【クレストマンシー】若き大魔法使いの冒険。魔法の館の謎。【魔法の館にやとわれて】【小学校高学年以上】

2024年3月18日

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魔法の館にやとわれて 大魔法使いクレストマンシーシリーズ  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 田中薫子/訳 佐竹美保/絵 徳間書店

コンラッドは魔術師のおじさんから「ストーラリー館に住む前世の宿敵を倒さない限りおまえの寿命は長くない」と言われ、自分の悪い業を消すためにストーラリー館で従僕として働くことになる。けれど、その「宿敵」が誰なのかさえ、コンラッドは知らないのだ……

この本のイメージ 若きクレストマンシー☆☆☆☆☆ 毒親ばかり☆☆☆☆☆ ミリーも出てくるよ☆☆☆☆☆

魔法の館にやとわれて 大魔法使いクレストマンシーシリーズ  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/作 田中薫子/訳 佐竹美保/絵 徳間書店

<ダイアナ・ウィン・ジョーンズ>
1934年イギリス生まれ。オックスフォード大学セントアンズ校でトールキンに師事。イギリスを代表するファンタジー作家。作品に「魔法使いハウルと火の悪魔」など。 

<田中薫子>
田中薫子(たなか かおるこ1965年~)は科学書・児童書の翻訳者。幼少期をニューヨークとシドニーで過ごす。慶應義塾大学理工学部物理学科を卒業。ソニーを経て93年よりフリー翻訳者。科学書としては「ザ・サイエンス・ヴィジュアルシリーズ」(東京書籍)の叢書の翻訳者。児童書の分野では、宮崎駿監督の映画「ハウルの動く城」の原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズの魔法ファンタジーシリーズの翻訳者として有名

 大魔法使いクレストマンシーシリーズのこのお話、時代設定的には「クリストファーの魔法の旅」と「魔女と暮らせば」のあいだくらい。つまり、大魔法使いクレストマンシーを襲名する前の少年クリストファーがそろそろ思春期に入り、ミリーと結婚する前のお話です。

 原題はCONRAD’S FATE. 原書初版は2005年。日本語版初版は2009年です。

 例によって、主人公は別の人で、クレストマンシーは途中から登場するパターンですが、今回はわりと序盤で出てきます。というのも、彼はまだ「クレストマンシー」ではないから。(ややこしい)

 コンラッドは12歳。父はすでに死去しており、父が遺しておじさんが経営する本屋で働きながら暮らしていました。母は育児・家事放棄、やさしいお姉さんは学校を卒業するととっとと外の大学に進学してしまいました。

 のこされたコンラッドは家でこき使われる運命をうらんでいましたが、ある日、おじさんが驚くべきことを言います。
 「丘の上のストーラリー館に住む前世の宿敵を倒さない限り、おまえの寿命は長くない」

 不吉な予言をされたコンラッドは、叔父さんにストーラリー館に差し向けられます。その館では、魔法によって大儲けしている人物がいると言うのです。

 ストーラリー館に到着したコンラッドは、同じように従僕志望でやってきたクリストファーと言う少年と出会います。

 おじさんに謎の使命を言い渡され潜入したコンラッドと同様、クリストファーにも目的がありました。ミリーが行方不明だったのです。さて、コンラッドは「宿敵」を見つけ出せるのでしょうか。そして、ミリーの行方は?

 と、いうのがあらすじ。

 いつものように、物語は二転三転します。

 クレストマンシーシリーズのなかでも、このお話くらい先が読めず、ラストが意表をついているものもないんじゃないでしょうか。登場するキャラクターたちが全員、最初のままでは終わりません。

 「魔女と暮らせば」では頼りがいのある、落ち着いた男性であるクレストマンシーは、このお話では生意気なクソガキ……もとい、頭の回転の速い自信家の少年です。口が達者でちょっとナルシストな部分もあり、すっっごくどこかの誰かに似ています。そう、つまりはハウル

 そうか……あれは、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの好みのタイプだったんですね。
 よくよく考えたら、これを女の子にしたらアーヤだわ……。アーヤの性格って受け付けない人がいるんですけど、ハウルは性別を逆にすると、なかなか一般的には受け入れられない性格なのかもしれないですね。自由すぎるし。
 そういう意味でも、DWJの感性は新しかったのだなあ……。

 クリストファーの態度があまりにも小生意気で鼻につくので、コンラッドですら「ケッ」と思ってしまうことがたびたびあるのですが、でも、困ったときには必ず助けてくれる頼もしさもあるのです。まあ、次期クレストマンシーですからねえ。

 コンラッドくんは、ジョーンズ作品によく出てくるタイプの、受難の主人公です。不憫だけど打たれ強いタイプ。これも、ジョーンズのもうひとつの好みなのでしょう。

 「魔女と暮らせば」のキャットくんもこんな感じ。気の強いお姉さんがいるところも似ています。でも、アンシアお姉さんはキャットのお姉さんグウェンドリンよりずっといい人。

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズのお話は、どこを紹介しても致命的なネタバレになる危険がある、非常に入り組んだつくりになっているので、これ以上、中身について書くことが難しいのですが、とにかく面白いのでおすすめいたします。

 ふつう、構成で魅せる物語は、キャラクターが薄いものなのですが、クレストマンシーシリーズは、キャラクターも濃い。そして、ラストのどんでんがえしに継ぐどんでん返しで、「えっ、この人こんな人だったの?」と、驚かされます。

 また後半に従って、キャラクターがどんどん増えてゆくのですが、モブキャラに見えていた人が、じつは重要キャラクターだったりして、まったく気を抜けません。ここらへんが匠の技なので、どうぞメモを取りながらお楽しみください。

 文章は読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってあるので、小学校中学年から。ただし、とんでもなくボリュームがあります。また、構成が複雑なので、パズルのようなお話が好きな方におすすめです。
 もちろん、大人でも、本格ファンタジーとして楽しめます。

 クレストマンシーシリーズは、一話完結方式なので、どの本から読んでも楽しいのですが、「魔女と暮らせば」「クリストファーの魔法の旅」「トニーノの歌う魔法」「魔法使いはだれだ」(出版順)で、
もし、クリストファーの年齢順に読む場合は、「クリストファーの魔法の旅」→「魔法の館にやとわれて」→「魔女と暮らせば」→「トニーノの歌う魔法」→「魔法使いはだれだ」になると思います。

 年代設定的には、「魔法の館にやとわれて」は「クリストファーの魔法の旅」の数年後、「魔女と暮らせば」は「魔法の館にやとわれて」の15年後くらい(クリストファーはクレストマンシーを襲名・結婚していて子どももいます)、そして「トニーノの歌う魔法」は「魔女と暮らせば」の約半年後となっています。

 ハウルシリーズに負けず劣らずの面白さなので、まだの方はぜひ。
 雨の週末などに、じっくり読むのがおすすめの本格ファンタジーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。わくわくドキドキの魔法ファンタジーです。「ハリー・ポッター」のような魔法使いものが大好きな方で、未読なら、読むべき。
 キャラクターが多いので、もしかしたらメモが必要かもしれませんが、ぐいぐいと引き込まれて最後まで読んでしまいます。

 読後は、英国紅茶とビスケットでティータイムを。

 

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