多いから速く読める」とか「漢字が少ないから読みやすい」とか、そういうのではないんですね。語彙は多く、漢字もそれなりにある。字の密度も高くて、ボリュームのある小説なのです。

 つまり、桁違いに読みやすいのです。文章のテンポ、漢字とひらがなの配分、会話調の軽快さなどなど……読みやすい上に、面白い。これは、天下獲るはずですわ……と、心の中で何度もうなずいてしまいました。

 とくに冒頭の書簡集の形で書かれる、マッキーの引き起こすトラブルを描く「往復書簡」。手紙のやり取りを時系列で並べただけなのに、このハチャメチャな事件を面白おかしく描ききってしまう見事さ。オチも美しい。

 群を抜く才能と実力がありながら、当時社会的地位がけして高いとは言えなかった少女小説という分野で、少女たちのためにその才能を惜しみなく注いでくれた氷室先生には、時を超えて深い感謝の念を抱きます。

 「クララ白書」から始まる「徳心学園シリーズ」は、札幌の藤女子高等学校をモデルにした、ガールズスクールライフ。女子校の青春物語です。

 主人公は「しーの」こと桂木しのぶ。親友は暴走する美意識・マッキーこと紺野薪子と、漫画ひとすじど根性娘・佐倉菊花。
 あこがれの先輩たちは、「きらめく虹子女史」相沢虹子、「清らなる椿姫」加藤白路、「奇跡の高城先輩」高城濃子などなど、魅力的な人たちがいっぱい。

 「アグネス白書Ⅱ」では、この先輩方が卒業の準備に入り、生徒会が刷新され、新しい生徒会長成田志津子の横暴に立ち上がる、盟友・園田三巻の戦いに片腕として巻き込まれるしーののお話と、ぎくしゃくした光太郎くんとの関係修復のお話が並行して描かれます。

 基本的に友情と先約優先のしーのと、つねに後回しにされることで機嫌をそこねてしまった光太郎くんとのぎくしゃくは、人間関係のありがちトラブルのようにも見えるのですが、これって、基本的なパターンが男女逆なのでは……と、言うのが氷室流。
 光太郎くん、今回、なんとなくヒロインぽいです。別にナヨナヨしている人ではないんですけども。

 そして、かわいくてきゃいきゃいしている風に見えるしーのは、信義に篤く、とことん先約優先。光太郎くんには「恋人はじき他人になるが、友人は一生涯友人」などと嫌味を言われてしまいます。いや、しかし、光太郎くんは恋人ではないのだ。この温度差よ……

 しーのの人間関係は、途中で三巻にかなりかき回されますが、三巻はちゃんと責任をとって解決します。こういうふうに、消化不良の要素を残さず、すっきりまとめてくれるのもうれしい。しかも、さすがの展開なのです。これは読んで確かめてくださいね。

 女子高の寄宿舎もの、というのは、日ごろ窮屈に暮らしている女の子たちが、自分だけの「砦」を持てる夢が詰まった物語です。

 「アンの愛情」で登場する「パティの家」のように、結婚前の女の子たちが共同生活する場所には「自分が全責任を負わなくてもいいけれど、家をもつ楽しみを持てる場所」として、特別なあこがれがあります。
 「赤毛のアン」の作者モンゴメリは、「アンの愛情」のなかで、このような場所のことを「夫などにわずらわされずに、家庭をきずく愉快さを味わえる」と書いています。

 そこでは、夢やあこがれ、友情や自己実現が優先され、親や恋愛はあとまわしになります(もちろん、切り捨てるわけではない)。
 現実には難しいユートピアのような世界ですが、これこそが女子校寄宿舎ものの魅力。男女が逆転した「男子寄宿舎もの」も、女の子には人気です。本を読んでいる間だけは、読者の女の子も男の子の自由さを味わっているのです。

 スマートフォンどころか携帯電話もない時代の学園小説なので、連絡ミスや待ち合わせの行き違いなどは頻繁に起こり、今の若い人にはピンと来ないところもあるかもしれませんが、このレトロな感覚をどうぞ味わってみてください。

 学校帰りに喫茶店に寄り道し、シフォンケーキを食べるのが最高におしゃれだった時代の物語です。流行りましたよ、アールグレイのシフォン。レアチーズケーキブームの次くらいに。(食い意地がはっているので、食べ物の記憶だけは残っている)

 昔の名作が電子書籍で気軽に楽しめるのは、いい時代になりました。
 読書には、電話やSNSで邪魔されない、読書専用端末をおすすめします。

 さあて、次は何にしましょうか。「ジャパネスク」か、「雑居時代」か……氷室ファン先輩方、どうぞおすすめを教えてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はいっさいありません。おすすめです。明るく、楽しいガールズスクールライフです。「寄宿舎もの」がお好きな方なら、必修科目と言っていいくらいです。

 お話が続いているので「クララ白書」から順番にお読みください。読み終える頃には、必ず一人は推しキャラができていると思います。

 読後は、薫り高い紅茶とシフォンケーキでティータイムを。

 

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