【魔女モティ】家出した紀恵。新しいママは魔女、パパはピエロ? 奇妙な家族の物語【電子書籍】【小学校中学年以上】

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魔女モティ 柏葉幸子/作 尾谷おさむ/絵 講談社青い鳥文庫

小学校五年生の紀恵は、三人きょうだいの真ん中っ子。いつも忙しいお母さんに誕生日を忘れられてしまい、五回目の家出を敢行中に不思議な黒猫にスカウトされる。ある両親のもとで家族になってほしいというのだ。そこは、クロワッサン島。そしてママは魔女でパパはピエロだった……

この本のイメージ 魔女☆☆☆☆☆ 家族とは☆☆☆☆☆ 親子とは☆☆☆☆☆

魔女モティ 柏葉幸子/作 尾谷おさむ/絵 講談社青い鳥文庫

<柏葉幸子>
1953年、岩手県生まれ。東北薬科大学卒業。『霧のむこうのふしぎな町』(講談社)で第15回講談社児童文学新人賞、第9回日本児童文学者協会新人賞を受賞。『ミラクル・ファミリー』(講談社)で第45回産経児童出版文化賞を受賞。『牡丹さんの不思議な毎日』(あかね書房)で第54回産経児童出版文化賞を受賞。『つづきの図書館』(講談社)で第59回小学館児童出版文化賞を受賞。近著に『竜が呼んだ娘』(朝日学生新聞社)、『モンスター・ホテルでひみつのへや』(小峰書店)など。

<尾谷おさむ>
兵庫県生まれ。イラストレーター。主な仕事に、「お隣の魔法使い」(GA文庫)、「七姫物語」(電撃文庫)、「世界が終わる場所へ君をつれていく」(メディアファクトリー)「摩訶不思議ネコ・ムスビ」シリーズ(講談社青い鳥文庫)などがある。

※この本は、現在、紙の書籍では入手困難で、中古では高くなっています。(たぶん人気なんですね)
電子書籍がありますので、そちらでお楽しみください。

魔女モティ 柏葉幸子/作 尾谷おさむ/絵 講談社青い鳥文庫

 「霧のむこうのふしぎな町」「岬のマヨイガ」など有名な柏葉幸子先生のファンタジーです。

 ストーリーは……

 紀恵は、三人きょうだいの真ん中っ子。上はお姉さんの朋恵、下は弟の諒くんです。

 お母さんは忙しくて、仕事と子育てにてんてこまいなので、よく真ん中っ子の紀恵はあとまわしにされてしまいます。
 今日はお誕生日なのに、すっかり忘れられてしまっているようなので、頭に来た紀恵は、五回目の家出をしました。

 そんな紀恵に、しゃべれる黒猫ペローが声をかけます。ある人の娘になってあげてほしいと……

 黒猫に連れてこられたのは、「クロワッサン島」。そして、「ある人」とは、魔女のモティ。そして、パパはピエロのニドジ。
 モティは、魔女学校の万年落第魔女でした。ついに学校を追い出されて独立するさいに、「家族がいる」ことが条件だったため、お父さん役と娘役をペローがスカウトしたのです。

 モティとニドジと紀恵。奇妙な家族の共同生活が始まりました……

 と、言うのがあらすじ。

 おはなしのラストに、ママが紀恵ちゃんの誕生日を忘れてしまっていた理由が語られています。
 しかし、それでも、「どんな理由があれ、子どもの誕生日を忘れるなんて、考えられない!」と言う意見も見られ、このエピソードのために導入で引っかかってしまう方もいるようです。

 柏葉先生は、わたしよりさらにひとつ上の世代なので、わたしはけっこう、この問題は理解できます。

 いやあ、なつかしいです。お誕生会問題。

 とくに、作中で書かれた紀恵ちゃんの学年の友達どうしを招待しあった「お誕生会」の規模がだんだん大きくなってしまい、学校で「お誕生会はとりやめ」になったというくだり。こういうのは、わたしたちの少し上の世代がはしりだった気がします。

 検索しましたら、令和のいまでも「お誕生会問題」は根強くあるようですね。

 で、本作の主人公、紀恵ちゃんは、クラスのお友達どうしのお誕生会をとりやめにしたら、家族は自分の誕生日をおぼえていてくれなかった、と言うのが、家出のきっかけだったのでした。

