【ビアトリクス・ポターの物語】ピーター・ラビットを生み出したビアトリクス・ポターの知られざる物語を描いた絵本【4歳 5歳 6歳】

2024年3月17日

広告

ビアトリクス・ポターの物語 キノコの研究からピーターラビットの世界へ リンゼイ・H・メトカーフ/文 ジュンイ・ウー/絵長友恵子/訳

ビアトリクスは学校には行きませんでしたが、家であらゆることを学びました。自然を愛し、とくにキノコを愛し、独力でキノコの深い研究を続けました……

この本のイメージ 知られざる物語☆☆☆☆☆ 追求する情熱☆☆☆☆☆ あの童話の裏に☆☆☆☆☆

ビアトリクス・ポターの物語 キノコの研究からピーターラビットの世界へ リンゼイ・H・メトカーフ/文 ジュンイ・ウー/絵長友恵子/訳

<リンゼイ・H・メトカーフ>
ジャーナリスト、ノンフィクションの絵本作家。子どものころからビアトリクス・ポターの世界が大好きで、頭の中はビアトリクスみたいに疑問でいっぱいだった。著書に「Farmers Unite!」「No Voice Too Small」(いずれも未訳)など。夫と2人の息子とともにアメリカのカンザス州の田舎を探険している。

<ジュンイ・ウー>
イラストレーター。ビアトリクス・ポターのお話と絵が大好きな子どもだったので、絵本を作ることができてとても幸せ。ビアトリクスのように楽しみながら自然の美しさと微妙なニュアンスの表現を探求している。アメリカのカリフォルニア州で、器用な夫、かしこいネコ、陽気なウサギと暮らす。

<長友恵子>
翻訳家、エッセイスト。訳書に『中世の城日誌』(産経児童文化出版賞JR賞)、「ぼくだけのぶちまけ日記」(ともに岩波書店)、「せんそうがやってきた日」(鈴木出版)、「ピーターラビットのクリスマス」(文化出版局)、「ヤーガの走る家」(小学館)など。子どものころから筋金入りのネコ好き。紙芝居文化の会運営委員。

 「ピーター・ラビットの絵本」で知られる、ビアトリクス・ポターの伝記的絵本です。
 原題は、Beatrix Potter,Scientist. アメリカでの初版は2020年です。

 ビアトリクス・ポターがピーター・ラビットの絵本を描く前、彼女がキノコの研究をしていた時代の実話が書かれています。

 ビアトリクスは、ビクトリア朝時代の上流階級の娘でした。当時の上流階級の令嬢がそうであったように、ビアトリクスは学校には行かず、家庭教師に教育されて育ちました。彼女は自然が大好きで、すぐれた観察力で植物や動物をスケッチし、様々な動物を飼いました。
 飼っていた動物が死んだときは、肉を取り除き、骨の様子を観察したとあります。

 とんでもない探究心です。

 絵本作家のターシャ・テューダーが著書の中で、スケッチするためにアトリエの冷凍庫の中に動物の死骸を保存していることなどを書いていましたが、おそらく、ビアトリス・ポターの影響だったのだと思われます。

 その後、ビアトリクスは、きのこに夢中になり、独学できのこの研究を始めます。
 当時、きのこを採取しても、自力で繁殖させることが出来た人間がいなかったため、ビアトリクスは、自分が行っているきのこの胞子の発芽方法を論文にまとめました。

 これは世界的にも画期的な技だったのですが、女性の名では学会に論文が発表できないため、キュー王立植物園の学者、ジョージ・マッシーに頼んで発表してもらいましたが、認められませんでした。

 そのような苦しみの中で、ビアトリクスは、いつしか、きのこの研究をやめてしまいます。

 その後、彼女が描き始めたのは、かわいらしいうさぎの男の子の物語でした……

 と、いうお話です。

 かつて、学会では女性の名前では論文が発表できませんでした。ビアトリクス・ポターはビクトリア朝時代の人ですが、日本でも、昭和のはじめくらいまでは、だめでした。
 女性の研究者というだけで、一人前の学者とは認められなかったのです。

 今は、ずいぶんと時代が変わりましたので、今の子どもたちにはまさか過去にそんな時代があったとは想像がつかないかもしれません。けれども、つい最近まで、そんな世の中でした。

 ビアトリクスの人生にとって、何が最善だったのかは、他人からはわかりません。もしビアトリクスが男性だったら、今頃、きのこの研究者として歴史に残る大発見をしていたかもしれません。
 けれど、当時の動植物や菌類の研究が、彼女の緻密な絵の基礎になっており、それがピーターラビットを生み出したのも事実です。

 きのこの研究者になれたほうが幸せだったのか、なれなかったからよかったのか……それは、今でも謎のままです。

 けれども、愛らしい動物たちのおとぎ話を描いた女性の人生に、こんな裏側があったことは、多くの人々に知られるべきだと作者のメトカーフさんは考えたのだと思います。

 ビアトリクスはきのこの研究者にはなりませんでしたが、そのために行ってきたことのすべては無駄にはならず、絵本を創るときに生かされました。これらの経験があってこそ、彼女はすばらしい「ピーターラビットの絵本」を創りあげることができたのです。

 何かに夢中で打ち込むこと、簡単にはあきらめないこと、そして、どんな人生でも、がんばった過去は未来に生かされること…… 大切なことがたくさん描かれている絵本です。

 ひらがなと漢字取り混ぜて、わりと長い目の文章になっていますが、すべての漢字に振り仮名が振ってある総ルビなので、ひらがなさえ読めれば、こつこつ読めます。また、巻末にはビアトリクス・ポターの生涯の年譜や解説も添えられています。子供向けの絵本としてだけでなく、コレクションアイテムとしても。

 ピーターラビットを愛するすべての方におすすめします。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。素朴な絵で、ビクトリア朝時代の女性の立場と、ビアトリクスの真摯な生き方を描いています。頑張り屋の女の子、ピーターラビットが好きなお子さまにおすすめの絵本です。
 読後は、もういちど、ピーターラビットの絵本を読んでみましょう。新しい発見があるかもしれません。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

お気に入り登録をしてくださればうれしいです。また遊びに来てくださいね。
応援してくださると励みになります。

にほんブログ村 本ブログへ

広告