 「子どもの誕生日を忘れる親がいるのだろうか?」というご指摘。たしかにごもっともなんですが……
 これねえ、わたしたちの時代では充分ありえることだったのです。

 それは、我々の親世代には「誕生日を祝う」と言う概念がなかったから

 「誕生日を祝う」と言う風習は、第2次世界大戦で日本が敗戦した後に、アメリカから入ってきたもので、それまで日本人には「生年月日から人生が始まり、誕生日がめぐるごとに歳をとる」と言う概念が、そもそもなかったのです。

 戦前の日本では、人は「お正月が来るたびに全員いっせいにひとつ歳をとる」と言う概念の国でした。これを「数え年(かぞえどし)」と言います。
 お正月には、その家の家長の前に挨拶に行き、「今年で何歳になりました」と報告するわけです。「おまえは何歳になった?」「わたしは何歳です」みたいな感じで、お正月に挨拶を交わして互いにお祝いをする、それが昔の日本の「歳のとり方」でした。つまりは「お年玉」はバースデープレゼントみたいなものだったのです。

 何年か前のNHKの連続テレビ小説で、ヒロインがアニメーターになるドラマがありました。わたしの母が、あのヒロインとだいたい同世代なのですが、彼女が誕生日をケーキでお祝いする、と言うエピソードを聞いて、強い違和感を感じたのを覚えています。

 もちろん、バースデーパーティーというのは、当時最先端の行事ですから、都会で暮らす女の子が誕生日をお祝いするのも、ありえたとは思うのですが、同世代の母は、いまでも自分の誕生日すら忘れます。

 「日本人には誕生日なんてないわよ、みんなお正月にいっせいに歳をとるのよ」がその理由。自分や他人の歳の数え方も「数え年」で数えていたりするので、満年齢で数えることが主流になった今では、たまに混乱が生じます。

 でも、わたしが子どもの頃は、祖父や祖母は数え年で数えていましたし、両親は他人に歳を聞かれたときに、「満で何歳、数えで何歳」と言うふうに、ふたつ答えていた記憶があります。

 こういう、文化の移行期でしたので、子どもたち世代は新しい文化である「お誕生会」が珍しく、やりたいやりたいと騒ぎますし、友達どうしで開けば、だんだん規模が大きくなりエスカレートするし、しかし親世代には理解できない風習な上に負担が大きいので、お誕生日がらみのすれ違いは、よくおきたものでした。

 柏葉先生だと、直撃世代だったのではないでしょうか。

 「お誕生日」について語りすぎて、少しお話が脱線してしまいましたが、この物語では、「家族とは何か」がテーマになっています。
 家族とは何か、血のつながりなのか、心のつながりなのか。
 血のつながらない者同士が、心のつながりで家族になることはできるのか……

 終始コミカルで、ゆかいで明るい話なのですが、テーマは真剣です。そして、やさしい。

 絡まっていた心の糸はちゃんとほぐれるし、すれ違っていた人同士はちゃんとわかりあえます。

 文章は読みやすく、すべての漢字に振り仮名が振ってあります。尾谷おさむ先生の魅力的な挿絵がふんだんに入っているのも魅力。様々な親たち、子どもたちがそれぞれの幸せを見つける、楽しくてやさしい物語です。

 「家族」ってなんだろう? 子どもなら一度は考えること。その疑問に、真正面から答えてくれる物語です。

 使い古された、古風なテーマではありますが、解決方法は斬新です。けっしてありきたりなところには着地しません。でも、ちゃんとハッピーエンド。これは一読の価値アリ。

 おうち時間が増えたいまこそ、読んでみたいファンタジーです。

 電子書籍を読むなら、SNSやメールなど他のアプリで邪魔されない、読書専用端末の使用をおすすめします。電子なら、端末にどれだけデータを入れてもかさばりません。気軽に持ち歩けるのも魅力。

 絵の美しさや手触りを楽しめる紙の本と、たくさん読めて簡単に持ち運べる電子書籍、どちらにもメリットがあります。
 両方、うまく使いこなして楽しめたらいいですね!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。ゆかいで楽しいファンタジーです。コミカルなのにテーマは深いので、HSPやHSCの方のほうが多くのメッセージを受け取れると思います。

 読後は、クロワッサンとコーヒーでリラックスタイムを。

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